80年代後半、それは歌謡曲というものが終焉を迎えた時代です。78.1%という驚愕の視聴率を叩き出した84年のNHK紅白歌合戦を分水嶺に、ゆっくりとその役目を終えていきます。
歌謡曲、僕は大好きなんですよ。それは自分の生きてきた時代にも関係しているのかもしれません。僕は1966年生まれなので、多感な少年時代に意識すること無くあちこちから流れていた音楽が歌謡曲でした。テレビには歌番組が溢れ、街を歩けばいたる所から歌謡曲が聞こえてきました。
歌謡曲の定義は人それぞれだと思いますが、僕は “みんなに愛されるために創られた音楽” だと解釈しています。今の時代のように趣向が細分化して、ある特定の人たちだけが好むような音楽の存在も否定はしませんが、何か今ひとつしっくり来ないものがあるんです。
もちろんクラシックとかブルーズのような民族音楽を聴かない訳ではありませんし、音楽なんてものはそもそも極めてパーソナルなものであるということも理解しています。
でも、なんでしょう、その音楽が向かっている方向性というか、その指向性というか、他者に対して意識が開かれているか否かが僕にとっては重要なのです。言い換えれば、ある特定の人に分かってもらえればいい、このターゲットを狙えばそこそこのヒットが狙える、みたいに創られた音楽が好きではないのです。
歌謡曲ってそういったマーケティング重視の音楽だと思われる方も多いと思いますが、実はそんなことありません。作者の世界観を追求するところまで追求して、もしかしたら世間には理解されないのではと危機感を抱きつつ、それでも一人でも多くの人に聴いて欲しいと思って考えに考え抜かれて創られた音楽、そしてそんな想いを吐露することもなく世間に晒された音楽。それが歌謡曲なのです。
2015.12.31
YouTube / hhymh77
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