白いシャツ黒いジャケット長い手足、アメリカの天才ミュージシャンの体は自由自在に動き、踊る。黒のタイと帽子が彼の美男子ぶりを証明しているかのようにすばらしく素敵である。
ダンサーの中にいてもひと際目立つ。彼の重心は常に胸のなか。彼の身体の波はことばとなって光を放ち美しい繭になる。それは、未来の音、未来の思考、未来の愛が背中から靴の底から紡ぎ出される。
その美しさにはなぜかいつも暖かな死を纏っているのは何故だろう。
マイケルジャクソン。美男子と言う言葉は古いだろうか?
「音に生き御魂奏でた繭は言ふ」
デンジャラスを歌う彼。美男子にはデンジャラスが似合う。上衣を放り投げ十字をきった指先はガラスの割れる音を紡ぎ、愛の奥底はデンジャラスの方向へと炸裂。
すすり泣く様な声は激しくなるダンスへの導入部。聴衆の我らに訴えているのはYouTubeの1995年の映像。
唐突だが、ご存知紫式部によって書かれた平安時代の長編小説「源氏物語」のヒーロー、光源氏。これも凄い美男子の御方。許されぬ恋ゆえ苦悩し、結果多くの女性と恋に落ち関係をもった。危険だからこそ燃ゆる恋心。危険だからこそ分かる愛。
マイケルの生前の言葉に、愛されていると感じながらこの世に生を受け同じ様に感じながらこの世を去るならば、その間に起こる事は乗り越えて行けるものである。とある。
マイケルの愛は深かったと思う。彼の踊る一つ一つのムーブメントが物語る。そして、あの甘すっぱい声、女ならあの切ない彼の訴えに誰もが母性に不安を掻き立てられた。
彼は愛を感じてこの世を去ったのだろうか。それともあまりに愛が深すぎて自分を犠牲にしたのではないだろうか?
全身で十字架を背負っていた、美しいマイケルジャクソン。今神無月の空に私は想う。あなたの十字架は永遠のシンボルとして音楽として語り継がれる。
2016.10.17
YouTube / redpandatube
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