2023年 6月28日

過去じゃなくて未来!佐野元春の名盤ライブ「SWEET16」一夜限りのプレミアム上映

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佐野元春「名盤ライブ SWEET16」プレミアム上映会開催日
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「SWEET16」Blu-rayリリースを記念したプレミアム上映会


去る2022年11月、アルバム『SWEET16』の収録曲を全曲再現したスペシャルライブが東京、大阪で開催。

この日の模様を5.1chサラウンドシステムにした一夜限りのプレミアム上映会が、全国15ヶ所、18館の映画館で6月28日に行われた。

立川シネマシティの上映では、この再現ライブのバッキングを務めた “SWEET16 GRAND ROCKESTRA” から、古田たかし(The Heartland)、Dr.kyOn(The Hobo King Band)、藤田顕 (The Coyote Band)が集結。音楽評論家の能地祐子さんの司会でのトークショーが上映前に繰り広げられた。

過去の再現ではなく未来に向かっているライブ


トークショーの中で、Dr.kyOnは、興味深い発言をしていた。

「今まで僕たちがやってきた曲をアレンジ、曲順通りに演るのはとても新鮮、過去の再現ではなく、未来に向かっていると感じた」

―― と。

『SWEET16』は1992年にリリースされた。このアルバムのレコーディングが開始された91年には、多国籍軍のイラク空爆開始により湾岸戦争が勃発、南アフリカではアパルトヘイトが法的に撤廃され、ソビエト連邦が崩壊。冷戦に終止符が打たれる。

日本においてはバブル経済が崩壊する。揺れ動く情勢の中で、元春は、自身の90年代の幕開けに相応しいアルバム作りに着手したことになる。このアルバムがそんな世界情勢と無関係とは思えない。混沌とした時代に『SWEET16』は、未来を見渡すような沈着冷静さと向こう見ずなティーンエイジャーの疾走感を併せ持つ奇跡のアルバムとして大きな反響を呼んだ。

そして30年という月日を経た2022年、コロナ禍のパンデミックを経て、元春は再現ライブのステージに立ったことになる。



スクリーンからも存分に伝わってくるアルバムの普遍性


このアルバムのリリース時に元春が見据えた未来は今もなお続いているかのように、旅立ちの狼煙とも言える1曲目、「ミスター・アウトサイド」の演奏が始まる。そして、バディ・ホリーの影響が大きくみられ、ティーンエイジャーの激情を内包したかのような弾けるリズムが象徴的なアルバム表題曲「スウィート16」へ。

リリックの本質を尖らせるように安定感のある “SWEET16 GRAND ROCKESTRA” の演奏と、内に秘めた熱情を溶かしていくような元春の歌は、30年前の楽曲に新たな息吹をもたらす。

このようにアルバムの普遍性はスクリーンからも存分に伝わってくる。

ダンサブルなファンクチューンの「ポップチルドレン(最新マシンを手にした陽気な子供たち)」やフォークロックをフォーマットとした「誰かが君のドアを叩いている」など、変幻自在のサウンドに観客は肩を揺らす。そんな多様性もこのアルバムの魅力のひとつなのだが、楽曲の特徴がより際立つ演奏はスクリーン越しにもリアリティを持って伝わってきた。

後半の山場とも言える「エイジアン・フラワーズ」の演奏が終わり、メンバー紹介に入ると、さながらライブ会場にいるような錯覚に陥る。それだけこの映像にはダイレクトなライブ感が潜んでいるのだ。



今なお未来へと羽ばたこうとしている「SWEET16」


そして、この再現ライブ当日に選ばれたアンコールは「約束の橋」とThe Hobo King Band時代の「ヤング・フォーエバー」だった。どちらもしっかりと未来を見据えたリリックが印象的であり、現在の元春の心情を投影しているかのようにも感じた。この2曲もまたアルバム『SWEET16』と同じように時代の流れに左右されない力強さを感じさせてくれる。

大画面、大音量で堪能した『SWEET16』は30年という時を経て、今なお未来へと羽ばたこうとしている。収録された楽曲たちは、それぞれがひとつの生命体となり、多くのファンの心の中に生き続ける。そんなことを考えさせられる上映会だった。

最後にとっておきの情報をひとつ。

今回、名盤ライブ『SWEET16』プレミアム上映会が行われた立川シネマシティでは、来る8月14日より「シネマシティ ライヴ・フィルム・フェスティヴァル2023」が開催される。その初日に佐野元春 ライヴ・ドキュメンタリー・フィルム『Film No Damage』の公開が決定。

アルバム『SOMEDAY』を経ての「ロックンロール・ナイト・ツアー」、ニューヨークへ旅立つ直前、当時27歳の佐野元春の心情が見事に浮き彫りにされているドキュメンタリーだ。40年前のリアルが今の時代にどのように映し出されるか、この機会に大迫力のスクリーンで存分に味わって欲しい。



■ シネマシティ ライヴ・フィルム・フェスティヴァル2023

佐野元春 ライヴ・ドキュメンタリー・フィルム『Film No Damage』
(1983年作品 / 1983年公開)
日時:2023年8月14日(月)
開映:19:00
■チェット予約
イープラス:https://eplus.jp/clff23/

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2023.07.04
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カタリベ
1968年生まれ
本田隆
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