3月5日

40周年!ストリート・スライダーズのデビューアルバムからその魅力を探ってみる

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ストリート・スライダーズのデビューアルバム「SLIDER JOINT」がリリースされた日
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映画「“BLOW THE NIGHT!” 夜をぶっとばせ」にオープニング登場!


1983年3月5日、ストリート・スライダーズ(以下スライダーズ)はシングル「Blow The Night!」、アルバム『SLIDER JOINT』同時発売でメジャーデビューを飾る。そして同月19 日に公開された実録映画『“BLOW THE NIGHT!” 夜をぶっとばせ』では、『SLIDER JOINT』の中から5曲が挿入歌として使用される。今からちょうど40年前の出来事である。

映画『“BLOW THE NIGHT!” 夜をぶっとばせ』の主人公は実在の非行少女、高田奈美江だった。彼女の実体験である、暴力、暴走行為、シンナー、不純異性交遊などの行為を生々しく記録したこの映画は、当時カテゴライズされていた “ツッパリ”や、その後の“ヤンキー” という言葉で締めくくれる程なまやさしいものものではなかった。スクリーンで描かれるその世界は荒廃しきっていた。それは、“愛なき世界” と言っても過言ではないくらい殺伐としたものだった。この実録フィルムには、ファンタジーが入る隙がないほど、リアリティに溢れていたと記憶している。



この映画のオープニングにスライダーズが登場する。

オープニングのシーンで演奏されるのは、『SLIDER JOINT』のB面2曲目に収録されている「マスターベイション」だ。薄暗いライブハウス。ヴォーカリストの虚ろな瞳にはアイラインが引かれている。言葉を吐き捨てるような歌い方。ステージ下手(しもて)でかがむような格好でリズムを刻むギタリストは女性だろうか? 殺伐とした世界を描き切った映画のオープニングに登場した彼らは、この世界のもっと深いところで “愛なき世界” を傍観する地獄からの使者のように思えた。

これに加え “マスターベイション“ というショッキングなワードが繰り返し叫ばれる。

それほど、彼らの登場は衝撃的であり、規格外だった。

そもそもスライダーズの音楽は、あの時代のドロップアウトした少年、少女がフラストレーションのはけ口にするような直情的でスピーディなものではなかったし、うねるようなグルーヴはテレビから流れるヒット曲とは明らかに違う世界にいる。彼らとの出会いはまさに異文化との遭遇だった。それは興味が半分、畏怖の念が半分といったところか。

リトルストーンズと呼ばれたストリート・スライダーズ


映画の公開からしばらくして、音楽雑誌などでも頻繁にスライダーズがピックアップされるようになる。基地の街・福生でベトナム戦争時代、駐日していた多くの米兵を相手にしてきたライブハウス「UZU」のステージで人気を博していたこと、デビュー前は “リトルストーンズ” と呼ばれていたことーー。様々な情報が入ってくることで、スライダーズの実像がだんだんと浮き彫りになっていく。

極めてドメスティックな荒廃した世界、そしてこれに相反するロックカルチャーに根付いた憧憬の世界が溶け合った中に存在するバンド。それが1983年のストリート・スライダーズだった。

彼らのファーストアルバム『SLIDER JOINT』は、メジャーデビューを飾ることができた多くのバンドがそうであったように、アマチュア時代の集大成としてアウトプットされた作品だと言っていいだろう。堅固なリズム隊を土台にHARRY、蘭丸のギターの絡みでしかなしえることが出来ないダイレクトな世界観を見事に打ち出している。

―― 痛快だ。誰にも媚びずに、世の中の流れなど気にせずに、やりたいことをやる、出したい音を出す、というロックバンドの美学に溢れた作品であるということをまず感じた。



聴き手が引き込まれていくリリックの世界とは?


しかし、繰り返し、このアルバムを聴くことで、それだけではないことがわかってくる。特に、HARRYが描くリリックの世界に注目したい。

 空が晴れてるのに
 雨が降ってるのさ
 Baby ,baby 教えてくれ
 こんなことってあるのかい?

―― こう歌う「のら犬にさえなれない」は、極めて詩的だ。HARRYの描くリリックは、コンクリートの地面に腰を下ろして街を見上げるようなストリートレベルでありながら奥行きがあり、他に類を見ない寂寥感がある。そんな世界観に聴き手が引き込まれていく。これがスライダーズの魅力のひとつだ。

映画『“BLOW THE NIGHT!” 夜をぶっとばせ』に登場した時の畏怖とも言える存在感とも、リトルストーンズと呼ばれた福生時代のイメージとも違う日本のロックバンドとしてのオリジナリティに溢れた魅力がスライダーズには感じられる。

レコードデビュー40周年の2023年、リユニオンによる武道館公演も決定しているスライダーズ。登場時のファーストインパクトからは想像もつかないほど独自性の高い世界観はアルバムをリリースするごとに研磨されていった。そして2023年の彼らがどのようにアップデートした音を聴かせてくれるのだろうか。

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2023.03.05
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カタリベ
1968年生まれ
本田隆
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