彼女は過去に民主党候補の支持を公言したことがあったし、前回の大統領選ではジョー・バイデン支持を表明した。そんな彼女は2023年に米国のニュース雑誌『TIME』から「今年の顔(Person of the Year)」に選ばれていて、その絶大な影響力をドナルド・トランプ支持層は本当に恐れているのだそうだ。ということで、前置きが長くなったが、今回のテーマは「プロテストソング」だ。
1980年に「ベスト・フレンド」と両A面シングルとして発売。デビューアルバム『恋のスカ・ダンス(I Just Can't Stop It)』に収録。タイトルの “マーガレット" は、もちろんサッチャーのことで、前年に首相に就任した彼女に対して、ただひたすら辞めてくれとお願いしている。この曲が生まれた背景には高い失業率や核戦争への恐怖があるが、だからと言って悲壮感・緊迫感漂う嘆願に終始している訳ではない。スカの軽妙なビートと合わせて、ちょっとしたユーモアも感じられるから面白い。
【第1位】ザ・スペシャルズ 「ゴースト・タウン」
1981年にシングルリリース。全英シングルチャート(Official Singles Chart)で3週連続1位。人がいなくなった街=ゴースト・タウンをクルマでひた走るミュージックビデオ、不気味なサウンド、「This town is coming like a ghost town(この街がゴーストタウンになってしまう)」のリフレインがとても印象的だ。当時の英国は、失業や人種差別への不満が国中を巻き込む暴動に発展するなど、不穏な空気が漂っていた。この曲ではそんな状況が鋭くタイムリーに指摘されていて、それが若者たちの共感を呼んだ理由だろう。
1982年リリースのデビューアルバム『ザ・メッセージ』に収録。米国の音楽誌『Rolling Stone』はこの曲を「100 Greatest Hip-Hop Songs of All Time」の第1位に選んだが、その理由はヒップホップ初のメッセージソングだったことだ。80年代に入ると、賃金や社会保障の削減によって経済格差が拡大し、低所得層の黒人が多く住む “ゲットー” はますます苦境に追い込まれたが、この曲はこうした黒人社会を取り巻く厳しい現実にスポットを当てている。その後、数え切れないほどのアーティストによってサンプリングされた。
1985年にリリースされた3枚目のソロアルバム『センターフィールド』に収録。ギターのシールドをワンカメラで延々と辿っていくミュージックビデオが印象的だったが、残念ながらジョン・フォガティの公式YouTubeチャンネルには公開されていない。彼はクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル時代の69年には既に「青空の使者(It Came Out Of The Sky)」という曲の中で、当時カリフォルニア州知事だったレーガンのことを批判していたくらいなので、この曲の「オールド・マン」がレーガン大統領を指しているのは間違いないだろう。