12月5日

リリース40周年!松田聖子が歌う珠玉のクリスマスソング「金色のリボン」

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頂点を極めつつあった1982年の松田聖子


デビューから3年目を迎えた1982年の松田聖子は、トップアイドルの地位に加えてアーティストとしての評価も確立し、人気と実力は頂点を極めつつあった。シングルでは「赤いスイートピー」からユーミンを作曲家に迎え、女性などの新たなファン層を獲得。アルバムも、第一線のアーティストが結集した『Pineapple』と『CANDY』という2枚をリリースし、アイドルの域を超えた音楽作品として高評価を得ていた。年末の賞レースも、FNS歌謡祭でグランプリを受賞、日本レコード大賞では金賞を受賞する(この年の大賞は聖子だったと、今も思う)。





そんな勢いに乗るこの年の聖子が最後に放った作品が、クリスマスアルバム『金色のリボン』であった。この作品も企画モノの域を超え、ファンのみならず一般リスナーにもインパクトを与えたように思う…。ということで、発売から40年が経つのを機に当時の記憶や世相も交えつつ、この作品を再評価してみたい。

「金色のリボン」レコード店でキラキラ輝いて見えたボックス仕様


クリスマスアルバムといえば、年末のレコードショップの店頭を彩る12月の風物詩のひとつだ。定番のクリスマスソングをチョイスした作品に加え、人気アイドルやアーティストがファンへの感謝をこめて発売するケースも多かったと思う。私にとっての『金色のリボン』は、そんなアイドルが歌うクリスマスアルバムを初めて聴き、衝撃を受けた作品だった。

まず、聖子がクリスマスを題材にしたシングルでなく、アルバムを出してきたことに驚いた。しかも『金色のリボン』は、クリスマスソングを収録した45回転のミニアルバム『Blue Christmas』と、ベストアルバム『Seiko・ensemble』の2枚組。20ページのブックレット写真集が付いたボックス入りの豪華仕様なのに、価格はLPより少し高いだけの3,500円。高校生だった当時の私は、レコード店に並んだ『金色のリボン』がキラキラと輝いて見え、率直に「欲しい」と思った。

聖子のクリスマスメドレー、聖夜に聴くために作られたミニアルバム


もちろん外観だけでなく、この作品は中身も凝っている。ミニアルバムにはクリスマスが題材の5曲が収録されているが、A面には定番曲とカバー、B面には新作が配分され、聖夜のムードが徐々に高まる仕掛けになっている。

A面最初の「クリスマスメドレー」は、「赤鼻のトナカイ」から始まるクリスマスの定番4曲のメドレー。初めて聴いた時には、子供の頃からなじんでいる歌が聖子の声で聴けることに感動した。改めていま聴くと、編曲した大村雅朗さんのテイストが随所に感じられ、曲と曲との自然な繋ぎ方に感心する。プロデューサーの若松宗雄さんによれば、音域が異なる4曲を繋ぐのに大村さんは苦労したとか。特に、音域が低い「White Christmas」を繋ぐのは大変だったと思う。

2曲目は、聖子初のカバーソング「恋人はサンタクロース」。私はこの名曲を、ユーミンではなく聖子の声で初めてフルで聞いた。ロック調でギターが鳴り響くアレンジも原曲に忠実で、いま聴いてもワクワクする。

B面に収録されている3曲は、このアルバムのために書き下ろされた新作。タイトル曲の「Blue Christmas」は一人で過ごすイブの夜の寂しさ、「ジングルベルも聞こえない」は浮気性の彼への嫉妬、「星のファンタジー」は荘厳なバラードと、聖夜に聴くために作られたような珠玉の曲が揃っている。特に「星のファンタジー」は、聖子の透明な声が脳内に染み渡り、心が洗われる。曲のラストで聖子が甘い声でささやく「メリークリスマス」も聴きどころだ。

聴けば聴くほど味が出るスルメ曲「チェリーブラッサム」


このミニアルバムだけでも十分売れたと思うが、先述したように『金色のリボン』にはベストアルバムも付いてくる。この年の聖子は、2枚目のベスト盤『Seiko・index』を7月に発売したばかりだが、なぜ短期間で3枚目を作り、クリスマスアルバムとセットで出したのか?

ひとつには、アルバム未収録曲をファンに届けたいという制作者の思いがあったと思う。ラジオ番組の主題歌「HAPPY SUNDAY」、映画『野菊の花』の挿入歌「野の花にそよ風」、そして別アレンジで録り直した最新シングル「野ばらのエチュード」も収録され、ファンはコレクションしたくなる。

また、直近のアルバム『CANDY』に未収録の「小麦色のマーメイド」、「風立ちぬ」B面の「Romance」、アルバム『Pineapple』内の名曲「水色の朝」が収録されたことから、聖子のシングルやアルバムを持っていない新規ファンも意識したと思う。個人的には、レコーディングで聖子が違和感を覚えたという「チェリーブラッサム」が、3枚のベスト盤すべてに収録された唯一の曲であることに興味がある。聴けば聴くほど味が出るスルメ曲だということか。

つまり、収録曲を変えたベスト盤を立て続けに出したことから、この年の聖子がファン層を急激に広げたことがうかがえるのだ。音楽評論家の遠山一彦さんは歌詞カードのライナーノーツに「聖子の歌声は中年オトコをトリコにした」と寄稿しているが、聖子ファンは中高年にも拡散したようだ。

聖子一強から聖子・明菜の二強の時代へ


そんな聖子の人気拡大中に作られた『金色のリボン』は20万枚限定で発売されたが、話題性からレコード店で売り切れが続出。買い損ねたファンも多かったらしい。オリコンのアルバムチャートでも12月13日付で初登場1位を獲得し、翌年1月10日付まで首位を維持する。企画モノで3,500円のクリスマスアルバムがこれだけ売れ続けるのもすごいが、前々週の11月29日付までは『CANDY』が首位だったので、聖子のアルバムは1982年の年末に売れまくっていたことになる。

しかし、『金色のリボン』が首位に立った12月13日付のシングルチャートでは、中森明菜の「セカンド・ラブ」が3週連続で首位。そしてアルバムチャートで『金色のリボン』の首位を奪ったのも、明菜の企画アルバム『セブンティーン』であった。そして女性アイドルのトレンドは、聖子一強から聖子・明菜の二強へと変化してゆく。



一方、若者のライフスタイルも変わろうとしていた。日本がバブル景気に向かうなかで海外旅行が一般化し、聖子が歌うリゾートライフを実体験する若者も増加。クリスマスも、慎ましやかな贈り物交換から、リゾートホテルで彼と一夜を過ごすのがメジャーになった(聖子とユーミンが若者に与えた影響は返す返す大きかった)。

そんなバブル前夜にレコード店に並んだ『金色のリボン』は、バブルを先取りしたようにキラキラしていた。これを彼女へのクリスマスプレゼントにした友人もいたくらい、所有欲を喚起させる存在感があったのだ。そんなバブル前夜の世相の記憶はすっかり薄れたが、CDやサブスクで音源が手軽に聴けるのは幸いだ。今年のクリスマスは40年前の聖子の歌声を堪能されてはいかがだろう。

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2022.12.05
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カタリベ
1966年生まれ
松林建
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