世界中を熱狂させた最強のカップリングツアー、遂に日本上陸!
2020年夏に当初開催が発表された、モトリー・クルー、デフ・レパード、ポイズン、ジョーン・ジェット&ブラック・ハーツの4バンドが北米を駆け巡るスタジアムツアー。80’sへの郷愁を誘う豪華なラインナップをみて、羨望の眼差しを送った日本のHM/HRファンも少なくなかったはずだし、いっそ現地に赴こうと考えた方もいただろう。
ところが、コロナ蔓延と時期が重なり、2020年6月からスタート予定だった日程は、2021年夏へ延期。さらに2021年夏もコロナの影響は衰えず、再び1年延期がアナウンスされてしまう。
様々な情勢次第では幻のツアーになるのか? と危惧されたが、アメリカでは日本よりも随分早いタイミングでエンタメ業界が再始動。そうした中で当初の予定から遅れること丸2年、スタジアムツアーは2022年6月に無事キックオフされた。
スタジアム内の熱狂の模様は、オーディエンスが次々とアップしたYoutTube映像からも、手に取るように確認できた。当時、終わりの見えないコロナ禍の真っ只中で、大規模なライブを観れなくなった日本のファンには、まるで別世界のように見えた。
北米で36公演に渡るスタジアムツアーは、興行としても破格の成功を収め、発展的にモトリー・クルーとデフ・レパードのカップリングツアーとして、中南米、欧州と全世界への拡大が決まっていく。
そんな中で、モトリー・クルーのニッキー・シックスが、「アジア地域のツアーもやりたい」というコメントを発し、日本のファンにもひと筋の希望が灯る。そして、日本でもコロナ対応の変化により、ようやくライヴが再開された状況下で、ニッキーの言葉通り、夢のカップリングツアーが遂に上陸する運びになったのだ。
日本ではポイズンらを加えた北米でのパッケージこそ叶わなかったものの、コロナ禍を乗り越えて、80年代でも考えられない豪華なカップリング形式での来日が実現した事実を素直に喜びたい。
しかも両バンドにとって、重要なリリースから40周年の節目と重なり、今回の来日にはさらに大きな意味が込められることになった。
L.A. を漆黒に染めたバッドボーイズ渾身の一撃!「シャウト・アット・ザ・デヴィル」
まずモトリー・クルーは、今年10月27日に『シャウト・アット・ザ・デヴィル』の40周年エディションが、限定ボックスを始めとした複数の形態でリリースされる。
同作は、煌びやかなL.A. のメタルシーンを毒々しいモトリー色で塗り込めるように、黒一面にペンタグラムを潜ませたアートワークが強烈な印象を与えた。漆黒のジャケットといえば、AC/DC『バック・イン・ブラック』、メタリカ『ブラック・アルバム』を始め、時代を飾る名作が多く思い浮かぶが、LAメタルムーブメントの本格的な進軍を高らかに知らしめた同作もまた、同等の評価を受けるべき重要な作品だろう。
1981年に衝撃のデビューを果たし、一躍LAメタルムーブメントへの起爆剤となったモトリー・クルー。1983年当時の彼らといえば、伝説のUSフェスティバルで有名バンドに混ざり、大観衆の前で初々しいライヴパフォーマンスを披露。日本では彼らの出番はTV放映されなかったが、後年に映像を確認すると、まさにダイヤモンドの原石がメインストリームに躍り出て光を放つ瞬間を確認できる。
どの若手バンドもなし得なかった大きな経験を経ながら、デビュー当時の毒々しさと稀代のバッドボーイズぶりにも磨きをかけ、サウンド、ヴィジュアルと全てにおいてレベルアップしたバンドの姿を反映。ビッグネームへの足掛かりを決定づけたのが『シャウト・アット・ザ・デヴィル』だった。
MTVを通じてモトリーの存在をさらに知らしめたリードトラック「ルックス・ザット・キル」のMVが、今も脳裏から離れないファンも多いだろう。ケバケバしく近寄りがたい風貌に似合わぬ、エッジの効いたギターリフ主体ながらもキャッチーでわかりやすいサウンドは、洋楽メタルにしてはとっつきやすく、聴くのは勿論、演奏するのもうってつけで、僕自身も当時バンドでコピーした記憶が甦ってくる。
今回の来日に際して、40周年エディションはまさにベストタイミングでのリリースなだけに、アルバムを聴き直しながら、その歴史的意義も合わせて噛みしめたいところだ。
全米2位!HM/HRの域を超え、破格の成功を収めた出世作「炎のターゲット」
