激動の大正時代、紅緒と少尉の大河ロマン「はいからさんが通る」
1970年代末から80年代、夢中になって読んだ少女マンガは数多いが、中でも忘れ難いのが『はいからさんが通る』だ。大正デモクラシー、シベリア出兵、社会主義運動、そして関東大震災。じゃじゃ馬ヒロイン紅緒とハンサムな許嫁の少尉が、激動の大正史に翻弄されながらもついに結ばれるまでを描いた大河ロマンだ。
ストーリー自体は壮大かつシリアスなのだが、ラブコメでもあり、全編にギャグが散りばめられている。“おひきずりさん” や “酒乱童子” といった、本筋には関係ない、危ないキャラクターもちょいちょい登場。シリアスとギャグを行ったり来たりしながら、テンポよく進んでいく少女マンガは、『週刊少女フレンド』連載中から大人気だった。
主題歌「はいからさんが通る」イントロはスティービー・ワンダー「迷信」?
1978年には、初のアニメ化。ノリのいい主題歌は、今もときどき口ずさみたくなる。
もう うわさはききましたか
そして その目でたしかめましたか
どっきりするほど きれいな瞳
びっくりするほど あふれるロマン
話題独占 人気独占
大正時代のチャーミング・レディ
ハイハイハイ はいからさんが通る
やさしい心を ふりまきながら
ハイハイハイ はいからさんが通る
やさしい心を ふりまきながら
フォーク歌手のような歌声と、ディスコ調なアレンジのコントラストも印象的だ。イントロがスティービー・ワンダーの「迷信(Superstition)」に、ちょっと似ていたように思う。
突如打ち切りの謎、理由はモスクワ五輪? それとも視聴率?
シリアスとギャグを行ったり来たりの世界観はそのまま、アニメ化に厳しい原作マンガのファンもまあまあ納得していたように記憶している。だが、番組は突如中途半端なところで終了する。
シベリア出兵後に記憶を失い、ロシア貴族となってしまった少尉を思い、海岸を歩く紅緒。そこに記憶が戻った風の少尉が現れ、紅緒と少尉は手に手を取って、二人で飛行船に乗ってどこかへ飛んでいってしまう。原作では、この後に関東大震災が起こり、まだまだ一波乱も二波乱もあるのだが、アニメはここでジ・エンドだ。
のちに原作者の大和和紀氏は、週刊文春のインタビューでこう語っている。
モスクワ五輪の生中継がアニメの時間枠に決まっちゃって。当時、私は製作にタッチしてないのに、「あと3回分しか続けられません、どうしましょう」と相談されましてね
―― なるほど、そんな理由が、と約40年後に知った真実に納得していたのだが……。
アニメ『はいからさんが通る』の最終回は1979年3月31日、モスクワ五輪の開催初日は翌80年7月19日。ならば、79年4月以降も継続して放送できたのでは? やはり、視聴率がよくなかったのだろうか。
ちなみに、大和和紀の画業50周年の一環として制作された、2017、18年公開の劇場アニメ版では、紅緒と少尉は結ばれて、きちんと完結しているらしい。
※2020年5月7日に掲載された記事をアップデート
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2021.09.25