11月21日

追悼:ウォルター・ベッカー、スティーリー・ダンは今も僕の評価基準

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photo:FANART.TV  

2017年9月3日、ウォルター・ベッカーが亡くなった。だが、リマインダーをご覧になっている皆さんの多くは、彼の名前を聞いても全くピンと来ないか、あるいはスティーリー・ダンの「ドナルド・フェイゲンじゃない方」として記憶しているか、そのどちらかではないかと思う。

それもそのはず、フェイゲンとベッカーの2人は、1980年に発表した7枚目のアルバム『ガウチョ』を最後にコンビを解消、グループとしての活動を停止してしまった。彼らが2人での活動を再開したのは93年だから、80年代にはほぼ何もしていなかったことになる。

ちなみに、フェイゲンはソロとして82年に名盤『ナイトフライ』を発表したが、このアルバムにベッカーは関わっていない。その間に彼は、麻薬中毒から脱するためにハワイに移住していた。

そもそも、スティーリー・ダンほど80年代と合わなかったグループはない、と僕は思っている。彼らの “頑固” で “変態的” なまでの音楽の品質に対する完璧主義は、総合エンターテインメントと化したポップミュージックや、打ち込み(ドラムマシンやシーケンサー等に前もって演奏情報を入力しておき、それを再生すること)を多用したデジタルなサウンドとは、完全に真逆の世界観だったからだ。

でも、僕にとって彼らのサウンドは、80年以降も音楽の評価基準であり続けた。新しい楽曲やアルバムを聴く際、サウンドの洗練度を「スティーリー・ダンを100点としたら70点」みたいに勝手に点数を付けたり、よく知らないミュージシャンの名前を見た時には「スティーリー・ダンのアルバム制作に参加したことがあるなら超一流」と勝手に決めつけていた。

僕のこの感覚は、あながち間違いとは言えない。実際「スティーリー・ダン症候群(Steely Dan Syndrome)」という言葉があるように、彼らのフォロワーは大勢存在するが、彼らのライバルと言える地位に辿り着いたアーティストは1人も(1組も)いない。この唯一無二の世界のマネなどできるわけないのだ。

彼らの作品には、豪華ミュージシャンが結集、というイメージが強いが、それにまつわる伝説も数多く残されている。

例えば、最高傑作との呼び名も高い『彩(エイジャ)』に収録された「ペグ」のギターソロでは、ジェイ・グレイドンが弾いてOKが出るまで10人以上の演奏が没にされたらしい。しかも、没テイクの中にはラリー・カールトンやパット・メセニー(2人とも超一流のギタリスト)も含まれていたそうな。さすがにギャラは支払ったのだろうが・・・

ということで、今日はウォルター・ベッカー追悼を兼ねて、スティーリー・ダンの80年代唯一のトップ10ヒット「ヘイ・ナインティーン」を聴いてもらおうと思う。

ついでに、もう一つ。彼らは2001年にロックの殿堂(Rock and Roll Hall of Fame)入りしているが、その授賞式でのやり取りに彼ららしさが集約されているので、是非ご覧頂きたい。その時に演奏した「ブラック・フライデー」(アルバム『うそつきケイティ(Katy Lied)』に収録)と一緒に、どうぞ!


Steely Dan / Hey Nineteen
作詞・作曲:Donald Fagen
      Walter Becker
プロデュース:Gary Katz
発売:1980年11月21日


Steely Dan
アルバム
■Katy Lied
(75年5月31日 13位)
■Aja
(77年10月22日 3位)
■Gaucho
(81年1月17日 9位)

シングル
■Black Friday
(75年6月21日 37位)
■Peg
(78年3月11日 11位)
■Hey Nineteen
(81年2月14日 10位)

Donald Fagen
アルバム
■The Nightfly』
(82年11月27日 11位)

2017.09.22
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1967年生まれ
にしやん
スティーリー・ダンが音楽の評価基準っていうの凄くわかります。
スティーリー・ダン名義のアルバムがもう作られないと考えると寂しい限りです。
ドナルド・フェイゲンの来日が急病でキャンセルになって、こちらも心配です。。。
2017/09/22 14:46
1
返信
1965年生まれ
中川 肇
Fagenは亡くなったBeckerより年上ですし、彼のことも心配ですね。僕個人としては、94年の初来日の際に国立代々木競技場で観ることができたのが良い思い出です :)
2017/09/24 13:44
1
カタリベ
1965年生まれ
中川肇
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