2023年 6月28日

【澤田知可子インタビュー】「Vintage」で目指すのは個性じゃなくて究極のスタンダード

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澤田知可子のアルバム「Vintage II〜時がめぐるなら〜」発売日
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【澤田知可子インタビュー】洋楽の名曲を日本語でカバー!プロデュースは松井五郎

【澤田知可子インタビュー】21世紀に残したい泣ける名曲「会いたい」を歌い続けて…

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『【澤田知可子インタビュー】洋楽の名曲を日本語でカバー!プロデュースは松井五郎からのつづき

澤田知可子が新たなライフワークとして掲げる洋楽の日本語カバーアルバム『Vintage』『Vintage II』。最終回となる第3回では、最新アルバム『Vintage II~時がめぐるなら~』を深掘りしてもらった。

“目指せ、シリーズ100曲”!「Vintage」は長期的なプロモーションにしていきたい


―― まずは、第1弾『Vintage』の反響から尋ねてみた。

澤田:実際に会場で聴いてくださると、50代以上の方から “いい企画だね!” “待っていました!” と言ってCDを買ってくださる方がとても多いと感じています。だから本当に聴いていただける場所をもっと増やしていきたいですね。“目指せ、シリーズ100曲” なので、この企画をやり続けることによって、段々と皆さんに浸透していくような長期的なプロモーションにしていきたいですね。

―― 逆に、実際にリリースしてみて反省点などはあったのだろうか。

澤田:実は、権利的にプロモーションが難しい部分があるんです。例えば、今回許諾が下りた日本語カバーの配信ライブも、アーカイブとして残るのはNGなので、生配信しかできないんですね。だから、第2弾ではパブリックドメイン(権利が発生せず、誰でも使用できる状態)の楽曲を増やしました。手売りはできるけれど、アーカイブがNGならリスナーを増やすことができないので。

ここからは収録曲について見ていきたい。まず、前作収録のカーペンターズ「(They Long To Be) Close To You」に続き、本作でも「恋の面影 The Look of Love」、「A House Is Not a Home」などバート・バカラックが制作に関わった楽曲が多くなっている。

澤田:それは単純に、第1弾の段階から申請を出していたのが、このタイミングで一気に許諾が下りたからなんです。今年亡くなられたこともあって、先方もトリビュート的にOKを出して下さったのかもしれませんね。だから、決して亡くなられたのにあわせて制作したわけではないんです。去年亡くなられたオリビア・ニュートン=ジョンの「そよかぜの誘惑」もそうですね。既に40曲ほどは申請に出していて、まだ許諾待ちのものがたくさんあるんですよ。

風のように歌ったオリビアの「そよ風の誘惑」


―― 第2弾は、澤田の歌声がより優しく、なおかつより深くなっているのが特徴的だ。特に、カーペンターズや「青春の輝き」やアルバート・ハモンドの「落葉のコンチェルト」などの有名曲により顕著に表れている気がする。

澤田:嬉しい! それは私の伸びしろかもしれませんね。より丁寧に言葉を伝えたいと一生懸命にやっているだけですが、このシリーズの要となる “聴きやすさ” は、より大切にするように心がけました。個性ではなく、究極のスタンダードとなることを意識して。例えば、「そよ風の誘惑」も♪あなたならきっと幸せになれる~のフレーズを強く歌ってしまったら、みんな引いちゃいますよね(笑)。これはオリビアになりたいなぁ、って思いながらまさに風のように歌いました。

―― また、松井五郎の歌詞もより洗練されているように感じる。特に、♪さみしさを心が抱きしめてる 手放せればいいのに~と歌う「青春の輝き」や、♪なにもかも さよならで終われる愛ならよかったのに~と歌う「雨の日と月曜日は」などのカーペンターズの曲は、BGM的にサラリと聴ける部分に、よくよく聴くと松井五郎ならではの唸らされるフレーズも散りばめられているのだ。

澤田:松井先生は、最初にカーペンターズの楽曲を全部訳されているんですよ。だから、カーペンターズには英語のニュアンスに寄り添って訳詞をしてみたいというこだわりも強いのでしょうね。一つ一つの言葉をたどっていくと、人生の哲学のようなものを感じますね。



