共有感満載の80年代洋楽ヒット!ビルボード最高位2位の妙味 vol.52 Rock In The U.S.A. / John Cougar Mellencamp 80年代において、本国アメリカとその他の国で大きな人気の隔たりがある典型的なアーティストといえば、ボブ・シーガー(&ザ・シルバー・ブレット・バンド)とジョン・クーガー・メレンキャンプが双璧だろう。 どちらも米・ルーツロックを基盤とした渋いサザンロックを体現している。そして、イナカのあんちゃん風情(ボブはひげ面のおっさん)といったところが共通項だろうが、ビジュアル時代に突入後のキラキラした百花繚乱の80年代において、アメリカ以外の国でこの手のアーティストの人気を高めようとしてもなかなか難しいのは無理もない。 もちろんアメリカ本国では(カントリーミュージックとは別次元で)この手のスターはいつの時代にも必ず存在しているわけで、とりわけ80年代におけるジョン・クーガー・メレンキャンプの人気は絶大であった。 彼の出世作にしてメガヒットとなったアルバム『アメリカン・フール』(82年)に勝るとも劣らないセールスを記録したアルバムが『スケアクロウ』(85年)。そこから輩出されたのが、80年代50番目に誕生したナンバー2ソング「ロック・イン・ザ・U.S.A.」(86年4月2位)だ。 副題に “A Salute To 60’s Rock”(60年代ロックに敬意を表す)とあるように、これはロックンロールの創成期・黎明期であった50年代後半から60年代に活躍したパイオニアたちに捧げた作品である―― “Oldies but Goodies” の精神の下、アメリカが生んだ偉大なるロックンロールをベースとした50~60年代のヒットソングへの再評価・再構築の気運は、70年代後半から常に散見されていた。そして、ジョン・クーガー・メレンキャンプに代表されるアメリカンアクトたちには、自分たちの国(アメリカ)が創り出した音楽へのリスペクトと誇りを感じることができた。また、それは伝統の継承といったものが滲み出るようなスタンスで臨んでいるように思えた。 そう、アメリカの良心とも言われるジョンが、ロックンロールへのそういう思いを真摯に表現したのが『スケアクロウ』であり、「ロック・イン・ザ・U.S.A.」だったのだ。 歌詞の中に出てくるレジェンドスターたち。フランキー・ライモン、ミッチ・ライダー、ヤング・ラスカルズ、ジャッキー・ウィルソン、ジェームス・ブラウン。あまりに絶妙な人選に納得できると同時に、名前を耳にするだけでも、楽しくなってくる。しかし、アメリカ以外の国には意図するものが伝わりにくいというのも、確かかも。 「ロック・イン・ザ・U.S.A.」のトップ到達を阻んだのは、ファルコの「ロック・ミー・アマデウス」(86年1位)。同じ “ロック” 使いの曲だったが、オーストリアのアーティストにしてやられたのには、ジョン・クーガー・メレンキャンプも忸怩たる思いだったのではないだろうか。
2018.05.31
VIDEO
YouTube / John Mellencamp
Information