2023年 8月23日

歌手・研ナオコの実力!桑田佳祐や中島みゆきの楽曲を見事に歌いこなして大ヒット

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研ナオコの名作オリジナルアルバム6作品が初CD化


研ナオコというと『カックラキン大放送!!』(1975年〜)などのテレビバラエティ番組で活躍したコメディエンヌという印象が強い人もいると思う。けれど、そんなイメージ以上に1970〜80年代のミュージックシーンに大きな功績を残したシンガーであることも忘れるべきではないだろう。

研ナオコのポニーキャニオン時代の名作オリジナルアルバム、『かもめのように』『あきれた男たち』『Naoko Mistone』『スタンダードに悲しくて』『名画座』の6作品が8月23にリリースされた『オールタイム・ベスト』に続き、10月18日に初CD化。配信もスタートすることが決定した。この機会に歌手・研ナオコの魅力をデビュー当時から掘り下げてみたい。

歌手を目指した研ナオコは高校を卒業した1970年に静岡県から上京、翌1971年に設立されたばかりの東宝レコードから「大都会のやさぐれ女」でレコードデビューする。

「大都会のやさぐれ女」はこの時代によくあったR&B風のリズムを生かした都会派演歌。今聴くと、歌詞の世界観も含めて10代の女の子にこういう曲を歌わせていいんだろうかと感じるけれど、1970年前後には藤圭子などの先例もあるように、10代の少女に “夜の女”を思わせる背伸びした曲を歌わせることにそれほど抵抗感がない時代だったということもあるのだろう。余談だけれど、こうした感覚は少女時代の美空ひばりから初期の山口百恵、中森明菜にも受け継がれている日本の歌謡曲の伝統のひとつとも言えるのかもしれない。

デビュー曲「大都会のやさぐれ女」はヒット曲にはならず、セカンドシングル以降、研ナオコはシンガーとしてのスタイルを模索するようにさまざまなタイプの曲を歌っていく。その中から「京都の女の子」(1972年)、「女心のタンゴ」「うわさの男」(1973年)といったヒットチャート誌の中位にランクされるヒット曲を出すことに成功していった。

「京都の女の子」「女心のタンゴ」「うわさの男」の3曲はともに作詞:阿久 悠、作曲:森田公一というヒットメーカーが手掛けており、それぞれ曲調は違うけれど洋楽やフォークムーブメントなどの新しい音楽の流れの影響を感じさせる1970年代初頭らしいポップス歌謡になっていた

シンガーとしても手ごたえをつかみかけ、テレビタレントとしても脚光を浴び始めていた1975年、研ナオコはキャニオンレコードへ移籍し、より積極的なアプローチを見せるようになる。

チャート1位を獲得する大ヒット曲「あばよ」


移籍後、第1弾シングルとなった「愚図」(1975年)は作詞:阿木耀子、作曲:宇崎竜童による楽曲で、研ナオコにとって初のチャートトップ10に入るヒット曲となった。



同年にはアルバム『愚図』を発表。この中で彼女は吉田拓郎、泉谷しげる、小坂恭子などのフォーク系楽曲や沢田研二、野口五郎、布施明、矢代亜紀らの楽曲をカバーし、幅広いポップスシンガーとしての姿勢をアピールしていった。

翌1976年、ついに研ナオコは、チャートの1位を獲得する大ヒット曲を生んだ。それが中島みゆきが提供した「あばよ」だ。

中島みゆきはそれまで他の歌手に楽曲を提供したことはなかったが、中島のデビュー曲「アザミ嬢のララバイ」(1975年)を聴いて心を打たれたという研ナオコからの楽曲の提供オファーを受けて提供したのが「あばよ」だったという。



この曲は必ずしも研ナオコのために書かれたものではなく、自分用に書いた曲の中から研ナオコに合う曲としてセレクトされたという話もある。ともあれこの印象的な楽曲は研ナオコにとっても最大のヒット曲となり、シンガーとしての研ナオコのイメージを確立する曲ともなった。

