The Smiths Wolverhampton
15 October 1986
この日付と文字を見ただけで感情がこみ上げて来る。そう、スミスのウルヴァーハンプトンでのライブ。
1970年前後に生まれた方にとっては、リアルタイムの “消えない光” だったのではないだろうか。私もその1人だったから。
今日ここで語る内容は、バンドのあり方や楽曲についての話ではなく、あくまでもファッション面から見たモリッシー&ジョニー・マー。
当時のロンドンは、ニューウェーヴ全盛で若きジョン・ガリアーノやヴィヴィアン・ウエストウッドが斬新な服を作っていた。
にもかかわらず、モリッシーが「ギャルソン」を着用し、マーが「ヨウジ」を着ていたとするならば、それは結果的に川久保玲と山本耀司のクリエイションが如何に凄かったのかという一点に尽きると思う。
また、選ばれるギャルソンとヨウジもさる事ながら、それを選び取るモリッシーとマーのセンスの良さが楽曲に現れているとも言えるのではないか?
(油断するとすぐ楽曲やバンドの内容に触れたくなってしまう。だが、グッと堪えて、ファッションのことを)
モリッシーが以前からギャルソンを愛用しているのは知っていたが、ジョニー・マーはジョンソンズのロカビリースーツだと思っていた。今年に入って、当時、彼の近くにいた人物にジョニー・マーはヨウジを愛用していたという事を教えてもらい、やっと謎が解けたのです。
ギャルソンとヨウジ。どちらもよく似た趣旨 “レディースに合うメンズ服を作りたい” から始まったブランド。
モリッシーが着用しているギャルソンのジャケットは洗いがかかったウール素材で硬い素材、一方マーが着用しているヨウジのウールギャバは柔らかい素材。
どちらもラペルに装飾を施しているが、ヨウジの方は襟まで縁どられていて折り返しのデザインがされている。
ギャルソンが硬質なハードボイルドなデザインなのに対してヨウジは服と身体の間に空気を孕む様なデザインが特徴。
Modfather ポール・ウェラーが「ポールスミス」を着用してる頃、「コムデギャルソン オムプリュス」と「ヨウジヤマモト プールオム」を着てステージに立つなんて、最先端で最高峰。素敵過ぎる上に軽々と着こなしています。この時点でウェラーと比べても全然負けていない。
(当時は僕も洗いの効いたコムデギャルソン オムのシャツを着て、ギャルソンのショップバッグに薄いノートを入れて脇に抱え、高校に通っていた)
翌87年、映画『アイアンマン』で知られるロバート・ダウニーJr.が、『レス・ザン・ゼロ』という映画の中でヨウジを着用していたり、ジョン・ルーリーがプライベートでギャルソンを着たりしているので、アメリカよりも一年早かった。
今でも語り継がれる、1991年の『6.1 the men』(※) 。東京で「コムデギャルソン オムプリュス」と「ヨウジヤマモト プールオム」のジョイントしたショーが行われた。モデルはデニス・ホッパー、高橋幸宏、細野晴臣、ジョン・ルーリー、ドン・チェリー、ブランキー・ジェット・シティという面々。
それより、5年も前にモリッシーとマーはギャルソンとヨウジを着ていた。この2人が6.1のショーに出演していたとしても、他の誰にも負けていない。
かつて川久保と山本は恋仲、同志の関係にあったと言われている。奇しくもファッション界の【茨の同盟】と言えるだろう。
モリッシーとジョニー・マーが川久保玲と山本耀司の服を着るという事は必然だったのかもしれない。
カタリベ注(※) :
『6.1 the men』は、1991年2月の湾岸戦争の勃発に対して、それでもファッションはへこたれないという気概を示す為に行ったと山本耀司は語っている。
2017.05.25
YouTube / Oscar Devon
YouTube / Manubibi Walsh
YouTube / Yonghoon Kim
Information