2023年 10月4日

【飯島真理インタビュー】① 初めての魅力発見!40周年オールタイムベストを本人が解説

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飯島真理デビュー40周年!初のオールタイム・ベスト「All Time Best Album」


1983年に、坂本龍一プロデュースのアルバム『ロゼ』でデビューし、1984年に自ら主演も務めたアニメ『超時空要塞マクロス』の劇場版主題歌「愛・おぼえていますか」がオリコンTOP10ヒット、そして1989年に渡米してからも、精力的に音楽活動を続けてきた飯島真理。そんな彼女が、2023年10月4日に、デビュー40周年を記念した初のオールタイム・ベスト『All Time Best Album』を発表する。

彼女は数多くのヒット作や話題作を出しているのだが、それらがアルバムに集中していることもあり、楽曲単位では前述のマクロス関連やアニメ『スプーンおばさん』などのタイアップ曲を幾つか知っている程度という読者も多いかもしれない。そこで、本インタビューでは、彼女の音楽を初めて聞く若い世代の方や、タイアップ曲だけ聴いていたリアルタイム世代の方にも関心を持ってもらえるような、いわば “飯島真理入門書” となる解説をお願いした。

まずは、今回のベスト盤の3枚を「Her」「Him」「Us」というテーマ別にした経緯から尋ねてみた。

飯島真理(以下:飯島)「これは、ビクターのディレクターから、“曲は年代順ではなく、テーマを持って並べるのがいいのでは”、と打診された瞬間にひらめきました!アイデアはいつも“降りてくる”ことが多いので、その理由は説明できないのですが、今この質問を受け、ふと、少女漫画のイメージで、“彼女” “彼” “私たち” という画がひらめきました」

本人が収録時間ギリギリまでセレクトした全53曲は多彩なラインナップ


CD3枚には本人が収録時間ギリギリまでセレクトした全53曲を収録しているが、実際に聴いてみると、もっとここに入りきらない作品が沢山あったのだろうな、と思えるほど非常に多彩なラインナップに驚かされる。

では、各ディスクから、いくつか特長的なものをピックアップして真理さんご本人に語ってもらおう。まずは、“Her 彼女” をテーマとしたDisc1から。

「ハートにしまった I Love You(だいすき)」(2曲目)
1990年のアルバム『It’s a Love Thing』収録。西海岸風のカラリとした雰囲気の軽快な歌声と、久しぶりにかつての恋人とデートをするも、“これきり会えない” と決別する歌詞のバランスが絶妙な楽曲。

飯島:「この頃の楽曲たちのアレンジには、共同プロデューサーだった元夫(ジェームス・ステューダー)のカラーが半分入っているかもしれませんね。歌詞の内容はちょっと残酷なんですが(笑)、少しずつストーリーは変えているものの、ほぼ実話が土台になっています。小説や映画などの作品をもとにしたものも何曲かありますが、基本はノンフィクションですね」

「1グラムの幸福(しあわせ)」(11曲目)
1984年のシングル。当時、テレビ番組『わくわく動物ランド』のエンディングテーマに起用された楽曲で、作曲は飯島本人、作詞は松本隆が手がけている。

飯島:「私は動物が大好きなので、この番組のテーマ曲に選んでもらえて嬉しかったです。実は私もゲスト回答者として番組に出たことがあるのですが、結果は散々でした(笑)。松本隆さんに歌詞を依頼したのは、当時のスタッフの計らいでした。松本さんの歌詞は、例えば「セシールの雨傘」(1985年のシングル)など、ドラマティックなんだけど重たくなくてオシャレな感じで好きですね」

「Hotel Robby」(14曲目)
2018年のアルバム『Chaos And Stillness』収録で本ベストアルバム中では最も新しい。「♪ デートを夢見た花柄のワンピース〜 想うたび涙出るのはあなたがたったひとりよ~」と、恋人になれなかったことを今も悔やむという内容がストレートに伝わるミディアム曲。2023年のライブでも披露されたが、地声と裏声を往き来する歌唱により、感情の起伏がいっそう感じられて魅力的。

