ロック界では、毎年のようにアルバムを出すアーティストもいますが、主にアルバムを出す周期としては、2~3年に1枚というサイクルがいちばん多いでしょうか。好きになったアーティストは、すぐに次のアルバムを出してほしいものですよね。
しかし、ニール・ヤングやヴァン・モリソンなどは、約半世紀にもなるキャリアでもあるのに関わらず、毎年のようにコンスタントにオリジナルアルバムを出しますので、ファンとしては嬉しい反面、過去の作品もコンプリートを目指したいので財布には厳しいという現実もあります(笑)。
反対に非常に寡作のアーティストもいます。私が紹介したいのは84年のデビュー以来、まだ4枚しかアルバムをリリースしていないグラスゴー出身のバンド、ブルー・ナイルです。
このブルー・ナイルというバンド、いろんな意味で渋いバンドなのです。まず、デビューアルバムをリリースしたのがリンというレーベルから。このリンというのは、スコットランドにある高級オーディオメーカー。
メーカーとしては唯一の英国王室御用達ブランドであり、日本でもオーディオマニアの方ならご存知なはず。このリンはレーベルも経営しており、クラシックのアルバムを中心に今でもリリースを続けております。ジャズなどもリリースしてますが、ロックのリリースはごく稀にしかありません。
そんなリンからリリースしたデビューアルバム『ア・ウォーク・アクロス・ザ・ルーフトップス』は評論家の受けは良かったもののヒットには至りませんでした。内容も実に渋い作品揃いで、メロディーが後からじわじわ来る落ち着いた作風が好印象なんですが、悪く言うと全体的に地味な作品でもありました。そして次のアルバム『ハッツ』まで5年を待つことになります。
そのセカンドアルバム『ハッツ』は前作を上回る評価を得、UKの各音楽誌も絶賛の嵐、私もこのアルバムでブルー・ナイルに出会うことになりました。で、内容の方は? 全体的にスローな曲が多くやっぱり渋い。しかし「聴けば聴くほど名曲感」は前作以上で、やっぱりじわじわきました。
冒頭の「オーヴァー・ザ・ヒルサイド」から超スローな彼らのペースにまず引き込まれます。年老いたアーティストでもないのに、アルバムのアタマにこんなゆっくりな曲持ってくるか? 当時はそう感じたものです。主要メンバーのポール・ブキャナンは当時33歳。そんなに若くはないといえもうこの円熟の域なのか! とも。
セールスのほうもUKで12位を記録し、早くも次作への期待が高まりましたが、今度はサードアルバム『ピース・アット・ラスト』までは7年も待たなければなりませんでした。メンバーが他に仕事をしていたなど諸事情もあったのでしょうが、解散もしてないバンドとしては非常に珍しい現象でもありました。
ちなみにその次のアルバム『ハイ』までは8年。もはやファンやリスナーにある種の忍耐を試しているのではあるまいかという勘ぐりまでして次作を渇望してしまうのは、どのアルバムも本当に素晴らしいから。「いい曲を作り上げるのには時間がかかる」という自分なりの解釈をしてまた次のアルバムを期待してしまいます。
『ハイ』のあと、8年経ってポールのソロアルバム『ミッド・エアー』が2012年にリリースされました。次のリリースはバンドなのかソロなのかはわかりませんが、2020年あたりを見据えてじっくり待つとしましょう。言い忘れましたが、ルックスもいい意味で渋いです。
2017.03.29
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