今や右を見ても左を見ても外国人観光客だらけである。まぁ、これだけ小さな島国に年間3千万人近い人が訪れればそれも致し方ないだろう。
電車の掲示板に、英語、中国語、韓国語などの案内が出るのも見慣れた光景となった。しかし30年前は外人を見ようと思えば、映画館で洋画を観るか六本木にでも行くしかなかった。1989年、そんな時代の訪日外国人観光客の気持ちを歌った曲がリリースされた。
えーびばでい SAMURAI
SUSHI GEISHA
びゅうていほーる FUJIYAMA
HA! HA! HA!
そう、カールスモーキー石井率いる 米米CLUB がリリースした「FUNK FUJIYAMA」である。これは日本に対して外国人観光客がイメージしているというか、知っている単語を羅列しただけの歌詞である。その内容は一見ふざけたようにも思えるが、逆に自分のことを振り返ってみれば、この歌詞も納得できる。
例えばロシア。1991年にソビエト連邦が崩壊してロシアになった訳だが、東西冷戦が終わり、ようやく鉄のカーテンの向こうに旅行できるようになった時、もし私が「FUNK MOSKVA」という曲を作ったら歌詞はきっとこうであっただろう。
えーびばでい ピロシキ
クレムリン
びゅうていほーる マトリョーシカ
HA! HA! HA!
さらに東ドイツ。1989年にベルリンの壁が崩壊して統一ドイツとなった訳だが、この時、もし我々が「FUNK BERLIN」を作ったらこうだろう。
えーびばでい ヴルスト
ピルスナー
びゅうていほーる マルクス
HA! HA! HA!
つまり、今まで行った事もない、情報もそれほどない… だけど単語だけ知っているとなれば、自然とこんな歌詞になることは避けられない。しかし、誰しもが思う事だが、誰もそれをやらない… と言うか、普通はそんな歌詞は書かないのであるが、それをやってしまうのがカールスモーキー石井の真骨頂だろう。
翌年には「浪漫飛行」が JAL の CM で使われミリオンセラーになった。その後もコンスタントにヒット曲を生み出し、映画監督もこなし、カリスマ美容師を生み出したバラエティ番組の司会まで行うマルチぶりを発揮してきたのはご存じの通りだ。
もうすぐ2020年である。訪日外国人も4000万人を超えるだろう。次は「誰もそれをやらない」をやってしまうカールスモーキー石井がどう出るか、何かやらかしそうで、ちょっと楽しみである。
2018.10.21
YouTube / Sony Music (Japan)
Apple Music
Information