これと同じことは、ポップミュージックの世界にも当てはまる。最大の音楽市場である米国には、ザ・ビートルズの例を挙げるまでもなく、古くから多くの偉大な才能が国境を越えてやって来たものだ。最近はその傾向がより顕著で、全米シングルチャート(Billboard Hot 100)の上位にスペイン語や韓国語の楽曲が入っているのが、すっかり珍しいことではなくなった。
西ドイツのディスコバンド、ボニーMの創始者フランク・ファリアンが、2人の黒人クラブダンサーをフロントマンにしてミュンヘンで結成したユニット。全世界で800万枚以上を売り上げたデビューアルバム『オール・オア・ナッシング』に収録。1989年度のグラミー賞で最優秀新人賞(Best New Artist)を受賞したが、後に2人が実際には歌っていなかったことがバレて賞を剥奪された。今では「史上唯一、グラミー受賞を取り消されたアーティスト」として記録(記憶)されている。
アイルランドの歌姫と言われたが、後年は活動家のイメージが強いかもしれない。この曲はプリンスのカバーで、米英を含めたほぼ全世界のヒットチャートで1位を獲得した。アルバム『蒼い囁き(I Do Not Want What I Haven't Got)』に収録。ところで、クレジットされていないので僕も知らなかったのだが、この曲のバッキングトラックは、プロデューサーのネリー・フーパーに頼まれて屋敷豪太が打ち込みで作ったのだそうだ。
【第1位】U2「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」
アイルランドを代表するロックバンド初の全米ナンバーワンヒット。1987年度のグラミー賞で最優秀アルバム賞(Album Of The Year)を受賞した『ヨシュア・トゥリー』に収録。今回のランキングでは、多くのアーティストに少なからず一発屋感、色物感が漂う中で、このバンドの本物感は他を圧倒していると思う。この数年前から欧州やオーストラリアでは既にその地位を確立していたが、本作で完全に世界的バンドになった。
今回は、米国の多数派であるアングロサクソン系白人とルーツの近い人が多い英国、カナダ、オーストラリアといった英連邦(Commonwealth of Nations)各国はあまりにも数が多くてキリがないので、今回はランキングから外すことにした。
また、今回選んだ10曲の他にも、ギリシャ出身ヴァンゲリスの「炎のランナー(Chariots Of Fire - Titles)」やチェコスロバキア(現:チェコ)出身ヤン・ハマーの「マイアミ・バイスのテーマ(Miami Vice Theme)」といったインストゥルメンタル楽曲もシングルヒットしているので、ここに付け加えておきたい。