11月21日

真島昌利初のソロアルバム「夏のぬけがら」は秋の始まりに聴くのがピッタリ

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真島昌利のファーストソロアルバム「夏のぬけがら」がリリースされた日
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真島昌利初のソロアルバム「夏のぬけがら」


夏の終わり、絶対に忘れられないアルバムがある。そして季節が秋に変わる頃、そのアルバムの大切さをまた噛みしめている。

それは真島昌利(以下、マーシー 現ザ・クロマニヨンズ、元THE BLUE HEARTS、THE HIGH-LOWS)、初のソロアルバム『夏のぬけがら』だ。

あまりにも夏に聴きすぎていたので、てっきり初夏くらいの発売だったのでは? と思っていたら、11月の発売だった。「ぬけがら」というには少し時間が経ちすぎているようにも思うけれど…。ザ・ブルーハーツの楽曲の中でも特に文学的な匂いのするマーシー作の楽曲。遂にソロアルバムが発売される! と十代の僕は興奮したものだ。

発売当時、僕は京都の河原町にあった「十字屋」で予約を済ませ、万全の体制でマーシーのソロアルバムを手に入れた。「夏が来て僕等~」とあのしゃがれた声が聴こえて来ただけで、心を締め付けられたのだけれど、どうもアルバムのトーンが少し暗い。「クレヨン」、「さよならビリー・ザ・キッド」、「小犬のプルー」(※童謡のカバー)などなど… うーん、確かに暗い。言い換えるならば “内省的”。

このアルバムを制作するにあたった経緯、当時のバンドの状況は分からないが、マーシーの心境はこういったトーンだったのだろうか。

1989年のブルーハーツはレコード会社の移籍もあったり、少しの活動休止もあったり、解散の話もあったという。そんなブルーな気持ちがこんなアルバムを作らせたのではないだろうか。リリース時、ファンの中には困惑した人も多かったのでは… と思う。

当時のブルーハーツの持つパブリックイメージ―― つまりストレートなロックンロール、パンクロックの要素は無いアルバムだ。だからこそとてもインパクトがあった。

マーシーの盟友が脇を固め、青春に落とし前をつけたアルバム


このアルバムで僕はフォークシンガー友部正人の声を初めて聴いたし、友部正人の名カバーである『地球の一番はげた場所』のトロピカルなアレンジはディープ&バイツ(忌野清志郎&2・3’S / 現ギターパンダの山川のりを氏在籍)のメンバーならでは… という感じだ。

その他「風のオートバイ」「オートバイ」「カローラに乗って」… と乗り物(何処かへ走り出すアイテム)の歌、「花小金井ブレイクダウン」「夕焼け多摩川」などのマーシーの地元である多摩地区の歌が収録されている。ノスタルジックなアルバムと評されることも多いこのアルバムだが、僕にはまるで “青春に落とし前をつけた”―― そんな風にも見えるのだ。

篠原太郎(THE BREAKERS / 現THE BRICK'S TONE、ピノキオズ)、山森 “Jeff” 正之(The sham rock / 現ザ・コレクターズ)、前出の山川のりを(ザ・コーツ)、そして東京MODシーンの面々… マーシーが正に青春を燃やした時代の盟友で脇を固めている。もちろん ”勝手知ったる” 関係というのも分かるのだが、敢えて当時の仲間で作りたかったのは、急速に膨張し正に爆発しそうなブルーハーツの社会現象に対してバランスを取ったのでは?… と想像してしまうのだ。

アルバムラストを飾る「ルーレット」の、

 ルーレットがまわるように
 毎日が過ぎていくんだ
 何にどれだけ賭けようか
 友達 今がその時だ

―― このフレーズやTHE BREAKERS時代の代表曲でもある「アンダルシアに憧れて」が収録されているのもそう思わせる一因でもある。

マーシーの少ししゃがれた声で歌い紡がれる数々のストーリー


『夏のぬけがら』というマーシーにとって “青春に落とし前をつけるアルバム”、まるでTHE BREAKERSで駆け抜け、燃やした “青春の熱情に区切りをつけるような少しブルーなトーンのアルバム” を聴いていた僕は、正にこれから青春(成長)のドアをあけようとしていた。

バイクや車(カローラ)に乗ってドライブすることをいつも妄想した。多摩川に寝っ転がってコーラを飲むことは出来なかったけれど、鴨川に寝っ転がって色んな夢を見ていた。そして月日が流れ、僕はすっかり年を取ってしまった。バイクや車で事故をして運転に向いてないことも学んだし、今は鴨川に寝転ぶよりクーラーがビンビンにきいた部屋でレコードでも聴いてベッドに寝転んでいたい。

それでも当時の僕はこのアルバムを聴いて、少しだけ大人になれたような気がしたんだ。収録曲「さよならビリー・ザ・キッド」で「21で結婚して27でもう疲れて」と歌われるように、27で結婚する友達との人生の岐路なんてのはきっとこんな感じなのかな?… と、畳の上に寝っ転がって思っていた。国立にも行ったことはないし、車の免許もなかったけれど。ただ何となく大人になりたくて、でもこのまま夏休みが続けばよいな… と思っているようなボンクラ少年だった。

マーシーの少ししゃがれた声で歌い紡がれる数々のストーリーは京都のボンクラ少年に少しだけ、背伸びした夏を届けてくれた。毎年、夏が来ると聴きたくなるのはきっと “あの頃” の自分を取り巻く空気みたいなものを吸い込みたいからだろう。深呼吸してこのアルバムを再生すれば真っ白で青い夏が少しだけ近づいてくる。

マーシーは青春に落とし前をつけられたのだろうか?


きっと青春なんて、落とし前をつけたくて、つけたくて… でも結局どうしようもないものだと思ったりもする。忘れた頃に出てくる懐かしい写真のようなものなのではないだろうか?

生ぬるいように思っていたのに、少しひんやりとした空気、夏の終わりの空気にとても似ているように思う。『夏のぬけがら』ってこんな空気なんだな… と、秋の始まりに僕はこのアルバムをそっとCDラックに返す。また「夏が来て僕等」と歌いたくなるまで。

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2022.09.29
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