2008年 2月10日

RCサクセションが聴こえる — 2008年の奇跡、忌野清志郎 完全復活祭

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photo:UNIVERSAL MUSIC  

あのスペシャルな完全復活祭から10年以上経ったなんて、全く信じられない。

幸いにも DVD や Blu-ray など、爆音で追体験が可能だが、今回は2008年当時、武道館に観にいった自身の記憶の断片を残しておこう。

入場時にボスの手書きのイラストが入った “快気祝” をもらう。席は北東のP列、ステージの斜めうしろから、バンド全体を見下ろす感じ。ステージ上部の目立つ場所に、巨大なパネル状のものが数枚ぶら下がっていて、何なんだろう? と思っていたら…

会場が暗転。

なんと、それはスクリーンになっていて、清志郎が2年前にガン治療をスタートしてから退院するまでの写真がイントロのように流され始める。凄過ぎる演出!

その映像に釘づけになってるうちに NICE MIDDLE のメンバーが徐々にステージに登場。三宅伸治に初めて観る新井田耕造! 梅津和時、片山広明のニュー・ブルーデイ・ホーンズ! ヤバい。震えがきたよ。

そして、最後にボス登場!

まるで JB みたいだ。ド派手な衣装に巨大なマント。執事を従えて登場し、三宅伸治が初っ端から弾き続けていた「JUMP」の長いイントロが終わる寸前、マントを脱ぎ棄てる。どう考えても清志郎にしか似合わない。これしかないという幕開け!

この日はアルバム『夢助』の曲たちの初お披露目でもあった。アルバムを聴いて、“久々に充実している” と感じた楽曲は当然のごとく、ライヴでも輝いていた。RC のナンバーから「激しい雨」まで―― 万全に準備を整えた忌野清志郎が、確かにステージに帰ってきたのだ!

MC も相変わらずの清志郎節が炸裂!「武道館ベイベ~ッ!!」の連呼から、軽くメンバー紹介を終える。そこに絶妙なタイミングで、仲井戸 “CHABO” 麗市が登場。CHABO 自身も少し痩せたような印象だったが、数曲を披露した後、ひとしきり語った。清志郎、清志郎の家族、ファン、スタッフに対するねぎらいの言葉は、本当に気持ちがこもっていて、感動的だった。

そこからは、清志郎の全キャリアから厳選に厳選を重ねた最高のライブセットがスタート。曲順は練りに練られている。そして、何より驚かされたのは、ガン治療に専念していたとは思えない清志郎の声とヴォーカルの底力だ。バンドに凄腕揃いのメンツを従えていても、1曲終わる毎に、「声そのもの」が強く印象に残るのは誰にでもできることじゃない。

バンドの NICE MIDDLE も、バンマス三宅伸治を中心にしっかりと新旧のレパートリーを2008年型ソウルミュージックに昇華し、清志郎を見事に支えていた。ブルーデイ・ホーンズの適度に荒ぶるアンサンブルにも何度となく気持ちを持っていかれる。

「チャンスは今夜」のステージ演出とか、大会場ならではの仕掛けも鼻につき過ぎることもなくハマっていた。この復活祭に関わったスタッフが作り上げた何もかもが、見事に武道館の中で輝きを放っていた。

完全復活祭の数日前、NHK『SONGS』で放送されたスタジオライブ以上の、スタックス直系の長めのブレイクを絡めた「スローバラード」。そして、「ドカドカうるさい R&R バンド」など、もうライブでは聴けないかもしれないと思っていた曲たちが、次々に心に突き刺さってきた。ヘビーな内容の MC を「愛し合ってるか~い!!」の一言で見事に締めた。

「激しい雨」の “RCサクセションが きこえる~” のところで、ついに俺も涙線決壊! スクリーンに今迄のライヴ写真が矢継ぎ早に映し出され、清志郎と CHABO と新井田さんの3ショットが絶妙のタイミングで写り込んできたからだ。

大ラスは、当然「雨あがりの夜空に」で決まり! ライブで会場中が一丸となって、ここまでシンガロングする光景をみるのは本当に久々で、震えが来た。

最後の最後、清志郎のお子さん2人が揃い、清志郎に花束を渡したのにも想わず、ジンときてしまった。タイマーズの1stアルバムにも声が収録されたり、初めて清志郎に連れられて、ライブ終了後のステージに登場した時は本当に幼く小さかった。

終演後、まるで会場にいる全員が最初に清志郎を聴いた時の表情に戻っているような気がした。皆が幸せの余韻に浸っていた。その場に居合わせる事ができて幸運だったし、清志郎と同時代を過ごせている事が、たまらなく嬉しく感じられた――。

そんな夜が、この日また一つ増えた。

2019.02.10
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カタリベ
1971年生まれ
海老沼大輔
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