9月28日

80年代のロックシーンを塗り替えたガンズ・アンド・ローゼズの反骨精神

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ガンズ・アンド・ローゼズのシングル「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」が米国でリリースされた日
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デビュー作にしてロック界の頂点へ!80年代が生み出した真のレジェンド


ロックの生誕以来、数多く登場したレジェンダリーなバンド達の中で、デビュー作にして最高傑作を生み出したバンドとなると一気に絞られてくる。そうした代表格として真っ先に思い浮かぶのが『アペタイト・フォー・ディストラクション』を送り出したガンズ・アンド・ローゼズだ。このデビュー作を持って、全米1位をいきなり獲得するなどチャートを席巻し、全世界で累計約3000万枚以上というメガヒットを記録している。

ガンズの場合、個人的に最も影響を受けた80年代のロックシーンに登場したハードロックバンドであるのが何より大きい。大ブレイク前夜、日本盤が出た当初から聴いていたガンズが、みるみるとスターダムにのし上がっていく様子は、今でも記憶に刻まれている。それはロックのレジェンドが生まれていく過程を、リアルタイムで初めて目の当たりにした貴重な経験だったからだ。

ロック史上に燦然と輝くデビューアルバム『アペタイト・フォー・ディストラクション』は、本国で1987年7月21日に発売された。同年8月29日、全米チャートに初登場した際は、かろうじて200位圏内の182位だった。今では考えられないが、発売数ヶ月で売れたのはたったの20万枚のみ。当初は失敗作とも言える状況だった事実は、改めて振り返っても興味深い。

結局、発売から約1年という長い時間をかけて、1988年8月6日、遂に全米1位を獲得した。ガンズ・アンド・ローゼズという存在が、いかに彼らが奏でた類稀なるロックンロールのチカラによって、評判が評判を呼ぶ形でじわじわと浸透し、音楽シーンを席巻していったのかがわかる。

そのきっかけを作ったのが、アルバムのオープニングを飾る名曲「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」だった。



永遠に色褪せない、人間の本能を揺さぶるガンズ流ジャングルビート!


35年前の今日9月28日、アルバムの発売から約2ヶ月後に、本国アメリカでシングル「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」がリリースされた。

曲作りは、ゲフィンレコードと契約する以前からスラッシュがしたためていたギターリフを起点にジャムセッションを重ね、わずか数時間で骨格が出来上がったというのだから驚きだ。そこにはメンバー全員が起こした魔法のごときケミストリーと、初期衝動から生まれた攻撃性が “これでもか!” と詰まっている。

ディレイを駆使した冒頭の印象的なギターフレーズを皮切りに、ラフな雰囲気で次第に音が重なっていく様は、確かにジャムの風景そのものだ。スネアのアタックを合図に、勢いよく走り出すリズムを最初に体感した時の衝撃は忘れられない。人間の奥底にある野生の本能に直接訴えかける、リズミカルで速いビートの威力たるや、ロック好きなら誰もが身体を揺らさずにはいられないだろう。

それ自体はいわゆるジャングルビートではないけど、"ガンズ流ジャングルビート" とでも形容したくなる躍動感に満ち溢れている。中間部のクールダウンするパートでは、本当のジャングルビートまで飛び出し、タイトルに相応しい危険地帯に迷い込んだような音像を作り上げていく。

イントロからエンディングに至るまで、ハイトーンの金切りシャウトを散りばめたアクセルの特徴的な歌唱と、本能の赴くままに激音を奏でた楽器陣による、一寸の無駄もない究極のハードロックンロール。まさに時代を塗り替えた名演といえるだろう。

アクセルが歌う歌詞は、自身が移住したLA、ハリウッドの街、実生活を題材に書かれたものだが、そのタイトルは、ニューヨークでアクセルがホームレスから実際に投げつけられた「おまえはどこにいるか分かるか? ジャングルにいるんだよ、死んじまえ!」という言葉にインスパイアされている。聴き手にとっては、ガンズという危険な ”ロックンロールジャングル” に迷い込んだ錯覚に陥るパワーワードだ。

悪条件のプロモーションでも与えたインパクトは想像以上!「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」


のちにガンズ現象の象徴となった「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」だが、これだけの楽曲、アルバムを作り上げたにも関わらず、バンドの素行やジャケットデザインの問題などを起因とする危険な存在として、ガンズはメディアからも腫れ物のように扱われていた。ゲフィンはブレイクのための必須手段であるラジオ、そしてMTVでのプロモーションに手をこまねいてしまう。

そうした逆境の中で制作したのが「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」のMVだった。絶大な影響力のあるMTVで、このMVさえ回ればガンズの凄さが全て伝わる。そう考えたゲフィンの担当者は自社の上層部に対し、MTVに何とかオンエアを働きかけるように説得を続けた。

