私がサンパウロで住んでたいた地域にはアジア系の人が多く、日系人をはじめ、中国系や韓国系といった友だちが沢山いました。
高校1年生だった時、同じクラスにはジンという韓国系の女の子がいて、特に仲が良いという訳ではありませんでしたが、派手めな彼女は地味な私が気になるのか、よく声をかけてもらったり立ち話をしたり… 私はそんな彼女が好きでした。
期末テストの時期、カンニングを警戒する先生から「ノートやバインダーは教室の前にある黒板の横に置くように!」と指示があったりしましたが、1日目のテストも無事終わり、自分のバインダーを持って帰ろうと思い黒板の所へ行くと、「あれっ? 私のバインダーがない!」
こともあろうに、全教科分の大事な記録がある私のバインダーが消えてしまっていたのです。
通っていた学校は教科書をほとんど使わなかったので、バインダーがないと試験勉強が手につきません。途方に暮れながらも記憶を辿り、なんとか2日目のテストも終えて帰ろうとした時、なんと、私のバインダーが黒板の横にあるじゃないですか!
しかも、手書きのメモで私の名前まで挟まれていて。なぜ? まさか? 気のせい? と思いながらも、見覚えのある字に確信が持てず、「まあ、過ぎてしまったことに文句を言っても仕方がない」と、自分のバインダーが手元に戻ってきたことに安心しました。
それから2週間後。
急にジンから「家にご飯食べに来ない?」と誘われ、私が憧れていた男の子が彼女の友だちの友だちだったこともあり、彼女の自宅に行ってダブルデートランチをすることになりました。
当時、アメリカで放送されていたエルヴィス・プレスリーの生涯を描くドラマがブラジルでも(1年遅れで)放送されていて、ランチを食べながら4人で観ていると、ドラマから「オールウェイズ・オン・マイ・マインド」が流れてくるじゃないですか!
そう、まさに当時流行っていたペット・ショップ・ボーイズの曲がエルヴィスのカヴァーだということを初めて知って、衝撃を受けた瞬間です。ジンありがとう!
とは言え、何故それほど仲の良くなかったジンが私を誘ってくれたんだろう? ということを考えてみると、私の疑いが半分確信へと変わりました。
テスト前に何を勉強すればいいのかわからず、私のバインダーを盗み、ご親切にも私の名前まで書いて返してくれたことが良心に響いたのか、そのお詫びとしてジンは私を誘ってくれたんでしょう。そんなこと、とっくに水に流していたのに。
ペット・ショップ・ボーイズの「オールウェイズ・オン・マイ・マインド」を聴くたび、こんなエピソードと一緒に、みんなで作ったパスタの味や、エルヴィスの素敵な歌声を思いだします。
2016.08.06
YouTube / parlophone
YouTube / Flavius Petrus Sabbatius Iustinianus Augustus
Information