初めて夢中になったのは日本のバンドでも英米のバンドでもなかった。
フィンランド出身のハノイ・ロックス。80年代の初めにイギリスに進出し、日本でも『ミュージック・ライフ』『ROCK SHOW』などで注目されていた。
グラビアで見た5人に惹かれ、1stアルバム『白夜のバイオレンス』を聴いてアンディ・マッコイの人懐っこいメロディにヤラれた。この頃は学校行く前にハノイ、帰ってからもハノイな毎日。
1983年、ついにハノイが日本にやってきた! 一緒に行ったのは、ハノイのフィルムコンサートで知り合った千葉県に住むNちゃん。ライブはただただ興奮のまま終わったが、翌日のNちゃんの電話に驚いた。
なんと、ハノイのメンバーが滞在するホテルの情報を手に入れたという。さすがは東京の女子高に通っているNちゃんっ。迷わず次の日、都内のホテルに二人で向かった。
ホテルに着くとハノイファンとおぼしき女のコたちがいて、話してみると他のバンドの追っかけもやってる感じ。ハノイ命! の私たちはちょっと違和感を感じながら他のバンドの追っかけ話に耳を傾けていた。
しばらくすると、ドラムのラズルがひょっこりロビーに現れた。あっという間にファンに取り囲まれている。
「私も!」と持参してきた『白夜のバイオレンス』(レコード)を出すと、すぐにラズルは目を留めてサインしてくれた。やった、作戦大成功。やっぱミュージシャンは、サイン帳なんかよりジャケにサインしたくなるでしょ。
次に来たのはNちゃんが大好きなギターのアンディとベースのサミィ。2人とも細い! カッコいい! でもやっぱ、アンディは声をかけにくい雰囲気。躊躇していると、アンディは手に持っていたビール瓶をゴミ箱に捨てて外に出てしまった。…と、Nちゃん、すかさずゴミ箱のビール瓶を拾った! あんた本物のアンディのファンだよ(笑)。
続いてマイケル、ナスティが現れたけど2、3人にサインしてササッと行ってしまった。「あーやっぱり全員のサインなんてよっぽど粘らないと無理か」とこの時は思った。
しかし、ここで追っかけ上級者の2人組が私らにすばらしい情報と作戦を持ちかけてくる。メンバーは一度戻ってきて、また出かける予定だからそれをタクシーで追いかけようと。もちろん私とNちゃんはこの話に便乗。タクシー乗り場で待機し、再びホテルから出てきたメンバーを車で追っかけた。
着いたのは撮影スタジオらしき洋館。ここで2、3時間は待っただろうか。出てきたメンバーに声をかけると、待っていたのを知ってか丁寧にサインしてくれたのだ! マイケルなんて私の名前も入れてくれたんだよね。うれしかったなぁ。
R&R なハノイだけど、日本での彼らはとってもフツーというかシャイな感じだった。でもそれが、私とNちゃんには嬉しかった。2人ともこの日初めて学校をサボったけど、その後追っかけにハマることもなく毎日学校に通いましたとさ。
※2016年7月29日に掲載された記事をアップデート
2018.06.17
YouTube / Franck PIQUEDOUX
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