週末の夜は現役女子大生が生ではしゃぐオールナイトフジでどの娘がタイプか? なんて盛り上がりつつ、MTVをBGMに友人宅でピザを取り楽器をいじっていたあの頃、洋楽のトップを走るマドンナやシンディ、更にシーラ・Eの華麗なパフォーマンスにドキドキした。中でもマドンナの『マテリアル・ガール』のミュージックビデオに恋をしたのを覚えている。
今では諸々記憶の時間軸はよじれているが、その少し後、何年か経ったころ、幽霊の声が「先輩!」と叫ぶ怪しい曲があると聞き、慌ててウォークマンでその音源を聞いた。それはREBECCAの9枚目のシングル『MOON』だったが、「先輩 ♪」とも「SEY HI ♫」とも聞こえた。
それはさておき、この曲の “自由に走り出したくてたまらないティーンエイジの少女の感情” を洋楽のヒットエッセンスを使い、見事に邦楽の名曲へと進化させ、ロックでもポップスでもない日本の歌謡界に新しいジャンル、J-POPを誕生させた土橋安騎夫の才能に頭を吹き飛ばされた。
さらに、月・MOONを母という強く大きな愛の象徴に見立て「MOONあなたは知っているの? 初めてキスした日のことも… ♫」と歌うNOKKOに、切なく甘い、一本の邦画を見せられた気になった。
あれから27年、2015年、夏。ただのギター少年だった僕は、彼女たちREBECCAの再結成を追いかけるドキュメンタリーの作家として、仕事であの曲と向かい合った。その復活、再会はすばらしかった。そして今度は母として月として、娘に歌いかけるNOKKOを目撃できたことに感激している。でも、彼女が母として『MOON』を歌ったのか? 少女のままタイムスリップしたのか? それは謎のまま。
でも、いつ聞いても、好きだった十代の恋の相手を思い出せてくれるこの曲がたまらなく好きだ。
MOON
作詞:NOKKO
作曲:土橋安騎夫
編曲:レベッカ
発売:1988年2月26日
2016.02.01
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