4月15日

1983年は日本のダンス元年!ムーンウォークと同時に登場した映画「フラッシュダンス」

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 1983年のコラム 
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1983年のサウンドトラック​​


前回のコラム(『眩しかった1983年の洋楽シーン!MTV黄金時代と第2次ブリティッシュ・インベイジョン』参照)は1983年の洋楽というお題で書かせていただいたが、今回は1983年のサントラ盤というテーマ。この年はサントラというか、映画の主題歌がとてつもなく充実していた1年だった。薬師丸ひろ子の「探偵物語」、原田知世の「時をかける少女」は言うまでもなく同名映画の主題歌で、あまりに売れすぎて角川映画がアイドル映画に転向するきっかけとなった。

松田聖子の「天国のキッス」も『プルメリアの伝説』の主題歌としてヒットを飛ばした。邦画に関して言えば、やはりアイドルが主演して主題歌を歌う、そんな映画がとにかく強かった。個人的には『“BLOW THE NIGHT!” 夜をぶっとばせ』のオープニングでザ・ストリート・スライダーズ「マスターベーション」を初めて聴いたときの衝撃が大脳皮質に刻まれている。

一方、洋画のサントラはというと、これはもう『フラッシュダンス』の一強。シリーズを通じて主題歌が話題になる『007』の新作『オクトパシー』にリタ・クーリッジが提供した「オール・タイム・ハイ」や、ダスティン・ホフマンの女装姿も強烈だった『トッツィー』の主題歌で、デイヴ・グルーシン作、スティーヴン・ビショップの「君に想いを」もヒットはした。コッポラの『アウトサイダー』にスティーヴィー・ワンダーが提供した「ステイ・ゴールド」は感動的だった。が、『フラッシュダンス』でアイリーン・キャラが歌った主題歌「フラッシュダンス… ホワット・ア・フィーリング」ほど、焼き付きの強いものはなかったのでは。

洋楽のキーワードは「ダンス」、タイムリーに登場した「フラッシュダンス」


それはなぜかと考えると、この年の洋楽のキーワードは「ダンス」でもあったから。デヴィッド・ボウイが「レッツ・ダンス」と高らかに宣言したこの年、MTVの主役はなんといってもマイケル・ジャクソン。「ビリー・ジーン」、「今夜はビート・イット」、「スリラー」と、マイケルのMVにキレッキレのダンスは欠かせない。『ベストヒットUSA』でそれが放映された翌週に学校に行くと、必ず真似するヤツがいた。

マイケルがモータウン25周年記念式典のパフォーマンスで、いわゆるムーンウォークを披露し、世界中に衝撃をあたえたのもこの年だ。音楽は耳で味わうものだが、MVは視覚を楽しませるもの。とりわけダンスはビジュアルとして強烈に観る者を惹き付ける。



そんなときに『フラッシュダンス』はタイムリーに登場した。主演のジェニファー・ビールスがセクシーな健康美を発揮しながら、レオタード姿で激しく踊る(後に踊っていたのはビールスではなくスタントダブルであると判明するが、映画のマジックとして許容したい)。MTV世代のボンクラ高校生は、これにコロッとやられてしまった。いや、やられたのはマナブだけではない――。

この年に日本公開された洋画の中で、最大のヒット作は『スター・ウォーズ / ジェダイの復讐』で37億円の興行収入を記録。『フラッシュダンス』はこれに次ぐ34億円を計上したのだから、同作の人気がいかに凄かったかがわかるだろう。ちなみに『007 / オクトパシー』は19億円で、その下に位置している。1983年の世界の映画興行収入も同様で、この3作がトップ3を形成した。

アイリーン・キャラ、アカデミー賞の歌曲賞を受賞


『フラッシュダンス』の主題歌「フラッシュダンス… ホワット・ア・フィーリング」に話を移そう。このナンバーは米ビルボードで当然のようにナンバーワンに上り詰め、年間チャートではポリス「見つめていたい」、マイケル・ジャクソン「ビリー・ジーン」に次ぐ3位にランクイン。日本でも大ヒットを飛ばし、オリコンの洋楽チャートではじつに21週連続ナンバーワン。麻倉未稀をはじめとするさまざまなシンガーがカバーバージョンを発表したことでも知られている。