対するデフ・レパードの40年前といえば、1983年1月23日に発売された出世作『炎のターゲット』がシーンに送り出された年にあたる。
アニバーサリー企画こそ無いものの、全米におけるメタルブームを象徴するリリースからちょうど40年を迎え、こちらも意義深いタイミングの来日と言えるだろう。
デビュー作に収められた「ハロー・アメリカ」のタイトルが予感させたように、英国から全米マーケットへの足掛かりを早々につけたデフ・レパードは、次作『ハイ・アンド・ドライ』をTOP40に送り込むなど着実にその人気を獲得。遂に『炎のターゲット』で本格的なブレイクを果たした。
一方で日本におけるデフ・レパードの状況は、デビュー時こそNWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル)の四天王として期待を集めたが、人気面ではアイアン・メイデンに水を開けられ、当時の体感として次第に話題にさえ昇らなくなっていった。『炎のターゲット』にしても、洋楽誌のレビューは決して高評価ではなく、大躍進を始めた全米での状況とは雲泥の差だった。
日本ではNWOBHMの残党程度に思われていたかもしれないデフ・レパードが、いつの間にか全米で大ブレイクしている事実を思い知らされたのが、「フォトグラフ」のMVを通してだった。メジャー感に溢れた煌びやかな80’s風味に溢れたライヴ仕立ての映像を見て、デフ・レパードが別バンドのように成長している姿を、まざまざと見せつけられた。
MTVでヘビロテされた「フォトグラフ」のMVが、どれほど世界中で多くのファンの心を掴んだのか想像に難くないが、僕自身も当時影響を受けて、ユニオンジャックのTシャツをマネして買い、着用していたのを思い出す。
結果的にアルバムは1000万枚以上、全米チャート2位と驚異的なセールスを記録したが、もし、マイケル・ジャクソンの「スリラー」と時期が重ならなければ、全米1位を獲得した可能性も高いだろう。それだけの爆発力があったからこそ、40年が経過した今も『炎のターゲット』は圧倒的な輝きを放つ。人生で何度聴いたかわからないほどのアルバムだが、この来日のタイミングでこそ、『シャウト・アット・ザ・デヴィル』とともに改めて味わい直してみたい。
80’sを彩ったHM/HRの名曲群を、一夜で堪能できる至福の瞬間が迫る!
両バンドとも日本デビュー時からリアルタイムで愛聴し、幾度となくライヴも観てきたが、いつの時代も素晴らしいライヴ・パフォーマンスを披露してくれた印象が強い。それぞれアメリカとイギリス出身のバンドとしての違いはもちろん、片や永遠のバッドボーイズ、片やどちらかと言えば優等生的なイメージと、その個性も違えど、生粋ライヴバンドとしての実力は、本当に甲乙つけがたい。
バンドとして両者のポテンシャルが極めて高い次元で拮抗しているからこそ、ダブルヘッドライナーに相応しい相乗効果と、80’sのメタルムーブメントを総括する究極のエンタテイメントが展開されること請け合いだ。
どちらもギタリストがデビュー時のメンバーと異なるが、逆にいえば40年以上経過してもなお、ほぼ当時のラインナップのままに第一線で活動しているのは、ジャンルの特性を考えると凄いことだ。モトリーに関してはミック・マーズの姿がないのは寂しいが、新たにツアーに加わったジョン5のギタープレイを初体験できる楽しみが加わった。
いずれにせよ、ヴィンス・ニール、ジョー・エリオットというバンドの顔としてのフロントマンが健在なのは大きい。2人とも少々恰幅が良くなってきたのはご愛嬌だが、バンドのアイコンと言える個性的な歌声を、今回は一夜にして味わえるのは嬉しい限りだ。
ライヴの見所は尽きないが、何より真新しい横浜Kアリーナで、歴史的な名曲の数々を、両バンド立て続けに生で体感できる喜びに尽きるだろう。新旧いずれのファンにとっても、詰まるところ最大の見所はそこに集約されるはずだ。それを叶えられるのは、両バンドに共通した圧倒的な強みである、時代を切り拓いた有名曲を数多く持っているという事実に他ならない。
極上のハードロックを通じて、コロナ禍では味わえなかった日常が本格的に戻ってきた喜びを実感する。2023年を象徴するメモリアルなライヴになることは疑いないだろう。
Information
https://udo.jp/concert/MotleyCrue_DefLeppard
▶ LAメタルに関連するコラム一覧はこちら!
2023.10.31