このアルバムには、その後の今井の世界を形成する非常に重要なコンポーザーが初参加している。1人目は「夏をかさねて」を作曲した柿原朱美。柿原は今井に14曲の楽曲を提供しているが、1990年代に発表された「retour」「A PLACE IN THE SUN」はアルバムタイトルにもなった重要なナンバーだ。そしてもう1人の重要人物は上田知華。『Bewith』では「黄色いTV」「9月半島」の作曲を手掛けている。上田の作品は1980年代後半から1990年代中盤にかけて、重要な役割を担っていたと言ってもいい。これまでの提供曲は23曲で、人気曲「瞳がほほえむから」も上田による作曲だ。
アルバム『Bewith』はアルバムチャートの1位を獲得する大ヒットになり、2か月後にはシングル「彼女とTIP ON DUO」が発売されている。今井本人が出演した、1988年資生堂秋のキャンペーンソングに起用されたこの曲も上田知華が作曲を手がけ、4枚目のシングルにして初のTOP10入りを果たすヒットになった。この時期の今井は同世代の女性たちの憧れの存在になり、メイクやファッションに影響を受けた女性ファンが街にあふれるほどの人気であった。
ドラマ「あしたがあるから」の主題歌「PIECE OF MY WISH」
そんな “時の人” となった今井美樹は、1991年に自身の大きなターニングポイントとなった “あの曲” を発表している。内館牧子脚本によるTBS系ドラマ『あしたがあるから』の主題歌になった、7枚目のシングル「PIECE OF MY WISH」のことである。結婚を控えた普通のOLが、社長の企みで特別企画室の部長に就任。様々な逆境に悩み傷つきながらも自力で運命を切り開いていくという内容のドラマだった。
これまでに様々なアーティストにカバーされてきたこの「PIECE OF MY WISH」だが、作曲をした上田知華自身もセルフカバーしているのをご存じだろうか。2013年、デビュー35周年を記念して発売された『ゴールデン☆ベスト 上田知華』の中に新録音として収録されている。アコースティックギターをベースにしたシンプルなバージョンなので、こちらのバージョンもぜひ聴いてみていただきたい。
そんな今井美樹の「PIECE OF MY WISH」は現在、花王『ニュービーズ』のCMソングとして大量にオンエアされている。リアルタイムで聴いていた世代には懐かしく、初めて聴いた世代にも大きなインパクトを与えているのではないだろうか。CMから流れてくるこの曲を聴くたびに、名曲の存在感を強く感じずにはいられない。