2017年9月3日、ウォルター・ベッカーが亡くなった。だが、リマインダーをご覧になっている皆さんの多くは、彼の名前を聞いても全くピンと来ないか、あるいはスティーリー・ダンの「ドナルド・フェイゲンじゃない方」として記憶しているか、そのどちらかではないかと思う。 それもそのはず、フェイゲンとベッカーの2人は、1980年に発表した7枚目のアルバム『ガウチョ』を最後にコンビを解消、グループとしての活動を停止してしまった。彼らが2人での活動を再開したのは93年だから、80年代にはほぼ何もしていなかったことになる。 ちなみに、フェイゲンはソロとして82年に名盤『ナイトフライ』を発表したが、このアルバムにベッカーは関わっていない。その間に彼は、麻薬中毒から脱するためにハワイに移住していた。 そもそも、スティーリー・ダンほど80年代と合わなかったグループはない、と僕は思っている。彼らの “頑固” で “変態的” なまでの音楽の品質に対する完璧主義は、総合エンターテインメントと化したポップミュージックや、打ち込み(ドラムマシンやシーケンサー等に前もって演奏情報を入力しておき、それを再生すること)を多用したデジタルなサウンドとは、完全に真逆の世界観だったからだ。 でも、僕にとって彼らのサウンドは、80年以降も音楽の評価基準であり続けた。新しい楽曲やアルバムを聴く際、サウンドの洗練度を「スティーリー・ダンを100点としたら70点」みたいに勝手に点数を付けたり、よく知らないミュージシャンの名前を見た時には「スティーリー・ダンのアルバム制作に参加したことがあるなら超一流」と勝手に決めつけていた。 僕のこの感覚は、あながち間違いとは言えない。実際「スティーリー・ダン症候群(Steely Dan Syndrome)」という言葉があるように、彼らのフォロワーは大勢存在するが、彼らのライバルと言える地位に辿り着いたアーティストは1人も(1組も)いない。この唯一無二の世界のマネなどできるわけないのだ。 彼らの作品には、豪華ミュージシャンが結集、というイメージが強いが、それにまつわる伝説も数多く残されている。 例えば、最高傑作との呼び名も高い『彩(エイジャ)』に収録された「ペグ」のギターソロでは、ジェイ・グレイドンが弾いてOKが出るまで10人以上の演奏が没にされたらしい。しかも、没テイクの中にはラリー・カールトンやパット・メセニー(2人とも超一流のギタリスト)も含まれていたそうな。さすがにギャラは支払ったのだろうが・・・ ということで、今日はウォルター・ベッカー追悼を兼ねて、スティーリー・ダンの80年代唯一のトップ10ヒット「ヘイ・ナインティーン」を聴いてもらおうと思う。 ついでに、もう一つ。彼らは2001年にロックの殿堂(Rock and Roll Hall of Fame)入りしているが、その授賞式でのやり取りに彼ららしさが集約されているので、是非ご覧頂きたい。その時に演奏した「ブラック・フライデー」(アルバム『うそつきケイティ(Katy Lied)』に収録)と一緒に、どうぞ! Steely Dan / Hey Nineteen 作詞・作曲:Donald Fagen Walter Becker プロデュース:Gary Katz 発売:1980年11月21日 Steely Dan アルバム ■Katy Lied (75年5月31日 13位) ■Aja (77年10月22日 3位) ■Gaucho (81年1月17日 9位) シングル ■Black Friday (75年6月21日 37位) ■Peg (78年3月11日 11位) ■Hey Nineteen (81年2月14日 10位) Donald Fagen アルバム ■The Nightfly』 (82年11月27日 11位)
2017.09.22
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