友人が勤めていた原宿のBAR。気の良さそうなその外国人客は壁に飾ってあるエレキギターを見つけると勝手に自分の名前を書き殴ったそうである。その時友人が彼とツーショットで撮った写真がサイン入りギターの傍らに貼ってあり、確かにその男は名前の通りチャック・ベリーのように見えた。 チャックちゃん、また来ないかなぁ~。 友人は北関東訛りでそうつぶやくと、ギターを弾くような手振りをし、ジョニー・B.グッドを口ずさんだ。「James Brown チャック・ベリーと夢の競演!」(2002年/東京国際フォーラム)というコンサートと時を同じくしているのと、近所にクラプトンが来店するというトンカツ屋があるので、場所柄本人である可能性がないとはいえない。 ところで、この友人、とてつもなく歌が上手い。英語で口ずさんだジョニー・B.グッドなんか、ジョン・レノンみたいな声で歌うものだから、隣席に座っていた女の子の目がすっかり潤んでいる。私は何だかシラケてしまって、「何かかけてよ。」というと「良いのがあるよぉ~」と、店内のテレビにビデオを流してくれた。それはチャック・ベリーの故郷セントルイスで、生誕60周年記念コンサートが行われた様子を記録したドキュメンタリー映画『ヘイル!ヘイル!ロックンロール』(1987年)だった。 たぶん、古い音楽番組のインタビューシーンだろう。ジョン・レノンが登場し「チャック・ベリー、マイヒーロー…」と語り出すと、二人のジャムセッションの映像が映し出された。レノンがいかにベリーを敬愛しているのか。インタビューに答える声のトーンだけでその傾倒ぶりが伝わってくる。そして、記念コンサートに画面が移るとベリーがジョンの息子・ジュリアンを呼び込んだ。勿論、二人が演奏し歌うのはジョンとセッションした時と同じ曲、ジョニー・B.グッドである。 失われた時間が巻き戻されるような不思議な感覚。素晴らしい演奏シーンを眺めながら私はテレビに映ったチャック・ベリーと先程の写真に写っている顔を見比べてみた。あれ?このチャック・ベリー若すぎやしないか? 原宿にいたチャック・ベリー。信じるか、信じないかは…… あなた次第。 チャック・ベリー「ヘイル!ヘイル!ロックンロール」 監督:テイラー・ハックフォード 公開:1987年(昭和62年)10月9日
2016.11.27
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YouTube / Pedro B
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YouTube / Clément Monterastelli / Dr FeelGood
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