飯島:「そう言っていただけるのは嬉しいですね! 私の歌声にもいろんな歴史があり、2009年の『Echo』あたりから、試行錯誤しながら今の歌い方になって来たと思います」



ちなみに、2023年8月に発売されたアルバム『For Lovers Only II』は、オリコンのインディーズ・アルバムのチャートで週間15位という高ランクをマークした。JAPANやコールドプレイ、10ccなどの楽曲をカバーしているが、現在の飯島真理だからこそ出せる言葉の繊細なニュアンスまで伝わってくる意欲作だ。

「Patience」(18曲目)
1991年のアルバム『Believe』収録。「♪ 彼女は夢に近づくたび輝く あふれる情熱を抱いて~」といった歌詞が象徴するように、女性が夢に向かって邁進していく内容のバラード。今の時代こそ、より胸に響く人が多いかもしれない。

飯島:「これは、彼女=私への応援歌でした。当時は、ライブの締めの曲としてよく歌っていましたね」

Disc1全体を聴いてみて、女性像がよりリアルに描かれているためか、歌詞が印象的なものが多いことに気づいた。

飯島:「私は元々、国立(くにたち)音楽大学ピアノ科出身ということもあり、ピアノ弾きという意識があるのですが、喉を通した歌声って指で弾くピアノよりももっとダイレクトな表現方法だと思うんですよ。だからこそ歌は難しいんですよね。私の場合は、詞と曲が同時に降りてくるのですが、今は、それが日本語の時もあれば、英語の時もあります」



英語の歌詞にも、日本語詞同様に飯島ならではのストーリー性


続いて、“Him 彼” をテーマとしたDisc2を見ていこう。

「LAX(エル・エー・エックス)」(5曲目)
2004年のアルバム『Silent Love』収録。全編英語で歌われているためか、キャロル・キングのようなスタンダード感のある落ち着いた雰囲気のミディアムバラード。あらためて音楽ルーツの幅広さを感じさせるし、英語の歌詞にも、日本語詞同様に飯島ならではのストーリー性がある。



飯島:「これはロサンゼルス空港での出来事ですね。子どもの頃は、郷ひろみさんやキャンディーズの大ファンで、そこからシンガーソングライターにも興味を持ち、ユーミンや石川セリさんのアルバムを買い、それらを聴いているうちに自分でも作詞作曲するようになりました。また、両親がベンチャーズやデューク・エイセスなどのレコードを家でよくかけるほどの音楽好きで、幼少の頃、『世界歌謡祭』の会場にも何度か連れて行ってもらいました。小坂明子さんの「あなた」(1973年)も生で観たし、カプリコーンというバンドの「恋のフィーリング」(1972年)も、会場で聞いた後、帰宅してすぐにそのまま英語で歌っていた時は、親がビックリしていました。その頃から、今のような道を選ぶ運命だったんでしょうね。

英語詞を書くことに自信をつけたのは、1999年に出した初の全曲英語アルバム『No Limit』の時でした。なぜなら、日本語だと一つのことを言うのに1コーラス分も使うのに、英語だと1、2行で終わっちゃうんですよ。なのでストーリーを膨らませないとならない。今回のベスト盤にも入っている「私たち」(disc3、2曲目)の英語版「Us」が完成した時に、出来た!と思いました」

「ガイ・ベネットの肖像」(9曲目)
1987年のアルバム『Coquettish Blue』。ガイ・ベネットとは、1984年の映画『アナザー・カントリー』内の登場人物で、「♪ 決して女を愛さないと決めて~」、という主人公を客観視したシリアスタッチのバラード。当時の邦楽としては、かなり異色作と言えるだろう。



