10月24日

薬師丸ひろ子は特別な「Woman」永遠のアイドルは美しき母性の人だった

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薬師丸ひろ子…

1964年6月9日生まれ。

僕たちが追いかけた永遠のアイドルはいつの間にか、母親のようなやさしい笑顔が似合う素敵な女優になっていた。

映画『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)や TVドラマ『ど根性ガエル』(2015年)で薬師丸ひろ子サン演じる母親の姿を観た時、不思議と自分の母をイメージしてしまった。

僕はかつて茶の間で『ど根性ガエル』のアニメにかじりついていた小学生。CM の間に台所の方を眺めると夕飯を作る母の背中がいつもそこにあった。記憶の回路が誤動作を起こし、特別な感慨が生まれたのは必然だったのかもしれない。そう、“薬師丸母ちゃん” というフィルターを通して、今はもういない昭和を生きた母と再びテレビの中で出会ってしまった。思い起こせば、薬師丸ひろ子にはいつも母親の匂いが付きまとっていた――。

映画『セーラー服と機関銃』(1981年)では、死んだ父親が荼毘に付された斎場で「カスバの女」を歌う女子高生を演じる。彼女は帰宅の際、クラスメイトであるボーイフレンドたちにこう語り出す。

「(父にとって)私は母であり、妻であり、娘であった」と。

遺骨を抱いてエレベーターに乗り、女子高生には不釣り合いな真っ赤な口紅を拭うと魔法は解けて母親の顔からただの少女へと戻るである。

父親の遠戚の爺さんの遺言で仕方なくヤクザの組長を継いだ後もその母性はより明確に描かれる。それは傷を負った若い組員を手当てするシーン。子分は身体に包帯を巻かれながら言う。

「組長っていい匂いですね… お袋の匂いがします。いい匂いです」

感情が高ぶってつい抱きついてしまう若者を突き放すことなくやさしく抱きしめ返す少女。その姿はまるで聖母のようだった――。

かつて「Woman “Wの悲劇” より」を作曲したユーミンが「(薬師丸の声には)冒しがたい気品というか、水晶のような硬質な透明感がある」と自身の番組『松任谷由実の Yuming Chord』(TOKYO FM)で語っていたが、思うに彼女のクリスタルボイスの本質は性を感じさせない処女性に加えて「結晶化した純粋な母性」にあるのではないか?

なぜなら、彼女が歌うだけでその楽曲は讃美歌にも似た美しい響きを得る。そして、まるで母の胎内に戻ったかのような無垢なる気持ちが呼び覚まされるのだから――。


 もう一瞬で燃えつきて
 あとは灰になってもいい
 わがままだと叱らないで
 今は…

 ああ 時の河を渡る船に
 オールはない 流されてく
 やさしい眼で見つめ返す
 二人きりの星降る町


薬師丸サンが映画『Wの悲劇』(1984年)での燃え尽きるような演技を最後に角川映画を卒業した時に感じた寂しさは、恋人がいなくなるというよりも自分の体の一部、同胞(はらから)が一人いなくなったような不思議な感覚だった。やさしい姉だったり、親戚の綺麗なお姉さんが他の家に嫁いだ後の寂しさとは多分こういうものなのかもしれない… あの時、僕はそんなことを考えていた。


Song Data
■Woman “Wの悲劇” より
■作詞:松本隆
■作曲:呉田軽穂(松任谷由実)
■編曲:松任谷正隆
■発売:1984年10月24日



※2016年6月26日に掲載された記事をアップデート

2019.06.09
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1966年生まれ
鎌倉屋 武士
「顔ぶたないで、わたし、女優なんだから!」という台詞流行りましたねー。ふざけてちょっと叩かれたりしたときにこのセリフで返す。そんなことやってた気がするwww たぶん初出じゃないですか?

曲の方は、舞台で使われそうな演劇的な雰囲気を持っていますよね。既存のポップスとは違って朗々と歌わなければならない…大人の歌唱を意識させられる面白い曲だと思います。曲名の通り、Woman…女性的な歌詞なので男はカラオケであまりチョイスしませんよね。時々新宿あたりでオネエさんたちの歌声に遭遇しますが…

蜷川さんは劇中劇の演出をすべて任されていて、薬師丸さんはかなりしごかれてたみたいです。たしかメイキング映像に蜷川さんの演出シーンがあって「お嬢さんの演技してんじゃない!・・・この不感症!」とか言って怒鳴りつけてたような(汗)。

追記。そういえば、これもメイキングで観たんですけど、世良さんって、薬師丸さんのこと「やっくん」って呼んでたんですネ。
2016/06/27 09:59
4
返信
1966年生まれ
プリンス目白
ユーミン屈指の名曲です。地味な歌ですが、とてもアイドルのヒット曲という括りでは片付けられません。この映画もまずまず面白い。先日亡くなった蜷川幸雄が劇団の演出家役で息巻いてますね。梨元勝も出てたり、高木美保のデビュー作だったり。世良公則と三田村邦彦は太陽にほえろ!きっかけで人気爆発中だった(笑)。何と言っても、薬師丸ひろ子演じる売れない女優の記者会見シーンでの演技は必見。こう言う劇中劇みたいな映画では、彼女の演技が光りますな。
2016/06/26 19:59
4
返信
1968年生まれ
親王塚 リカ
ここ半年、この歌ばかりカラオケで歌っておりますw
薬師丸ひろ子に母性って、女性だからかもしれないけど、私には意外でした。
2016/06/26 13:31
1
返信
1965年生まれ
高野 悠
薬師丸ひろ子って年を重ねるたびに良くなりますよね、それとも私が年をとって変わったからなのか? 少なくとも当時、彼女に全く興味が無かったのは何故だったのだろう? Wの悲劇もテレビで観て面白いなーって思ったけど、劇場に行くまでには至らなかったな。「顔ぶたないで、わたし、女優なんだから!」ですね。このセリフはこの映画が初出なんだろうか?
2016/06/26 08:47
2
返信
カタリベ
1966年生まれ
鎌倉屋 武士
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