プロデューサーにして作曲者のジョルジオ・モロダーはシンセサイザーを操りポピュラーミュージックに新風を吹き込んだ存在で、当時は映画音楽の分野でも活躍していた。この分野で最初に彼が注目されたのは1978年、アカデミー作曲賞を受賞したアラン・パーカー監督の『ミッドナイト・エクスプレス』。さらに1980年、リチャード・ギア主演作『アメリカン・ジゴロ』の主題歌となったブロディの「コール・ミー」を共作&プロデュースして、これがビルボードでナンバーワンヒットとなる。

そして「フラッシュダンス… ホワット・ア・フィーリング」ではまたもアカデミー賞を受賞し、映画にポピュラー音楽を当てる第一人者として認められた。リマールが歌った「ネバーエンディング・ストーリー」も、この御方のプロデュース。

当時24歳のシンガー、アイリーン・キャラも「フラッシュダンス… ホワット・ア・フィーリング」でアカデミー賞の歌曲賞を贈られたが、これ以前にも彼女は同賞を受賞した映画に関わっている。1980年に歌曲賞を受賞した『フェーム』がそれで、同名の主題歌は、アメリカはもちろん日本でもヒットを記録。これが彼女の出世作となった。2022年に63歳で惜しまれつつ世を去ったのは、多くの人の記憶にまだ生々しい。

「フラッシュダンス」から生まれたもうひとつの全米ナンバーワン


さて、『フラッシュダンス』のサントラからは、もう1曲、全米ナンバーワンソングが生まれている。マイケル・センベロの「マニアック」がそれだ。ビルボードの年間チャートでも9位に位置している。ともかく、サントラから2曲のナンバーワンソングが生まれるのは異例中の異例。こうなるとハリウッドのスタジオも本腰を入れて、映画とオムニバスサントラの相乗効果のヒットを狙ってくる。



その最大の成功例は同じパラマウント製作、1984年の『フットルース』だろう。高校生のダンスパーティを題材にしたこの映画のサントラからは、じつに7曲がシングルカットされ、ケニー・ロギンスの「フットルース」とデニース・ウィリアム「レッツ・ヒア・ボーイ」が全米チャートのナンバーワンとなった。



また、『フラッシュダンス』のプロデューサーコンビ、ジェリー・ブラッカイマーとドン・シンプソンは、この後も映画とサントラの相乗効果ヒットを仕かけ続け、1984年の『ビバリーヒルズ・コップ』、1986年の『トップガン』で華々しい成功を収めた。

「フットルース」に継承される1983年のダンス映画


話を1983年に戻そう。この年、もう1作、ダンスとポピュラー音楽を融合した作品が公開された。当時サントラとしては史上最高の売り上げを記録していた1978年の大ヒット作『サタデー・ナイト・フィーバー』の続編『スティン・アライブ』。前作の夢を再びとばかりに、ビー・ジーズの新曲をフィーチャーするも、時代はディスコ全盛期から離れつつあった。

実際、ジョン・トラボルタ扮する主人公は、本作ではすでに素人ディスコダンサーではなく、ブロードウェイを目指すダンサーに成長しており、そういう意味では『フラッシュダンス』の男性版と呼べなくもない。

シルベスター・スタローンが監督を務めたこともあるが、本作でのトラボルタは前作とは打って変わってマッチョボディに変身。肉体美を活かした強靭な舞いは、MTV上では早急なビートを取り入れたスタローンの実弟フランク・スタローンによる挿入歌「ファー・フロム・オーバー」の大ヒットへと発展していった。

振り返ると、ダンスのビジュアル的な魅力が音楽や映画によって映えるようになったのは、この年からだったのかもしれない。翌年、それは『フットルース』に継承され、一方ではブレイクダンスの人気沸騰にもつながっていく。

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2023.03.30
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カタリベ
1966年生まれ
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