―― また、ジェーン・バーキンの「無造作紳士L'aquoiboniste」に出てくる “A quoi bon” をあえて “バカモン(馬鹿者)!” と発音させるなどの意訳も見事だ。

澤田:“アカボニスト” って皮肉屋みたいな意味なんですが、それを “あんたってバカね” と言われるような感じで “バカモン” と訳していて。歌の中に、“バカモン” って言葉が入ると、歌っていてもスカっとしますね(笑)。

―― さらに、本作では、ジャズやボサノバのスタンダード曲など、より多彩な曲調に挑んでいるのも興味深い。

澤田:今回は、パブリックドメインの曲を多くしたことで、自ずとそういう曲の割合が増えたんです。でも、私はジャズシンガーではなく、そのままカバーすると曲の個性が薄まってしまうので、例えば、「I Wish You Love」はショーロ・バンドとして活動している田島道生さんに演奏して頂いて、前半はクラシックギターで寄り添うようにしつつ、後半で躍動感の中に優しい声が乗ったサンバにするという風に工夫を凝らしています。ボサノバのブラジル的な世界観は普段からライブに行くほどファンなんですよ。

「ひまわり」は音楽家ができる平和へのメッセージ


―― その一方で、同名映画の主題歌「ひまわり」のように、かなり切ない歌も収録されており、実に振り幅が大きい。

澤田:これはロシアのウクライナ侵攻が始まった時に、いち早く松井先生から “「ひまわり」をやろう。これは、僕たち音楽家ができる平和へのメッセージなんだよ” と連絡がありました。その流れもあって、「ひまわり」はアルバム発売の随分前から、いち早く(許諾の要らない)ライブでは歌ってきました。そこで想いを表現しながら、CD収録の許諾を待っていたのですが、“たとえ(許諾が)下りないとしても、これは今こそ澤田知可子に歌ってほしい歌だよ” と、言っていただきました。

―― 本作は、♪同じ空を見上げていても 見えている明日はなぜ違うの~、というフレーズが強烈に胸に突き刺さる。

澤田:映画『ひまわり』には、ウクライナのひまわり畑が登場し、実際に土の下に様々な国の人たちがそこで眠っているという状況で、まさに今の時代に伝える歌だとスタッフと一致団結しました。松井先生からも、LINEですぐに歌詞が送られてきましたね。



―― 他にも、小野澤篤によるリクエストで、かつて『日曜洋画劇場』のエンディングテーマだった「So in Love」や、澤田知可子によるリクエストで、映画『小さな恋のメロディ』の主題歌だった「若葉のころ」も収録され、実に多彩な内容が一つに美しくまとまっている。中でも特に苦労したのはどの曲だろうか。

澤田:やはり「そよ風の誘惑」ですかね。あの世界観があまりにも完成されているので。でも、どの曲も『Vintage』シリーズは、“引き算の旅” “断捨離の旅” なんです。いかに、無駄を排除して余白を作っていくか。やはり、日頃からLIVEを中心に活動してきた歌手としては、目の前のお客さんたちに確実に届くようにと、ついつい大きく歌ってしまいがちなんです。でも、レコーディングは、たった一人の人に届けようとそのボリューム感を変えると、声帯も体も戸惑ってしまうんですね。そこを馴らせるのが大変で。それを小野澤さんのディレクションのもと、どこまで差し引けるか試行錯誤しました。

―― そういった努力は、第1弾と第2弾の聴きやすさにも如実に表れているので、是非とも聴き比べていただきたい。なお、本作では、洋楽カバーのほかに、「会いたい」のアンサーソングとなる「時がめぐるなら」のソロバージョン「時がめぐるなら~Solitude~」や、「会いたい~2001ストリングス・バージョン」など、澤田のオリジナル曲も2曲収録されている。

澤田:デュエットの時は、天からの声を藤澤ノリマサくんが歌ってくれたのですが、ソロで歌うと、そのメッセージもすべて自分で消化する必要がありますよね。でも、これは「会いたい」同様に語り部として、物語を淡々と伝えることに徹しました。もとの言葉が素晴らしいので、気持ちとしては無意識に出てしまうくらいの方がいいんじゃないかなと思いました。

―― 実は、この「時がめぐるなら」の歌詞には、ちょっとした仕掛けがあると言う。

澤田:「時がめぐるなら」の歌詞は、詞先で作られた後、藤澤ノリマサくんが曲をつけてくれたんです。そうしたら、後になって松井先生が “これねぇ、実は「会いたい」のメロディーに乗せながら作ったんだよ” って種明かしをされて、みんなビックリ! でも、藤澤ノリマサくんの世界観がしっかりと出た別の曲になっていますから。松井先生も、“よくこんなメロディーがつけられたね!” と褒めていましたから。藤澤ノリマサくんも、「僕、初めて松井先生から褒められました!」と言っていました。それくらい素晴らしいんです!