その結果ほんの数回程度、しかも視聴者の少ない早朝の時間帯だったものの、遂にオンエアに漕ぎ着けたのだ。躍動する強烈なガンズのライヴシーンもフィーチャーした、80sのロック史に残るお馴染みの名作MVは、想像以上のインパクトを与えていく。

悪条件のプロモーションにも関わらず、放映後のMTVには、前列がないほど視聴者から反響の電話が殺到。その多くはもう一度ガンズのMVが観たいという熱烈なる渇望だった。

それに応える形で再度オンエアされると、さらに反響が雪崩のごとく増えていき、MTVのローテーションに組み込まれていく。それを説得材料にラジオプロモーションの壁も次第に切り崩され、オンエアを聴いたリスナーからの反響がまた増えていくという、好循環がようやく生まれていった。

ガンズが大ブレイクに至るには、ラジオでのパワープレイ、過酷なライヴツアーの敢行など様々な要因があるにせよ、ひとつの大きな発火点となったのは、早朝のMTVで初めて放映された「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」のMVだったのだ。

人々を長く魅了する、ガンズ・アンド・ローゼズの “危険な香り”


あれから35年経った今もなお、モンスターバンドとして君臨するガンズ・アンド・ローゼズ。その衰えない人気が今も継続しているのは、80年代に彼らが示したアティテュードによるところが大きい。

ガンズがデビューした80年代半ばのロックシーンは、きらびやかなHM/HRバンド達がメインストリームに躍り出る、まさに浮わついた時代の真っ只中だった。MTVの全盛期を象徴するようにルックス重視のバンドが闊歩し、ヒットチャートを狙うべく洗練された商業主義の作品が次々と作られ、ジャンルが本来内包する過激さや反骨精神、不良性などはスポイルされていった。

同時期の目立ったリリースを見ても、例えばガンズが影響を受けたエアロスミスまでもが、あからさまに売れ線を狙った「パーマネント・ヴァケーション」で再ブレイクしていたし、デフ・レパードは「ヒステリア」で、ポップな楽曲と究極に加工を施した音像による未来指向のハードロックを提示していた。

ガンズはそうしたシーンの流れへのアンチテーゼのごとく登場し、原始的な生々しさと躍動感を極限まで追求したサウンドと、パンクロック的な反逆性を持って、ロックンロール本来の魅力を再提示したのだ。結果としてガンズは、甘ったるいバンド達に辟易し始めたHM/HRファンのみならず、広義のロックファンにも救世主として迎えられることになった。

来日公演決定! 見せてくれ!アクセルとスラッシュ鉄壁のコンビネーション


ここ日本におけるガンズは、本国の約2ヶ月後にデビューし、暫くは無風状態だったものの、海外での快進撃が徐々に伝わっていくと、ベストヒットUSAでMVが次々と放映されるなど、メディアも一斉に取り上げ始め、その人気ぶりは急激な高まりを見せた。当初の88年7月から12月へと延びた初来日時に、追加公演の会場が本公演よりも規模の大きい日本武道館だったのは、それを象徴しているようだった。

初来日ツアーにおいては、ライヴ中にブチギレたアクセルが、途中でステージを投げ出して中止になるトラブルが勃発したが、結果的に日本のロックファンの注目を一身に集める格好のエピソードとなった。2度目の来日時も、ライヴの予定調和をぶち壊すように、メンバー(というかアクセル)の気分次第で、いつ会場入りするかすらわからないという不穏な情報が事前に拡散し、僕が行った公演でも実際に2時間以上待たされたのは、強く記憶に残るところだ。

他にも来日時のホテルの部屋でアクセルがテレビを破壊しただの、破天荒なエピソードが次々と報じられた。良くも悪くも昔気質のロックンローラー全開のアクセルに対して、我々日本のロックファンは強烈なインパクトを受け、そこで抱いた危険なイメージをむしろ魅力として持ち続けているように思える。

デビュー作にしてガンズは、自らが奏でるハードロックンロールの要素全てを盛り込んだ、決定的なアルバムを作り上げた。その後の音源のリリースは長いバンド史を考えると、周知の通り驚くほどに寡作だ。デビュー作でバンドの評価を決定づけ、以降は作品への渇望感を与え続けたことも、モンスターバンドとしての孤高の地位とアクセルのカリスマ性を持続させた要因になったはずだ。

そんなガンズは、2017年以来となる、さいたまスーパーアリーナでの来日公演が11月に決定している。完全に安定したアクセルとスラッシュ鉄壁のコンビネーション、さらにオリジナルメンバーのダフ・マッケイガンを加えたパフォーマンスが再び実現するのは嬉しいことだ。かつてのように開演が押すなんてことはさすがにないだろうが(笑)、35年前に放った「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」で、今回もライヴ会場を”巨大なロックンロールジャングル”へと塗り込めるに違いない。



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2022.09.28
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カタリベ
1968年生まれ
中塚一晶
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