小森みちこ主演のにっかつロマンポルノ「アンネの子守唄」と「アンネの日記」の二本立てを映画館で見た時のこと。ロマンポルノを見て感動するなんて変なヤツだと思われそうだけど、「アンネの日記」で軽い感動を覚えながらうっすら浮かんだ涙で滲むエンドロールをぼーっと眺めているとスクリーンに一瞬「中村治雄」の名前が見えた。気のせい? 同姓同名?
「中村治雄」とはPANTAの本名。PANTA&HALやソロ作での作詞作曲クレジットはこの名前が表記されていた。どうしてPANTAがロマンポルノに関係してるのか? 後で分かったのだが、この映画の公開と同じ頃に発売された小森みちこのアルバム『リメンバー』に作詞作曲でPANTAが参加していて、映画にも挿入歌として流れていたためクレジットが入っていたのだという。男優じゃなかったのか。
PANTAには頭脳警察の経歴のせいで過激なイメージがつきまとうが、他のアーチストやアイドルに楽曲を提供することも多く、よく知られているのは石川セリの「ムーンライト・サーファー」。他にも荻野目洋子や岩崎良美、最近では制服向上委員会に楽曲を提供している。
荻野目洋子のアルバム『FAIR TENSION』では楽曲提供のみならずプロデュースも手がけている。コーラスで参加している曲もあり、自分のアルバムではできないことをやって楽しんでいるような感じだ。しかもこのアルバムにはPANTA自身のアルバム『反逆の軌跡』に収録されているタイトルナンバーをリメイクした曲が収録されている。
アルバム『反逆の軌跡』はラブソングとストレートなロックナンバーが続く。そのタイトル曲の「反逆の軌跡」はラブソングなのに僕には全くそう聴こえない。女も男も関係ない。僕にとってこの曲はPANTAからのメッセージとして聴こえていたのだ。
そのメッセージソングをメロディーはそのままで、歌詞の二人称を「おまえ」から「あなた」などに書き替えたのが荻野目洋子の「昨日より輝いて」。こちらもノリのいいロックナンバーに仕上がっているのだが、当時はどうして荻野目洋子にこの曲をリメイクしたのか不思議で仕方がなかった。アイドルにこの手厚い扱いは一体なんなんだ?
その数年後、頭脳警察通算8枚目(復活後の2枚目)のアルバム『歓喜の歌』に遠藤ミチロウや川村カオリらと並んで荻野目洋子がコーラスとして参加している。しかもこれまたタイトル曲で。PANTAは荻野目洋子にポップスよりロックを唄わせたいと思っていたのか! 頭脳警察に参加させるほど荻野目洋子のことを気に入っていたんだな、とこの時やっと気がついたのだった。
2017.02.12
昨日より輝いて / 荻野目洋子
YouTube / 1234hamari
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