80年代アイドルソング総選挙!ザ☆ベスト100投票開始!200曲のノミネートから未来に残す10曲を選ぼう
ヒット曲だけではない、ノミネート選考で重視したこと
『80年代アイドルソング総選挙!ザ☆ベスト100』は、1980年代の女性アイドルソング200曲を対象に、一般投票と、有識者などによる特別投票で、未来に残したい楽曲のベスト100を決める企画である。
ノミネートされた200曲は、「データ選出枠」と「推薦選出枠」の各100曲で構成される。データ選出枠は、2022年〜2023年に実施された『80年代アイドル総選挙!ザ☆ベスト100』の上位30組のアイドルが対象。その順位に応じて各アイドルの曲数を設定し、原則として1980年代に発売されたシングルの売上順によって100曲を決定した。推薦選出枠の100曲は、アイドルや音楽に詳しいライター、音楽評論家、音楽業界の関係者などからなる選考委員会が厳選したものである。1980年代にデビューした女性アイドルが、80年代に発表した楽曲を対象に、シングルA面だけでなく、B面やアルバム曲も候補とした。一部の音楽ファンの間で高く評価されてきた知る人ぞ知る曲や、シティポップブームなどをきっかけに近年再評価された曲にも目を向けている。さらに歴史的・音楽的な重要性や、歌手、年代、作家、楽曲タイプのバランスも考慮し、サブスクの再生数も参考にした。
侃侃諤諤の議論を重ねたうえでの選考である。トップアイドルのヒット曲が選外となっているケースもある。“◎◎が入っていない、なぜ、◎◎の曲がないんだ”。そうした意見が出るのは当然だろう。一方で、リリース当時はヒットチャートの100位以内にも入らなかったが、約40年後、Spotifyで2,700万回以上、SNSでは約5億回再生された高橋玲子「サンセット・ロード」のような曲も含まれる。川島恵「ミスター不思議」、佐東由梨「ロンリー・ガール」、沢田玉恵「紫外線」など、当時セールス面では振るわなかった曲もノミネートされている。選ばれた曲についてはもちろん、選ばれなかった曲についてあれこれ語ることも、一興だろう。
この総選挙が目指すのは、80年代アイドルソングの魅力を今の時代に伝え、未来へ残していくことだ。その思いを体現するアンバサダーとして、元・東京女子流の新井ひとみを迎えた。新井は現在、80年代アイドルソングのカバーを通じて、その魅力を発信している。
女性アイドルが次々とデビューした80年代
今回の総選挙の開催にあたって調べたところ、1980年代には、約500組の女性アイドルがデビューし、1,500枚を超えるシングル盤がリリースされている。つまり、ノミネートされた200曲も氷山の一角だ。では、これほど多くのアイドルソングが、なぜ1980年代に生まれたのだろう。
1979年、80年代という新しい時代に向けて、各レコード会社や芸能プロは、有力な女性新人アイドルのデビューを準備していた。1980年3月、1970年代の女性アイドルのトップに君臨していた山口百恵が、俳優・三浦友和と婚約し、10月の引退を発表。1980年の新人たちは “ポスト百恵” 候補と呼ばれた。その先頭を走ったのは松田聖子だ。7月にリリースされた「青い珊瑚礁」は、引退フィーバーが盛り上がるなか、山口百恵がその年に発売したどのシングルよりも売れたのだ。
一方、男性アイドルでは田原俊彦、近藤真彦がブレイク。男女ともにアイドル新時代のムードが生まれ、市場は大きく広がった。翌年以降も毎年何十人もの女性新人アイドルがデビュー。小泉今日子、中森明菜、菊池桃子、斉藤由貴、中山美穂、おニャン子クラブ、南野陽子、浅香唯と、続々とトップアイドルが登場し、ブームは拡大していった。
テレビが娯楽の中心にあり、多くの人が同じ番組を見て、同じ歌を聴いていた。歌番組が数多くあり、情報番組やバラエティ番組にも歌のコーナーがあった。アイドルには朝から深夜までテレビで歌を披露する機会があり、次々と新曲が求められた。こうした環境のなかで、1,500枚を超えるシングル盤がリリースされたのである。それらは映画やCM、アニメの主題歌や挿入歌にも起用され、日常のさまざまな場面で耳に入ってきた。その結果、ヒットしたアイドルソングは多くの人に共有され、時代とも強く結びついていくのだ。

松本隆、筒美京平、松任谷由実…… 才能が集結した80年代
80年代アイドルソングには、作り手にも豊かな才能がそろっていた。作曲家では、筒美京平ら1970年代から活躍する面々に加え、林哲司、後藤次利らも1980年代に存在感を増した。作詞では松本隆、秋元康、康珍化、売野雅勇、編曲では萩田光雄、船山基紀、大村雅朗らが多くの作品を送り出した。また、1970年代にブームとなったニューミュージックも成熟し、松任谷由実、来生たかお、竹内まりや、細野晴臣、中島みゆき、尾崎亜美、大瀧詠一らもアイドルに曲を提供した。
80年代アイドルソングの魅力には、歌手と楽曲の結び付きの強さがある。現在とは異なり、ソロアイドルが圧倒的な主流だったため、その人の声質や歌い方、キャラクターに合わせた曲が作られた。また、多くのアイドルがデビューしたことで、作品の幅も広がった。企画性の高い曲や実験的な曲、いわゆるB級アイドルのカルト作まで生まれた。誰もが知るヒット曲から、埋もれていた珠玉の名曲まであることも、80年代アイドルソングの面白さだ。
80年代のアイドルソングには、言葉数が比較的少なく、ひとつひとつの言葉をメロディに乗せることで、聴き取りやすく、口ずさみやすい曲も多い。歌詞では、卒業式の日を迎えた教室、夏の終わりの海、恋人の裏切りを目撃した瞬間など、季節や場所、状況を限定し、服装や持ち物、待ち合わせの場所、相手とのやり取りまで具体的に描く曲も多かった。一篇の短編小説を読むように、歌詞の中の物語をたどる楽しさがあるのだ。
知っている名曲、知らなかった名曲に出会う
特設サイトでは、ノミネート曲にSpotifyへのリンクが付いているほか、配信されている楽曲をまとめたプレイリストも用意されているので、気になる曲を実際に聴きながら選んでみてほしい。当時を知る人なら、久しぶりに聴くことで、以前とは違う魅力に気付くかもしれない。そして、80年代を知らない世代には、初めて聴く音楽との出会いが新鮮に感じられるだろう。作詞家や作曲家、編曲家の名前にも目を向ければ “この曲も、あの人が作っていたのか” という発見もある。
そこから、どんな10曲を選ぶか。自分史をなぞりながら、各年から1曲ずつ選んでもいい。好きなアイドルのノミネート曲に票を集中させてもいい。音楽評論家になったつもりで、歌詞やメロディー、歌唱、アレンジを聴き、これぞ名曲と思えるものを選んでもいい。10曲に絞るのは難しい。順位を付けようとすれば、さらに迷うだろう。きっとそれが面白い。聴き直し、比べ、入れ替えながら自分の10曲を決める。その時間も含めて、『80年代アイドルソング総選挙!ザ☆ベスト100』を楽しみ尽くそう。
80年代アイドルソング総選挙!ザ☆ベスト100

▶ 音楽シーンのコラム一覧はこちら!
2026.10.21