4月12日

ファッションでは語れないREM ー 見た目のフツーっぽさ、普段着の音

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photo:UNIVERSAL MUSIC JAPAN  

人気アーティストが普段着でライブパフォーマンスを行なうのは今ではよくあることだが、1980年代の洋楽シーンの最前線で、それは皆無。ファッションと音楽は分かちがたく結びついていた。

2016年に日本公開された映画『シング・ストリート 未来へのうた』には、音楽番組に新しいバンドが出る度に、主人公の少年たちの服装がその影響を受けるという描写がある。

これには笑ったが、同時に頷けもした。劇中に登場したデュラン・デュラン、スパンダー・バレエ、ザ・キュアーは独自のルックを持っていたし、見た目のインパクトもあったから、ド田舎の高校生だった自分には少々エキセントリックで真似るのは “ムリだべ…” と思ったが、それでも音楽誌のグラビアや、『ベストヒットUSA』を見る度に、“特別な存在” に思えたものだ。

そんな中で1983年、普段着のような見た目のバンドが登場する。

R.E.M.

初めて、そのアー写を目にしたとき、あまりのフツーっぽさに拍子抜けした。まるで、どこにでもいそうな大学生グループ。マイケル・スタイプとビル・ベリーが長髪だったことが辛うじてロックバンド感を漂わせていたが、ファッション性とは縁遠い普段着のせいか、清潔感のない人たちだなあと思った。少なくとも “特別な存在” には見えなかった。

正直に打ち明けると、デビューアルバム『マーマー』をレンタル店で借りて聴いたときはピンとこなかった。ポピュラー音楽にシンセサイザーの音が入っているのが当たり前の時代。ギター主体のサウンドに加え、スタイプのモゴモゴしたボーカルは見た目と同様に地味に思えた。

歌の内容を知りたくてライナーを見たが、歌詞も訳詞もない、当時の国内盤には珍しい仕様。ますますとらえどころのないバンドだなあという思いが強くなる。

彼らのことが好きになってきたのは、4作目の『ライフス・リッチ・ページェント』から。ザ・スミスのようなUKのインディーギターバンドを愛聴していたのも大きかったかもしれない。が、今思うとこの頃は、上京したものの小奇麗にはなれない大学生。それゆえに親近感がわいてきたから…… という気がしないでもない。

相変わらず歌詞はわからなかったが、気取らないことの格好よさくらいならわかるほどに大人にはなっていた。ヒットチャートは当時もアレンジ過剰、エコー効き過ぎの派手な曲に独占されていた。そんな時代だったから、普段着のギターサウンドで、どこかノスタルジックなシングル「ザ・ワン・アイ・ラヴ(邦題:燃える愛)」がUSチャートのトップテン入りを果たしたときは、痛快だった。

その後、R.E.M.はご存じのとおり大物となり、着る物も小奇麗になっていくが、ロックスターという趣ではなかった。

普段着ゆえに、『シング・ストリート』の少年たちのように真似する必要もなかったし、真似したいとも思わなかった…… と言えればいいのだが、95年の武道館での来日公演に感動してしまい、家に帰ってから当時のスタイプのようにスキンヘッドにしたことは告白しておく。


※2017年8月29日に掲載された記事を加筆修正。

2018.04.12
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カタリベ
1966年生まれ
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