「愚図」に匹敵するスマッシュヒットとなる「LA-LA-LA」


実は「あばよ」の前作として発表された「LA-LA-LA」も中島みゆきの提供曲だ。しかし、研ナオコに提供された曲としては「あばよ」の方が先だった。ただ、前年のヒット曲「愚図」とこの曲の間にトーンの違う曲を挟みたいという制作サイドの意向で、中島みゆきにもう1曲依頼して「LA-LA-LA」が誕生したという。

その目論見通り「LA-LA-LA」も「愚図」に匹敵するスマッシュヒットとなると同時に、「あばよ」への起爆剤としての役割を見事に果たす作品となった。



「あばよ」はシングルとしてリリースされる前にアルバム『泣き笑い』の収録曲として発表されている。この『泣き笑い』はA面に「LA-LA-LA」「あばよ」を含む中島みゆきによる6曲、B面には作詞 阿木耀子、作曲 宇崎竜童による6曲が収められたいわばコンセプトアルバムだった。

中島みゆきの世界を表現する研ナオコの力量


その後、研ナオコはつのだひろが提供した「風をくらって」(1977年)など他の作家の楽曲を発表するが、1978年に再び中島みゆきの「かもめはかもめ」を歌って大ヒットさせ、中島みゆき楽曲との相性の良さを決定的に印象づけることになる。



中島みゆきが研ナオコに提供した楽曲は、カップリング曲も含めて15曲にのぼるという。さらにこれとは別に研ナオコによる中島みゆきのカバー曲も多い。強烈な個性の中に、深い情感と鋭いリアリティをもつ中島みゆきの楽曲を違和感なく歌い切ることは誰にでもできることではない。

これだけ多くのコラボレーションが成立している背景には、“中島みゆきの世界” を表現する研ナオコのシンガーとしての力量と魅力があることを忘れてはならないだろう。

中島みゆきの楽曲に対する研ナオコの解釈


デビュー曲「大都会のやさぐれ女」を歌う研ナオコはいかにも演歌歌手然としている印象がある。歌い方も派手でコブシもよくまわっている。

しかし、そうした歌い方はすでに「京都の女の子」の時点では変わっていて、どこかアイドル的な可憐さも感じさせるポップス歌謡的唱法になっている。

そして中島みゆき曲を歌う研ナオコは、声の抑揚を押さえ気味にして表面的な感情の起伏を見せないようにしながらも、内面の悲しみの深さを伝えてくるとても繊細な歌唱を聴かせてくれる。

その歌は、振られ唄を歌う時の中島みゆきの生々しさにあふれた情感表現とは違いながらも、けっして大袈裟な歌謡曲的表現ではない内面的な哀しみのリアリティを伝えてくれる説得力あふれるものになっている。

中島みゆきの楽曲に対する研ナオコの解釈と表現には、他のシンガーの追従を赦さないものがある。中島みゆきの曲に限らないけれど、シンガーソングライターの作品を歌謡曲の歌手がカバーする時、往々にして感じる “それじゃない感” が、研ナオコの場合には一切ないのだ。

サザンの「夏をあきらめて」を自分の歌として歌いこなし大ヒット


研ナオコは1982年にサザンオールスターズの「夏をあきらめて」をカバーしている。これは同年にリリースされたサザンオールスターズのアルバム『NUDE MAN』の収録曲だ。他のアーティストのアルバム曲をシングルカバーするというのもなんとも大胆な企画だが、研ナオコはこの曲を自分の歌として見事に歌いこなして大ヒットさせている。



研ナオコのシンガーとしての実力は、もしかしたらあまりクローズアップされることがないかもしれない。しかし、宇崎竜童、中島みゆき、桑田佳祐というソングライターとしてもシンガーとしてもきわめて強い個性をもったアーティストたちの楽曲を、自分の歌として、それも “伝わる歌” として届けてきたという事実だけでも、彼女のシンガーとしてのクオリティの高さは証明できるのではないだろうか。

デビュー50周年企画の一環として2019年にシングルリリースされたリリィの「私は泣いています」(1974年)のカバーでも、研ナオコのシンガーとしての素晴らしさは余すところなく発揮されている。

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2023.10.10
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カタリベ
1948年生まれ
前田祥丈
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