そして、どうせなら、その原点となる「会いたい」も収録しようと。これは “21世紀に残したい泣ける名曲” の1位に選んでいただいたことをキッカケに2001年に制作した千住明さんアレンジのストリングス・バージョンですが、当時はインディーズで発売したのもあって、あらためて浸透させたいと思って入れました。「会いたい」も立派な “Vintage” ですからね!

自然に聴いてもらえれば嬉しい、是非、若い方たちにも聴いてもらいたいです


―― 今も着々と準備が進められている『Vintage』シリーズ、今後さらにどんな人に聞いてもらいたいだろうか。

澤田:常に許諾申請している曲が何曲もあり、その申請の時には、単に “日本語に訳した歌詞と、それを英語に直したもの” という文字だけではなく、実際にピアノや打ち込みの演奏に合わせてラフに歌ったものも送ります。それで許諾がおりたら、本格的に録音するという流れなんです。でも、許諾が確実に下りると思って、既にストリングスの演奏まで録音を進めていたのにNGが出てしまった時などは、正直へこみますよ。そんな時は、“(CDは無理でも)LIVEでは演奏できるんだ” と、気持ちを切り替えます。

この『Vintage』シリーズに関しては、自然に聴いてもらえれば嬉しいですね。”このアルバムを聴いて元気が出ました!“ という強烈なメッセージではなく、このアルバムがお家でずっと流れているというような、空気のような存在になれるといいですね。本当にすごい楽曲をカバーしているので、是非、若い方たちにも聴いてもらいたいです。

―― 2023年の後半は、本作をメインとした『Vintage Live』や、同じ年の同じ8月生まれで、交流のある香西かおりとのジョイントLIVEも予定されている。最後に、これからのビジョンについて尋ねてみた。

澤田:今年の8月でちょうど還暦を迎え、私自身も “Vintage” になります(笑)。今後は、2004年から始めた『歌セラピー・コンサート』をやっていくというスタンスは変えずに、この『Vintage』コーナーもあって良いと思っています。この時代、心がふさぎ込んでしまうような時に、私の “うたぐすり” で癒していければ嬉しいです。

テレビ番組では、本人曰く “波瀾万丈な人生” を面白おかしく報じられることの多い澤田知可子だが、この『Vintage』シリーズの質の高さは、35年以上にわたって、ひたむきに音楽を作り続けてきたという何よりの証だろう。とかくSNSを使った仕掛けがヒットの要因となりがちな昨今、純粋に良い日本語の楽曲を聴きたいという方に、『Vintage』シリーズは是非ともおススメしたい珠玉の作品集だ。

■ Vintage(2022年3月9日発売)
1.(They Long To Be)Close To You
2.もしも… ‒If ‒
3.Alone Again(Naturally)
4.月灯りのワルツ‒The Last Waltz‒
5.The Windmills of Your Mind
6.Raindrops Keep Fallin' on My Head
7.You Needed Me
8.Love is Blind
9.Unchained Melody
10.Moliendo Café
11.Moon River
12.Smile
13.Over the Rainbow
14.The Rose

■ Vintage II~時がめぐるなら~
1.青春の輝き I Need to Be in Love
2.そよ風の誘惑 Have You Never Been Mellow
3.落葉のコンチェルト For the Peace of All Mankind
4.雨の日と月曜日は Rainy Days And Mondays
5.ひまわり Loss of love
6.So in Love
7.無造作紳士 L'aquoiboniste
8.若葉のころ First of May
9.The Water Is Wide
10.恋の面影 The Look of Love
11.I Wish You Love
12.A House Is Not a Home
13.時がめぐるなら~Solitude
14.会いたい~2001ストリングス・バージョン
15.As Time Goes By

https://reminder.top/monthly-2022-02-sawadachikako/

特集:澤田知可子

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