出ました! リマインダーでも原稿を書いてもらっている、
スージー鈴木の新刊が KADOKAWA より発売されました。マキタスポーツとの共著といいますか、BSトゥエルビで放送されているお二人の番組『ザ・カセットテープ・ミュージック』がテキストになったのです!
その名も『カセットテープ少年時代 80年代歌謡曲解放区』。今回、その発刊イベントにお邪魔して、スージーさんとマキタさんにちょっとお話を伺ってきました。
—— これ、ややもすると、いい年したおっさん二人が昔話に花を咲かせているだけの本(番組)だと思う方もいるかもしれません。でも、それは違うんです。
ご存じかもしれませんが、彼らが音楽を語るときのキーワードは「解剖と構造」。ミュージシャンの人間性や背景にあるストーリーなどはいったん横に置いて、「曲そのもの」と向き合っているのです。
今のようなSNS時代に出るべくして出た二人と言いますか、そもそも音楽業界にいた人たちではないんですよね。ポピュラーミュージックの歴史が証明するように、やはり面白いモノは真ン中ではなく辺境から生まれてくるんだなあ。
あ、そうそう。
この本、田中康夫の『なんとなく、クリスタル』を彷彿とさせる多くの脚注が付いています。本文を読み終わった後、この部分だけを読んでみるのも一興ですよ。80年代の音楽を中心としたエンタメワードがずらりと並んだ脚注、その固有名詞からアナタがリマインドする思いは決して軽くないはずです。
スージーさんはこんなことも言ってました。
「やはり、同世代だけでなく若い方にも読んでもらえればという思いはありますね。僕らが子供の頃にあった音楽のガイドブック、ガイダンスのような本が今はなさ過ぎます。昭和歌謡と一括りになって、昔の音楽は全て素晴らしいと言わんばかり乱暴に突き出されている… そこは選別してあげたいかな。この脚注がひとつの取っかかりになれば嬉しいです」
うん、わかりますわかります。
がしかし。特筆すべきはやはりその本文でしょう。昔だってこんな本はあまりありませんでしたよ。だって、丁寧に(時に乱暴に)解剖を重ね、音楽の構造を解きほぐしながら、その結果としてミュージシャンの独創性を証明する手法を取ってるんですから。
分かりやすくいうと、構造が同じであれば、その全てが名曲であってもおかしくないわけですよ(その逆もしかり)。でもそうならないのはなぜか。違って聞こえるのはなぜか。ミュージシャンはどんなスパイスを振りかけたのか。隠し味は何か。そこに作り手のセンスとオリジナリティがあると言うわけです。この語り口はもはやお二人の「芸」と言っても差し支えないでしょう。
「同じ <C → Am → F → G> というコード進行でも、音楽的なものとそうでないものがあるんです」
スージーさんがそう言えば、マキタさんはこう返します。
「楽器を弾き始めると、この曲とこの曲のコード進行はなんで同じなんだろう… みたいなことが分かってくるわけですよ。芸ごとって、大いなる伝統の上に乗っかってどういうアレンジメントを施していくのかってことが重要だと思うんです。変なオリジナリティ幻想にとらわれるのでなく、ベーシックなものをどういうふうに解釈してどう表現するのかのほうが、より芸的な感じがするんですよね。そこに知性を感じるんです」
そして、二人は口を揃えます。
「メジャーセブンスだのナインスだの、それってユニバーサル・ランゲージなんです。今も昔も変わらない共通言語を使って音楽の構造を解き明かしていけば、あの時代の音楽がなぜキラキラしていたのか伝わると思うんですよね。若者にすり寄っていこうという気持ちはありませんが、構造の話って普遍的なものなので興味を持ってもらえると思います」
過度なノスタルジーに浸るわけでも無く、無理して若い人に合わせるわけでも無い。なにより音楽業界に依存していない。そんな独特なスタンスを保つ二人。話を聞いて改めて感じましたが、その精神のベースにあるものは間違いなく「DIY = PUNK」でした。このことについてはまたどこかで改めて。
まずは『カセットテープ少年時代 80年代歌謡曲解放区』、ご一読をオススメします。Book Data■ カセットテープ少年時代 80年代歌謡曲解放区
■ Content
◆ トーク再録
♪ A面に入れたいサザンの名曲
♪ 松田聖子の80年代名曲特集
♪ カセットテープ紅白歌合戦
♪ 深淵なる井上陽水の名曲
♪ 輝く!日本カセットテープ大賞
♪ 新春・佐野元春スペシャル
♪ 語られていないチェッカーズを語る
♪ 春の名曲フェア~スージーの春
♪ 春の名曲フェア~マキタの春
♪ 画期的!ユーミンのコード&メロディ―
◆ 特別企画・80年代名曲鼎談
清水ミチコ×マキタスポーツ×スージー鈴木
◆ マキタ&スージー音楽体験史年表
2018.06.28