小林克也サンと言えば、やはり原点は MC を務めた80年代の名物番組『ベストヒットUSA』だろう。毎週、全米ヒットチャートや最新のミュージックビデオを、流ちょうな英語とうんちくを交えつつナビゲートしてくれた。奇しくも、同番組はテレビ朝日の土曜深夜23時台の放送―― そう、『SmaSTATION!!』と同じ枠だった。これは単なる偶然だろうか。
思えば、80年代は今よりずっと洋楽が身近にあった。『ベストヒットUSA』に限らず、民放各局とも洋楽紹介番組を持っていた。ピーター・バラカンさんが MC を務める『Poppers MTV』(TBS系)に、大友康平サンや なぎら健壱サンなど日替わり MC で構成される『TOKIO ROCK TV』(テレビ東京系)、萩原健太サンが MC の『MTVジャパン』(TBS系)、ひたすらミュージックビデオを流し続ける『SONY MUSIC TV』(TVK系)―― etc.
僕の地元・福岡にも、日テレ系の FBS が放送する『Night Jack FUKUOKA』というローカル枠の人気の洋楽紹介番組があった。洋楽を知らないと、友人たちとの会話についていけなかった。女の子とのドライブで流すマイ・フェイバリットソングのカセットテープを編集できなかった。
それらの洋楽番組の原点は、言わずと知れたアメリカの『MTV』である。MTV とは Music Television の略。世界初の24時間ミュージックビデオを流し続けるケーブルチャンネルとして、1981年8月1日に華々しく開局した。だが、当初はミュージックビデオがまだ一般的ではなく、初日に集まったビデオクリップはわずか165本だったという。
そして1984年―― この年、記念すべき第1回 MTV Video Music Awards(以下、MTV アワード)が、NY のラジオシティ・ミュージックホールにて開催される。それは、MTV が主催するミュージックビデオの祭典。過去1年間に発表されたミュージックビデオの中から、優れた作品に各賞を贈るというもの。その第1回の授賞式が行われたのが、1984年9月14日だった。
少々前置きが長くなったが、今回のテーマは、この第1回 MTV アワードの授賞式で起きた、ある事件である。
まず、なんたって、ノミネートされた作品がすごかった。14分もの長尺で、名匠ジョン・ランディスが監督したマイケル・ジャクソンの「スリラー」を筆頭に、シンディ・ローパーを一躍有名にした「ハイ・スクールはダンステリア(現タイトル:ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン)」、ポリスの大ヒット曲「見つめていたい」、ヴァン・ヘイレンの名曲「ジャンプ」、ビリー・ジョエルの傑作「アップタウンガール」、ハービー・ハンコックの世界的名曲「ロックイット」(『踊る!さんま御殿!!』のテーマ紹介で流れるあの曲ですナ)、クイーンの大ヒット曲「レディオ・ガガ」(ちなみに、レディー・ガガの名前はこの曲へのオマージュ)、そしてデヴィッド・ボウイの「チャイナ・ガール」―― etc.