7月3日

作詞家 松井五郎の世界を堪能!時代を超えた《女性アイドル・ラブソング編》

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今なおヒットチャート上位曲を作り続ける作詞家・松井五郎


2023年4月、各ストリーミングサービスにてプレイリスト『“G-ism”松井五郎セレクション〜女性アイドル編【おとラボ】』が公開された。

“G-ism” は、1980年代から作詞家として活動している松井五郎が手がけた作品をまとめたプレイリストのシリーズ。この『女性アイドル編』の全40曲は、工藤静香「恋一夜」、中山美穂「女神たちの冒険」といったヒットシングルは少なめで、シングルのカップリング曲やアルバムの収録曲から多数選ばれている。しかし、今なおヒットチャート上位曲を作り続ける松井五郎の作品ゆえに、プレイリスト全体を、新鮮かつ深遠に楽しめることだろう。

どことなく湿り気を感じさせる松井五郎ワールド


松井五郎の描く世界を、筆者なりに考えると、“大人になったら分かる恋愛” と、“大人になっても持ち続ける勇気” があるように思う。

前者は、例えば、中森明菜「月夜のヴィーナス」(作曲・編曲:松岡直也)にある――

 誘いかける あなたのためいきに 指を嚙む
 いつからこんな しぐさを覚えたか こわくなる

―― のように、着実に大人の階段を一歩上っている。他にも、浅香唯「こんなに涙がこぼれるなんて」(作曲:井上ヨシマサ、編曲:若草恵)や「抱きしめてほしい 言い出せなくても ためいきで届けてみるわ」と歌う岩崎良美「唇にメモワール」(作曲・編曲:鈴木茂)など、どことなく湿り気を感じさせるのも松井五郎ワールドだろう。

そして後者は、松井が作詞した光GENJI「勇気100%」と同じくNHK&Eテレアニメ『忍たま乱太郎』のタイアップ曲となった中山エミリ「いつだってYELL」(作曲・編曲:馬飼野康二)の歌詞に、

 つよい雨に打たれて 虹の麓(ふもと)へ行ける
 負けながら 強くなる 君も悪くない

―― とあり、サビの「がんばんなくちゃ がんばんなくちゃ」も含め、子どもにも分かりやすくありつつ、大人になって、より深く実感させられる言葉が多い。「つらいときに がんばれそうな 夢見るちから 信じて」と歌う堀ちえみ「Smile」(作曲・編曲:町支寛二)も同系列だろう。

そんな風に、“大人だからこそ深く”、そして “新曲多め”に楽しめるのが本リストの特長だ。今回は、その中で、“大人になったら分かる恋愛” を中心にオススメしたい3曲を選んでみた。順位は、“今こそプレイリストで聴いてほしい” と個人的に思う順であって、何らかの優劣を示すものではない点をご了承願いたい。

岩崎宏美、ribbon、柏原芳恵。今こそプレイリストで聴いてほしい松井五郎3選


第3位:岩崎宏美「カサノバL」(作曲・編曲:山川恵津子)
1986年のアルバム『わがまま』収録のブラス隊の演奏がゴージャスなナンバー。岩崎は、1985年の両A面シングル「決心 / 夢狩人」以降、自立心の強い女性の登場する歌が多くなるが、その変革期の歌詞を多数手がけたのが松井五郎だ。

本作でも、パーティーでより取り見取りの男性に目移りしつつ「誰にも けして 愛してるなんて 言わない」とガードは堅く、それでいて「ほめことばより おくりものより 心を満たす トラブルがひとつみたいわ」と、恋愛の核心を突いている。

興味深いのは、岩崎が歌う視点が、主人公の女性になったり、彼女を見守る女神だったり、巧みにスイッチする点だ。岩崎宏美は初期の筒美京平による緻密なポップスも、「思秋期」や「聖母たちのララバイ」のような大作バラードも勿論見事だが、この時期ならではの煌びやかなボーカルも聴きどころ。



第2位:ribbon「さよならが終わるまで」(作曲:清岡千穂、編曲:西脇辰弥)
1992年のアルバム『R753』収録。テレビ番組内のタレント養成講座「乙女塾」から誕生した永作博美、松野有里巳、佐藤愛子からなる3人組のribbon。当時は、ドラマタイアップ全盛で、女性アイドル勢も自身が出演するドラマ主題歌以外は苦戦しており、そういったタイアップと無縁だった(今でこそ名女優の永作もドラマで活躍し始めたのが1994年)。

しかし、作品の方はアイドル性に甘えることなく、真摯に音楽に向き合ったものが多い。

別れの瞬間を描いた本作でも、「まだ 愛がこんなに」「まだ あふれているのに」「もう ふたりは」「もう 心を いま」「そう 決めたから」と、一人の女の子の揺れ動く多感な様子を描いた歌詞も技巧的だし、それを3人で歌い分けている彼女たちもさりげなく上手い。ストリーミングで全曲が配信されている今だからこそ、再評価が進んでほしいグループだ。



第1位:柏原芳恵「太陽は知っている」(作曲:松尾一彦、編曲:渡辺博也)
1985年のシングル。夏らしい涼し気な曲調と、夏だからこそ湧き上がる情熱を帯びた歌詞を、芳恵が気品と色気の絶妙なバランスで見事に歌いきる。

本作は、オリコンや日本テレビ系の『ザ・トップテン』でも、週間TOP10入りしたヒット作なのだが、この前後「待ちくたびれてヨコハマ」「し・の・び・愛」のシングルに比べると当時の売上も、現在の知名度も低めなので、あえて第1位で推してみたい。

当時19歳の芳恵が「軽蔑されていい よこしまな瞳(め)でみつめたい」「誘惑うまくされて 私生活までこわしたい」と、愛よりも情熱に向かいそうになる大人の本音を違和感なく歌っているのがポイント。



こんな風に、明解なアイドル歌手のイメージの “その先” を描いた楽曲がとても多いのが、松井五郎の世界だ。当時はアイドルソングとして何気なく聴いていた楽曲から、当時とは異なるであろう、より人間味のある切なさや愛しさが沸き上がってくることだろう。


■ 松井五郎プロフィール
1981年CHAGE and ASKAで作詞家としてスタート。以後、安全地帯、氷室京介、工藤静香、郷ひろみ、田原俊彦、吉川晃司、V6、矢沢永吉、ビリーバンバン、五木ひろし、田村ゆかり、水樹奈々、平原綾香、森山良子、Kinki Kids、杉山清貴、岩崎宏美、沢田知可子、山内惠介、Sexy Zone、田村芽実、藤澤ノリマサ、竹島宏など(順不同)など幅広いジャンルのアーティスト、更にアニメや特撮、また、パク・ヨンハ、東方神起、など韓流アーティストにも多くの作品提供を行う。2023年現在までに3,500曲を越える数の作品を手がける。2009年「また君に恋してる」坂本冬美でレコード大賞優秀作品賞を受賞。2010年同曲で特別賞、JASRAC賞・銅賞を受賞。2018年「さらせ冬の嵐」山内惠介「恋町カウンター」竹島宏でレコード大賞作詩賞受賞など受賞。同年「さらせ冬の嵐」山内惠介で藤田まさと賞受賞。「はじめて好きになった人」2020年竹島宏で作詩大賞特別賞受賞。

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2023.04.22
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  “G-ism”松井五郎セレクション〜女性アイドル編【おとラボ】
 

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カタリベ
1968年生まれ
臼井孝
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