9月18日

俺たちもカッコよくなりたい!それまでのヒーローとは違った工藤俊作

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photo:toei-video  

「俺たちもカッコよくなりたい!」

その一心であった。

さて、このコラムの前提を少し説明させて欲しい。私の在籍していた高校は、全寮制の男子校で、日曜日の午後以外は学校の敷地から出ることは禁止されていた。また校則が厳しく、娯楽室にあるテレビも観られる時間が決まっていた――

それは1984年、高校2年の夏のことであった。

「モヤシみたいな色白の奴より、男はやっぱり日焼けしてないとな」

みんなの思いは同じ方向に向いていた。

「そうだな、問題はどうやって1日で日焼けをするかだ」

この会話が交わされたのは金曜の深夜。楽しみにしている日曜の外出に向けて残された時間は、明日土曜日1日だけであった。

そこで誰かが言った。

「マーガリン塗れば早く焼けね?」

全員の脳内にコンガリときつね色に焼けたトーストが思い浮んだ。

翌日、全身にマーガリンを塗りたくった我々は、学校の屋上で照りつける真夏の日差しを一日中浴びた。その結果全員が「カチカチ山のタヌキ」状態となり、日曜日の外出どころか結構な火傷を負ってしまい保健室でヒ~ヒ~泣く羽目になってしまった。今時の高校生は知らないが、我々の高校時代はおバカな学生と普通の学生に二分されていた。残念ながら我々はおバカチームの方だった。

そんな我々が好きだったのが日テレの『探偵物語』。このドラマが放映されたのは1979年9月から1980年4月までだが、その後何度も再放送された。ちょうど私が高校2年生の時にも深夜帯に再放送されており、教員の目を盗んでは娯楽室に忍び込んで観ていたものだ。

探偵事務所に下着姿で出入りするナンシーとかほり。成田三樹夫演じる悪徳刑事の服部が、トンカチで肩を叩きつつ「工藤ちゃ~ん」と入ってくる。

我々はその物語の主人公 “工藤俊作” に憧れていた。工藤はそれまでの正義のヒーローとは少々趣が異なり、ハードボイルドな見かけとは裏腹に「そういう馬鹿な事はやっちゃだめでしょ」という間の抜けた行為をする。そのギャップがまた我々には格好よく映った。

ほどよく日焼けした主人公は赤シャツに黒のスーツ、同じく黒のソフト帽を被っている。タバコに火をつけるときのライターの火力は最大、ウイットに富んだギャグ、いつかは俺たちもベスパに乗ってみたいと夢見ていた。

『探偵物語』のオープニングは SHOGUN が歌う「Bad City」(79年)だ。この曲が流れ始めると胸がワクワクし、我々は画面に釘付けになった。番組が終わり、エンディングテーマである「Lonely Man」が流れる頃にはテレビの前にいる全員が “工藤俊作” になりきっていた。

「問題はどうやって1日で日焼けをするかだ」

“工藤俊作” が言った。

「マーガリン塗れば早く焼けね?」

2018.08.03
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カタリベ
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