その中でもタイアップ曲のビッグヒットによって音楽業界の頂点に登り詰めたのがCHAGE&ASKA(現:CHAGE and ASKA / 以下:チャゲアス)だった。91年「SAY YES」、93年「YAH YAH YAH」は、共にドラマの主題歌に起用され、社会現象とも言えるほどのメガヒットを記録。ダブルミリオン連発という前例のない快挙によって、彼らは音楽シーンを代表するアーティストとしての地位を確立した。チャゲアスの成功は、タイアップ戦略の威力を示す好例となった。
94年に入っても彼らの勢いは衰えることなく、むしろさらに加速していった。前年10月から続く全国25カ所70公演にわたる大規模ツアー『史上最大の作戦 THE LONGEST TOUR 1993-1994』を大成功のうちに締めくくると、直後の4月から5月にかけて今度は『ASIAN TOUR 1994』と銘打ち、香港、シンガポール、台北での全5公演を開催した。このアジアツアーは、チャゲアスが日本国内にとどまらず、アジア全域で人気を博していることを示す画期的な出来事となった。
デビュー15周年を記念したトリプルAサイドシングル
そして、全てのツアーを終えた後の8月、待望のニューシングルが発表された。デビュー15周年を記念したトリプルAサイドシングル「HEART / NATURAL / On Your Mark」が、実に9ヶ月ぶりのオリジナル楽曲として世に送り出されたのである。
また3曲目の「On Your Mark」は、幕張メッセで開催された大規模な科学博覧会『アメリカン・フェスティバル'94』のテーマソングとして制作されたが、この楽曲はその後思わぬ展開をみせる。翌95年、「On Your Mark」をモチーフにした短編アニメーション作品が公開されたのだ。制作はスタジオジブリ。驚くべきことに、アニメ界の巨匠・宮崎駿が自ら原作、脚本、監督を手がけた。この短編作品は、公開後に高い評価を得ることになり、一部の熱心なアニメファンの間では “宮崎駿の最高傑作” と評されるほどだ。