2016年7月7日、永六輔が亡くなった。
テレビ局や街角で何度かすれ違ったことはあるものの、話をしたことはありません。けれど、僕は永六輔のことをずっと師匠だと思って生きてきました。そう、かなり一方的に(笑)
永さんが活躍を始めたテレビ黎明期の話はいろんなところでチェックしていたし、永さんが出演していたテレビ番組もほとんど観てました。80年代でいうと NHK の『テレビファソラシド』、90年代なら日テレの『2×3が六輔』は毎週欠かさなかったように思います。
そうは言っても、著書はありすぎて全部をフォローすることなどできず、ラジオに至っては TBS の月‐金ベルトが50年も続いていて、さすがに追いかけることなんて不可能。まあ、全くもって出来の悪い(勝手な)弟子であるのですが、永さんのヴァイタリティは頭が下がるどころの話ではありません。あの世に行ってもゆっくりなんてしないんだろうな、この人は。
そんな永さんの功績は至る所で数多く語られていますが、やはり「上を向いて歩こう」について触れないわけにいきません。作詞が永六輔、作曲は中村八大、歌が坂本九という、六八九トリオの作品です。
ご承知とは思いますが、後にも先にも日本語の歌でビルボードチャートの1位を獲得したタイトルはこの曲しか存在しません(このあたりの詳細については、佐藤剛さんの書かれた『上を向いて歩こう』という素晴らしい書籍が上梓されているので、興味のある方はぜひ)。
そして、この「上を向いて歩こう」を80年代に蘇らせてくれたのは、なんといってもRCサクセションの忌野清志郎!
僕より下の世代になると、オリジナルより RC のカヴァーを先に聴いた人が圧倒的に多いのではないでしょうか。初出は79年のシングル「ステップ!」のB面でしたが、多くの人に知られるようになったのは翌年にリリースされたライヴアルバム『RHAPSODY』に収録されてからだったように思います。
当時、破竹の勢いでライヴを重ねていた RC だけに当然と言えば当然かもしれませんが、シングルのスタジオヴァージョンよりライヴ盤の方が断然カッコイイ!
なぜって、清志郎はこの曲をライヴで歌う前に、必ずこんな MC をつけて歌い始めるから。
日本の有名なロックンロール!!
ワン! トゥー! ワン、トゥー、さん、し!
でも80年当時、「え? この曲ってロックンロールなの?」という思いがあったことも少なからず事実です。時代が成熟していなかったせいもあるし、坂本九だって “芸能界の気さくなニキビおじさん” くらいにしか思っていませんでした。
多分、当時のロック的価値観と「上を向いて歩こう」をロックンロールで直結できたリスナーはそんなに多くはいなかったはず。でも清志郎はそんな時代から「この曲の持つ底知れないパワー」を見抜いて、その後30年にわたって、必ず「日本の有名なロックンロール!!」と叫んでから歌い続けてきました。
そんな清志郎がいたからこそ「上を向いて歩こう」はロックンロールであるというイメージが浸透し、この曲の持つ本来のポジションに収まっていったような気がします。この他にも素晴らしいカヴァーがたくさん存在していますが、そのほとんどがバラード調。未だかつてこのRCサクセション(忌野清志郎)のカヴァーを超える解釈に出会ったことはありません。
そして今、清志郎はいません。坂本九も中村八大も、そして永六輔も。
でも、その肉体が消えても名曲は残り続けます。ひとりぼっちの夜、多くのミュージシャンに歌い継がれていくのです。
日本の有名なロックンロール!!
ワン! トゥー! ワン、トゥー、さん、し!
※2016年07月15日に掲載された記事をアップデート
2018.07.07
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