2025年 1月22日

a-ha のキーボーディスト【マグネ・フルホルメン】時間をかけて向き合う音楽の素晴らしさ

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マグネ・フルホルメンのアルバム「リヴィング・ウィズ・アワセルヴズ」発売日
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a-haのマグネ・フルホルメンが生み出す美メロ


ロックバンドのメンバーがソロアルバムをリリースする場合、そのほとんどがボーカリストのものではないだろうか? あるいは、ギタリストが作るギタープレイありきのものや、逆にシンガーソングライター然としたものも見受けられる。

それでは、キーボーディストのソロアルバムはどんなものだろう? インストゥルメンタルによる映画のサウンドトラックというパターンは結構多いように感じるのだが、正直、ポップミュージックやロックという範疇で楽しめる作品はあまり記憶にない。

さて、マグネ・フルホルメンというキーボーディストをご存知だろうか? そう、1980年代を代表するノルウェーのバンド、a-haのキーボーディストでありソングライターがマグネ・フルホルメンその人である。「テイク・オン・ミー」の印象的なシンセリフを15歳の時に完成させたセンス抜群の少年は現在62歳。そんなマグネが、新作ソロアルバム『リヴィング・ウィズ・アワセルヴズ』をリリースした。



音楽と正面から向きあいたくなる、深淵なサウンドと誠実な歌が魅力


a-haのキーボーディストが作る作品ゆえに、キャッチーでキラキラしたシンセサウンドを期待したくなるところだが、実際に鳴らされている音像はa-haの近作にも通じる落ち着いたものだ。シンセサイザーや打ち込みもダンサブルなサウンドを作るために取り入れられているわけではない。むしろ、深淵なサウンドスケープを表現するために用いられており、聴き流すような作品ではなく、音楽と正面から向きあいたくなる作品だ。

だからといって、本作が難解な作品かというと全くそんなことはない。a-haの作品同様に、奏でられるメロディーの美しさは特筆ものだ。また、マグネ自身によるそのボーカルは繊細な歌声と歌い口から、不器用だけれども誠実な印象を与え、美しいメロディーと実にマッチしている。



TOTOの「ホールド・ザ・ライン」もカバー


歌われる内容も内省的なものが多く、そのテーマは「リヴィング・ウィズ・アワセルヴズ」の中でも歌われる、“自分自身とどう向き合って生きているのか” といったパーソナルな内容。繊細なメロディーと内省的な歌が丁寧に紡がれた本作は、キャリアと人生を積み重ねた者だからこそ生み出すことができる苦みや優しさを強く感じさせ、聴き込むほどに味わい深さが増す作品となっている。

そして、意外な選曲のカバー曲が収録されていることにも注目したい。その曲とはTOTOの「ホールド・ザ・ライン」。オリジナルはセンチメンタルな泣きのメロディーを力強い演奏で聴かせるアメリカンロックである。一方、マグネのカバーはかなり落ち着いたアレンジでどっぷり悲しく歌っていて、アルバムの中でも一際しんみりとした印象を受ける楽曲になっている。TOTOのファーストヒットで代表曲のひとつでもあり、ファンにはお馴染みの曲だと思うので、聴き比べてみるのも一興だ。

「テイク・オン・ミー」だけじゃない!枯れることないメロディーメイカーとしての才能


a-haの代表作が1980年代の「テイク・オン・ミー」であることは紛れもない事実。彼らが食っていくためにバンド活動を続けるのであれば、「テイク・オン・ミー」でお馴染みの… というイメージだけでやっていける。しかし、それだけでは面白くない。

マグネ・フルホルメンの新作『リヴィング・ウィズ・アワセルヴズ』は、枯れることないメロディーメイカーとしての才能と、自然体で新たな音楽に向き合う真摯な姿勢が強く感じられる傑作だ。2025年のサブスク時代、派手なイントロとフックの分かりやすさが主流のポップミュージックだが、マグネが作り出す深みのあるメロディーは流行に左右されないタイムレスな魅力が詰まっている。

ともすると時代からこぼれ落ちてしまう種類の作品とも思えるのだが、こうした時間をかけて向き合う音楽の素晴らしさを忘れてはいけないと強く感じた。そして、本稿がその一助になれば幸いだ。


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2025.02.11
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カタリベ
1972年生まれ
岡田ヒロシ
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