飯島:「今でもゲイ・コミュニティの方から、 “こんなに早い時期から僕たちのことを認めてくれて有難うございます” といった感謝のメールが届くことがあります。この曲は映画を観て作ったのですが、美しい愛の物語と捉えていたし、主演のルパート・エヴェレットには私も恋をしていました(笑)。自分としては全く違和感なく自然でしたね」

「A Busy Man」(12曲目)
1993年のアルバム『Different Words』収録。「♪ 今夜もまた帰らないくせに〜」、「♪ メイク・ラヴの数と引き換えに ため息の数ばかりが増えた〜」、といった歌詞からも夫婦のすれ違いの様子が赤裸々に綴られたミディアム曲。特に、愛情が冷めているのを象徴するような「♪ ミルクをかけたシリアルふやけてしまうの〜」のフレーズが秀逸。

飯島:「モデルとなっている人は、この歌のようにネクタイをする人ではなかったのですが、自分の本音そのものですね。でも、サウンドもとってもカッコいい曲なんですよ!」

「ガラスのこびん」(15曲目)
1983年のファーストアルバム『ロゼ』収録。坂本龍一のアレンジによる効果も大きいかもしれないが、起伏の激しいメロディーや婉曲表現が散りばめられた歌詞など、およそポップスシンガーのデビューアルバムの収録作とは思えないほど実験的な作品。それを自作曲とはいえ、難なく歌っている飯島の歌唱も見事だ。

飯島:「ファンの皆さんは、『ロゼ』の中だったら、「Blueberry Jam」や「まりン」など可愛い感じの楽曲がアルバムを象徴していると思ってくださるようですが、私にとっては、この「ガラスのこびん」がグイッと来ます」

日本語の美しさを伝えようとする歌唱も大きな魅力


Disc1、Disc2と聴いてみて、飯島真理の楽曲は、言葉が随分と聞き取りやすいことに気づいた。特に、海外移住後の楽曲は、日本語の発音が美しく、言葉の選び方も適切で、歌詞カードを見なくとも自然に耳に入ってくるのだ。

飯島:「海外に住んでいると、発音が日本人らしくない!とか、日本語を忘れたのでは?等といろいろ叩かれることもあります。なので、綺麗な日本語をより強く意識するようになりました。最近、テレビに出ている方の日本語を聞くと、ちょっと乱れているのかな…と心配になります。美しい言語である “日本語” を綺麗に使う心掛けをして下さる方が増えてくれるといいですね」

一部のヒット曲やタイアップ曲だけ聴くと、 “ピアノを使った作曲や演奏が得意で、キュートな歌声が人気” と思われがちな飯島だが、このベスト盤を聴くと、実話を土台としたストレートな歌詞や、日本語の美しさを伝えようとする歌唱も大きな魅力だと気づかされる。主人公ごとに区分したからこそ、その特長がより堪能できるようになっているのかもしれない。インタビューの後半では、より多彩なDisc3の “Us 私たち” の解説や、初回盤収録のDVDについて、さらにはRe:minder読者へのメッセージを紹介したい。

【飯島真理インタビュー】② 新しい魅力発見!40周年オールタイムベストを本人が解説につづく


【飯島真理プロフィール】
幼少の頃よりクラシックを学び、国立音大ピアノ科に進学。1982年、TVアニメ『超時空要塞マクロス』リン・ミンメイ役を担当。1983年、シンガーソングライターとしてアルバム『ロゼ』でデビュー。坂本龍一がプロデュースした初の新人として話題となる。1989年ロサンゼルスに移住。1999年、自身のレーベル marimusic をアメリカで設立、初の全英語アルバム『No Limit』を発売。その後コンスタントにアルバムをリリース。2023年デビュー40 周年セレブレーションとして、8月2日に新曲を含むスペシャル・カバー・アルバム『For Lovers Only Ⅱ』をリリース。9月3日、Billboard Live Yokohama にて2回公演を行った。



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2023.09.26
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