8月1日

80年代の夏を彩った松田聖子「SQUALL」40年以上輝くサマーソングの原点はこの曲だ!

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SQUALL / 松田聖子


松田聖子のサマーソングの起点になった「SQUALL」


松田聖子のサマーソングといえば「青い珊瑚礁」を筆頭に、「夏の扉」「白いパラソル」「渚のバルコニー」「天国のキッス」などがたちどころに思い浮かぶ。思えば1980年代の松田聖子の曲には、四季の情景を歌詞に織り込んだ作品が多かった。シングルはもちろんアルバムにも季節を題材にした作品が目立つ。特に、ビーチやリゾートでの恋を歌ったサマーソングは松田聖子の定番。今も聴き継がれる多くの名曲がアルバムから生まれている。

その起点と呼べる曲が、デビューアルバム『SQUALL』(スコール)に収録されたタイトル曲「SQUALL」である。このアルバムのコンセプトは、トロピカルな南国の海。ジャケットの帯に記されたキャッチコピー《珊瑚の香り、青い風 いま、聖子の季節》が示すように、海が登場する曲が大半を占める。その中で「SQUALL」には、1980年代の音楽や世相を先取りする要素が含まれており、まさに起点の曲としてふさわしい。そこで、それらの要素を3つのポイントに分けて紐解き、曲の魅力に迫りたい。

松田聖子のスタイルを確立した三浦徳子の歌詞


1つめのポイントは、松田聖子の多くの曲に共通するスタイルが歌詞に表れていることだ。彼女の曲には、四季の情景の中で恋人同士が愛を確かめる歌詞が多いのだが、それが顕著に表れているのが「SQUALL」なのである。

まず1番では情景が歌われる。舞台は南国。海を楽しむカップルをスコールが突然襲う。「♪砂が燃えるわ」「♪巻き起こる洪水」といった具体的な描写が、日本では見られないスコールのイメージを搔き立てる。一転して2番では恋心が歌われる。スコールは情景だけでなく、歌詞の女性の心も変えてゆく。「♪着飾る心 ひとつずつ はぎ取ってしまうみたいに 恋が始まる」と、燃え上がる愛情が歌われる。しかも1番、2番ともに「♪oh, スコール」というフレーズが何度もリフレインされるのだ。

こうした情景描写と愛情表現とが交互に現れ、交差する歌詞は、松田聖子ソングのスタイルとして確立してゆく。歌詞を書いたのは、初期の松田聖子作品を一手に手掛けていた三浦徳子。彼女が確立させたこのスタイルは後に松本隆へと引き継がれ、彼女の十八番になった。そういった曲たちが、1980年代の明るくポップなアイドルソングを牽引したのは言うまでもない。

ロックサウンドと融合した弾けるボーカル


2つめのポイントは、洋楽テイストのロックサウンドだ。1980年代のアイドルソングは洋楽の影響によって音が洗練され、1970年代と比べて華やかさを増してゆく。その傾向がいち早く表れているのが「SQUALL」なのだ。イントロなしのスローなボーカルで曲が始まるやいなや、一転してアップテンポのロックサウンドへ変化。間奏で鳴り響くギターソロ、効果的に挿入されるストリングスが南国ムードを盛り上げる。作曲は小田裕一郎で、編曲は大村雅朗。そう、この曲は「青い珊瑚礁」と同じ制作陣が、南国の海のモチーフをロックンロール風に仕上げた作品なのだ。

このサウンドに、松田聖子の甘いボーカルが拍車をかける。出だしこそバラード風にしっとりと入るが、テンポが変わってからは音域の高低差も気にせず、ロックシンガーのように自由奔放に歌うのだ。シャウトするような「♪oh, スコール」の表現が1番と2番で変化したり、「♪恋が始まる」の “る” を唇を丸めるように歌ったりと、彼女の持ち味である多彩な表現力を早くも確認することができる。

松田聖子をプロデュースしたCBS・ソニー(当時)のディレクター・若松宗雄も、“聖子については、歌手の音域にこだわりすぎずに曲作りをしていた” と述べており、この「SQUALL」に関しては、“聖子のヴォーカルが弾けて、高校を卒業したばかりの初々しさと歌うことへの喜びがダイレクトに伝わってくる” と評している。そんな松田聖子の弾けるボーカルがロックサウンドと融合した「SQUALL」は、歌謡曲からJ-POPへと変化した1980年代の音楽を先駆けた作品であったと、今にして思う。

南太平洋のイメージから始まった1980年代の松田聖子


そして3つめのポイントは、1980年代に本格化した海外旅行、特に南国リゾートブームのきっかけのひとつになったことである。1980年代の後半からは海外旅行が身近な存在になっていくが、円安だった前半は庶民にとって高嶺の花。南国といえばハワイかグアムで、富裕層が楽しむものだった。

そんな1980年代の幕開けにリリースされた松田聖子の曲は、南太平洋のイメージから始まった。前出の若松氏は、“聖子の明るい伸びやかな声に似合うのは、南太平洋の青空や爽やかな風が思い浮かぶリゾート感あふれる旋律に違いない” との直感から小田裕一郎に曲を依頼。これがピタリとハマり、時代も寄りそった。日本がバブル景気に向かう中で海外旅行が一般化し、松田聖子が歌う南国リゾートを実体験する若者が増加したのである。彼女の曲を聴いた若者が南国に憧れ、海外へ飛び出したことは想像に難くない。

以上、松田聖子の「SQUALL」が1980年代を先取りした要素を、3つのポイントにわたって紹介してみた。いま改めて考えてみると、1980年代のアイドルポップスを牽引した松田聖子は、デビュー当初から時代の切り拓き、流行の先端を走っていた。そしてこの曲が、時代の節目である “1980年” にリリースされたことに驚きを隠せない。


<参考文献>
・松田聖子の誕生 / 若松宗雄(新潮新書 2022年)

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2026.07.12
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カタリベ
1966年生まれ
松林建
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