中原めいこの『2時までのシンデレラ - FRIDAY MAGIC』の レコードを買った場所は東京ではなかった。
二泊三日という短いスケジュールの大阪旅行の最中、難波にあるミントレコードの棚に並ぶ「な」行の隅に隠されていた彼女のアルバムを手にとった瞬間、今回の旅の理由を誰にでも明確に話せる事を確信した。
単純に、私が住んでる近くの空港から直行便が出来たことで訪れた大阪だが、これからは色んな言い訳を作ってでもしょっちゅう大阪難波と梅田の中古レコードショップを訪れるかもしれない。
帰国のために南海電鉄・特急ラピートの出発時間が丁度一時間ほど余った時、残りのお金112円で、路地の自動販売機から冷たい UCC ミルクコーヒーを買った。残りの22円をポケットに入れ、道を歩く足取りの重さは、私のリュックの中に入っている彼女のアルバムレコード、それぐらい。
さて、私にとって、アルバムジャケットのアートワークのインパクトは、何よりも大事な購入要素だ。
たとえば、『2時までのシンデレラ - FRIDAY MAGIC』のアートワークは、まるで焼きたての長崎カステラを三日月のように切って、あたかもリクライニングに使う彼女の姿をアルバムに載せている。その、ふわふわと感じられる印象が目に焼き付いて離れない。
韓国の J-POP コミュニティに購入したアルバムを載せたら、コミュニティメンバーたちの反応は凄かった。やはり、人の見る目は似ている。すでにこのアルバムの CD をもっているが、その CD のジャケットのサイズが気になっていた人も…。
ところで、音楽ではなく、アートワークの美的なランキングという括りで判断すれば、彼女のもう一つのアルバム『Mint』と同率1位だと思う。もう私の中原めいこのコレクションは完璧である!
韓国人が思う中原めいこの音楽は、主に永遠の名作アニメ『きまぐれオレンジロード』に収録されている「Dance in the sweet memories」や「鏡の中のアクトレス」であり、 他の曲とアルバムは紹介される方法がほとんど無く、少し残念な気持ちだ。YouTube がなかった時代の中原めいこは、韓国人にとっては、日本に行かなくては会えないアーティストだったのだ。
そして彼女が持っている作詞と作曲の才能は韓国人たちの盲点であるに違いない。このアルバムを聴いて、果たして捨てる曲があるのか?
ミディアムテンポで進む華やいだ曲の1曲目「Fantasy」と、5曲目「Go away」をアルバムの軸にして、最後の曲「2時までのシンデレラ」で完璧に近い形でまとめ上げる-- こんなクオリティーのアルバムを一人で作曲作詞し、そして歌まで歌うなんて恐ろしい…。彼女は “夜中2時までの魔女” …だとでもいうのか。
この職人レベルのアーティスト “中原めいこ” を機会があるたびにリスナーたちに知らせることが、私の役割だと思う。
2019.10.23
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