11月21日

ヴォーカリスト YOU の実力を堪能!フェアチャイルドの3rdアルバム「UKULELE」

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多才な才能を発揮するYOUが在籍していたFAIRCHILD


ある時はバラエティタレントとして、またある時は毒舌コメンテーターとして、そしてある時には個性的な演技をする女優として、多才な才能を発揮しているYOU。そんな彼女がバンドのヴォーカルとして歌手活動をしていたことを、ひょっとすると若い世代は知らないかもしれない。そこで今回は、彼女がヴォーカルを務めていたFAIRCHILDの作品の中から1枚のアルバムを取り上げ、その音楽性について語ってみたいと思う。

FAIRCHILDは、本名の江原由希子名義で歌手や舞台活動を行っていたYOUに、テクノポップバンドSHI-SHONENの中心メンバーでプロデューサー、コンポーザーとしても活躍していた戸田誠司が声をかけ、さらにギターの川口浩和を加えて結成されたバンドである。

1988年のデビューから1992年までの4年余りの活動期間の間に、12枚のシングルと6枚のオリジナルアルバムを発表し、特に7枚目のシングル「探してるのにぃ」は、CMタイアップがついたこともあり、オリコン最高位17位とスマッシュヒットを記録している。



バラエティに富んだ曲構成、3枚目のアルバム「UKULELE」


そんなFAIRCHILDの作品の中から今回紹介するのは3枚目のアルバム『UKULELE』である。前2作のアルバムが、戸田誠司のテクノポップ路線の色が濃く出ていたのに比べると、このアルバムは、ロック、ポップス、ラテンと色んな要素を混ぜ合わせたバラエティに富んだ曲構成だ。

イントロのギターリフが印象的な「シャボン玉ブギ」や、エレクトロ・ラテン・ポップとでもいうべき「カンシャク玉の憂欝」のような疾走感のあるナンバーや、レゲエやチャチャチャのラテンのリズムが心地よい「ウクレレ天国」や「TAN TAN」、曲名の通りRPGのようなワクワク感溢れる「冒険Dungeon」といった軽快で賑やかな曲たちは、YOUの天然っぽい明るさを表現している。

一方、しっとりと歌い上げる「コスモスがいっぱい」「Jelly Eyesは甘くない」「オアシスの妖精」の3曲は、作詞が石川あゆ子と松本隆ということもあってか、良質のアイドルポップスに仕上がっている。それも例えるならシングルB面にカップリングされている “隠れた名曲” のような佳曲で、前述の天然っぽさとは違う美少女アイドルとしてのYOUの魅力を引き出しているように感じる。

シングルカットされた「小さな星」、YOUのヴォーカリストとしての実力


そしてシングルカットされて、よく深夜の “歌う天気予報” のようなTVスポットで流れていた「小さな星」と、失恋で自殺した女の子のことをクールに歌い上げる「鳥になんかなれない」では、透明感がありながら少し翳を感じさせるYOUのロックヴォーカリストとしての実力を垣間見せている。



このように様々なタイプの楽曲が揃っていると、統一感のない作品になってしまいそうだが、これらの曲たちを上手くひとつに繋いでいるのが、アルバムタイトルにもなっている「ウクレレ」だ。

曲と曲の間に挿入されている「Ukulele #1」から「Ukulele #6」までのせいぜい長くても1分ほどしかない、戸田誠司の弾くウクレレ1本で奏でられるゆる~い楽曲(#3ではNGテイクがそのまま使われている!)が、見事に曲間のブリッジとしての役割を果たし、多様なジャンルの曲たちを一つにまとめて、コンセプトアルバムとして成立させているのだ。

「UKULELE」はマルチに活躍するYOUの礎になっているのでは?


バンドはこのアルバムの後、よりキャッチーなPOP路線を突き進み、YOUの『ダウンタウンのごっつええ感じ』などバラエティ番組での露出増の影響もあり、前述のようにスマッシュヒットを生み出すことになったのだが、個人的には、YOUのヴォーカルは明るさがより強調されるようになり、曲についても完成度が増した分ゆるさが減ってしまったように思っている。

YOUはその後、黒歴史であるかのようにあまりFAIRCHILD時代のことを語らないし、冗談めかして「ギターの人がベースの人を殴って解散した」と言っているように、3人が三位一体で仲良く共同作業をするようなバンドでは無かったのかもしれないが、この『UKULELE』では、YOUのファニーな歌声、戸田誠司の溢れるPOPセンス、川口浩和のハードなギターフレーズが上手く融合されていると思うし、このアルバムのバラエティに富んだ楽曲を、ものの見事に歌いこなすYOUのセンスは、後にタレント・女優としてマルチに活躍する彼女の礎になっているのではないだろうか。

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2023.06.14
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カタリベ
1973年生まれ
タナカマサノリ
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カタリベ / 本田 隆