7月25日

これでオーラス!上から目線のキレっぷり、ツッパリ明菜ここに極まれり!

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中森明菜のシングル「十戒(1984)」がリリースされた日
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photo:Warner Music Japan  

それにしてもアイドルの歌詞に、“坊や、イライラするわ!” である。中森明菜の9枚目のシングル「十戒(1984)」には、まず他の楽曲では聞いたことがないインパクトのある言葉に頭を殴られたようなショックを受けた。「少女A」でじれったいを連呼し、「1/2の神話」で “いい加減にして!” とキレたかと思えば、「禁区」では “できない相談ね” と突っぱねた彼女は、ついに上から目線で物を申すようになったのだ。

作詞はいずれも売野雅勇。バラード系とツッパリ系の楽曲をほぼ交互にリリースし、それまで今でいうところの「ツンデレ路線」で売ってきた彼女の「ツン」の部分の世界観を担ってきた、中森明菜の序章を支えた功労者である。その売野氏が2016年に上梓したのが自身の作詞家人生を回顧する著書『砂の果実 - 80年代歌謡曲黄金時代疾走の日々』である。

実は著書ではこの曲について触れられているわけではなく、彼が世に出たきっかけといえる「少女A」の誕生秘話が書かれているのだが、この話が実に面白い。まだ駆け出しの作詞家と後にチェッカーズの多くの楽曲でコンビを組む芹沢廣明との初の共作がいかにして生まれたか。当時の芸能事情が反映されているので、80年代歌謡ファンなら必読の著作となっている。

「十戒(1984)」はその売野氏が彼女に最後に歌詞を提供した楽曲である。“バカにしないでよ~” で一世を風靡した山口百恵が引退し、百恵ロスに泣いたファンたちは、ツッパリ明菜のキャラを諸手を挙げて歓迎し、彼女のツンデレに翻弄されてきた。あまりに気持ちのいいキレっぷりに、スカッとさえしてしまう。それがこの曲「十戒(1984)」の魅力なのだ。

さらに作曲は高中正義! あの「Blue Lagoon」の名ギタリストである。彼が楽曲を提供した例は決して多くない。中森明菜はデビュー間もないころから大沢誉志幸や玉置浩二など作曲陣に意欲的なキャスティングがなされていたが、この後もラテンの大家、松岡直也の起用などさらに芸域を広げ、次々とプロデュースチームの期待に応えていった。その意味でこの曲は第一期中森明菜の集大成で、脱アイドル、ツンデレ路線との決別を意味するターニングポイントであったと思っている。

この曲が収録されているアルバムタイトルは『Possibility』(可能性)。その後も続く意欲的な取り組みを暗示していると思えるし、彼女こそまさに売野氏が評した「歌の中の役を演じる」ことができる、数少ない「歌のアクトレス」であった。私は彼女の代表曲の中からベストを選ぶとすれば迷わず、彼女の飛躍を飾ったこの曲を挙げたい。

ところで余談だが、この原稿を書いていて今更ながら気づいたことがある。“十戒” の文字を入力する時、どうしてもスムーズにいかない。何度書いても回数の“十回”や、フロアの“十階”しか出てこないのだ。そこで試しにあのチャールトン・ヘストン主演の名画を思い出し、入力方法を変えてみたら一発で解決した。そう「十戒」は、実は「じゅっかい」ではなく、「じっかい」だったのだ(笑)。


※2016年11月6日に掲載された記事をアップデート

2019.07.25
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  YouTube / 田中浩
 

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カタリベ
1965年生まれ
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