9月14日

菊池桃子がロックバンド? ラ・ムーの名盤「Thanks Giving」を聴いて!

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ラ・ムーのファーストアルバム「Thanks Giving」がリリースされた日
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ラ・ムーが残した唯一のアルバム「Thanks Giving」


今から30余年前 ― 1988年9月14日、ラ・ムーのファースト(にしてラストでもある)アルバム『Thanks Giving』が発売されました。

ラ・ムーは菊池桃子をボーカルに迎えたバンドが誕生した、というよりも、菊池桃子のさらなる音楽的活路を見出すためにバンド形式をとったと考える方が適切でしょう。その背景には、1986年から1987年にかけての女性ボーカル市場がレベッカや渡辺美里、岡村孝子、杏里などよりバンドまたはシンガーソングライター色の強い方向に拡大していったことも大いに影響しています。

そのバンドというイメージを定着させるためなのか、ラ・ムーは、1988年2月24日にファーストシングル「愛は心の仕事です」、同年6月にセカンドシングル「少年は天使を殺す」、7月にサードシングル「TOKYO野蛮人」と、菊池のアイドル期以上にハイペースでリリースしていきます。話題の大きかったファーストシングルこそ、前年のソロ名義前作「ガラスの草原」(累計9.8万枚)から10.1万枚(いずれもオリコン調べ、以下同じ)と微増したものの、セカンドシングルは5.4万枚、ロック系のイベントに出演していた時期のサードシングルも4.6万枚とセールスは下降線をたどっていきます。

アルバムジャケットにみる、菊池桃子のイメージ戦略


当時は、ラ・ムー名義ゆえアイドル・菊池桃子が好きだった人が離れ、“ご新規さん”を狙ったバンドファンも「菊池桃子がロックバンド?」と否定的な見方をする人が多かったことは、筆者も周囲の反応から体感していました。

彼女のアルバムジャケットは、同レーベルだった杉山清貴&オメガトライブなどアイドル以外のファンも手に取りやすいように、あえて顔写真を目立たないようにし、青から黒系統の背景にデザインされました。こうすることで、菊池桃子のデビュー作『オーシャンサイド』はいきなり30万枚超のヒットになった… と、イメージ戦略の成功例として語られることが多いのですが、このラ・ムーでは、皮肉にもそのイメージ戦略を突き進めたことが、先入観を強めてしまったように思います。

そうした逆境の中でリリースされたファーストアルバム『Thanks Giving』もオリコン初登場5位とソロ時代キープしていたTOP3入りから外れ、6週目にはTOP100圏外になってしまうほど急落してしまいました。

ブラックミュージックのエッセンス、お洒落なシティポップ感満載!


しかし、実際は、ダンサブルなブラック・ミュージックの要素を取り入れつつも、ソロ名義の作品同様に、お洒落なシティポップ感で統一し、また菊池のボーカルもソロ時代と歌い方を変えておらず独特な透明感を維持。つまり、魅力的な部分を残しつつ、流行の最先端を取り入れているのです。

歌詞の方も、ソロ時代の康珍化や売野雅勇を継続しつつ、田口俊や麻生圭子、さらには菊池本人の自作も取り入れることで、20代前半の学生から社会人の女性像がよりリアルに描かれています。

メロディーの方も、メイン作曲家を林哲司から和泉常寛にシフトするという、杉山清貴からカルロス・トシキにボーカルが変わった際のオメガトライブの戦略と同様で、こちらも聴きやすさを継続。サウンド、歌詞、メロディー、すべて丁寧にアップデートされていることが分かります。

伝説のコーラスグループ、EVEも参加!


もしかして、最も反感を買ったのが2人の黒人女性コーラスの起用だったのかもしれません。実際、TV出演時もクールな菊池のメインボーカルよりもファンキーなバックコーラスの方が目立っていましたし、「どっちがメインかわからない」といった揶揄される感想がラジオや音楽雑誌で語られることも多々ありました。

しかし、本アルバム内の多くの曲では、洋楽テイストでありながら邦楽に馴染みのよい “3人” の女性ボーカルが聴こえてくるではありませんか! そう、伝説のコーラスグループEVEが起用され、シングル曲の「少年は天使を殺す」や「TOKYO野蛮人」のみならず、「Rainy Night Lady」や「One and Only」などのアルバムオリジナル曲もキャッチーなサビ部分が大きく映えています。これにより当時の女性アイドルのシングル曲を集めたような華やかさも加わっています。

そんな良いことづくめの本作ですから、昨今のシティポップ・ブームで再評価を受けても何ら不思議でもありません。もともと、先入観で聴かれなかっただけなのですから。

さらに良いなと思ったのは、本作を聴いた方々が「お笑いネタだと思って聴いてみたら、あまりに心地よくてハマった」「当時はバカにしていたけど、ちゃんと聴いたら全然バカにできない」と、素直に感想をつづっているのが多く見られることです。今後、シティポップ・ブームが去っても、こうした評価が続くことを祈るばかりです。

現在、芸能活動のみならず教育活動にも精力的な菊池桃子は、仕事の合間に一人カラオケを利用することもあるとのこと。たまには、当時の超本格的なサウンドのオケを使って、どこかでラ・ムーの楽曲も披露してほしいなと願っています。


Song Data
■ Thanks Giving / ラ・ムー
■ リリース日:1988年9月14日
■ オリコン最高位:5位
■ 推定売上枚数:3.2万枚
■ 100位内登場週数:5週


2020.09.13
240
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おすすめのボイス≫
1968年生まれ
臼井 孝
残念ながらラ・ムーは2020年9月現在未配信なので入れていませんが、EVEがコーラスで参加した女性ボーカルのおもな名曲をSpotifyでまとめましたので、よろしければどうぞ♪ 
https://open.spotify.com/playlist/7MLfohYlssswmBrSfLfIFf
2020/09/20 07:58
56
返信
カタリベ
1968年生まれ
臼井孝
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