「マジすか? どれだけオタクなんすか?」
イイ歳したオジサンがアニメにハマっているなどと若いヤツによく言われる。でも、周りを見渡してみると、そういうことを突き詰めなければ成功できないんじゃないの? とも思う。タランティーノもゲイツも、世の中で成功を手に収めたヤツらのほとんどが筋金入りのオタクばかりじゃない。そうやって適当な理由を付けて、今ここでコレを書いている阿呆はアニメを観まくって、観まくって、アニソンや声優のオリジナル楽曲にまで手を出した訳である。
そんな中で気になったのが、声優、シンガー、女優としても活躍する花澤香菜さんであった。美しい澄んだ歌声が印象的。「初恋ノオト」「あたらしいうた」なんかを聴いていると人生の半ばを過ぎたオジサンだって癒されて「おっふ」(※注)してしまう。そういえば、そういうことが随分昔にもあったような気がする。どこかで彼女の曲を聴いたことが有るようなデジャヴ。…記憶を深く探ってみると飯島真理というワードに突き当たった。
飯島真理は、1980年代に大ヒットしたアニメ映画『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』(1984年)でリン・ミンメイという美少女キャラクターを声優として演じ、その主題歌を大ヒットさせたシンガーソングライターである。彼女は人気声優が主題歌を歌うという現在のアニメソングのひとつの方向性を形作った元祖。だからなのだろう。花澤さんの楽曲を聴いている内に飯島さんの持つ空気と同じ匂いを感じてしまったのである。
さて、ここでオススメしたいのが飯島真理さんのデビューアルバム『Rosé(ロゼ)』(1983年)。このアルバムは飯島さんがマクロスのテレビシリーズで声優として成功し、人気が上昇するなかでレコーディングされたもの。学生時代、オタクをこじらせまくった後輩から「先輩、コレだけは絶対聴かなきゃダメですよぉ~!」と鼻息荒く詰め寄られたことを思い出す。
教授(坂本龍一)をプロデューサーに迎え、後藤次利(ベース)のほかにティン・パン・アレーの林立夫(ドラム)、赤い鳥の大村憲司(ギター)、清水靖晃(サックス)らが参加している。だから、その演奏を聴いてしまったら最後… ハマって当然の一枚に仕上がっている。そこにミンメイ役で声優としての人気を刻んだばかりの天性の萌えヴォイスです!!! 「愛・おぼえていますか」の大ヒットへの助走は、すでにこのアルバムで整っていたんですネ。
続いてリリースされた「愛・おぼえていますか」の作詞/作曲は加藤和彦・安井かずみ夫妻。「不思議なピーチパイ」で竹内まりやを一流アーティストに押し上げた大ヒットメイカーが起用されたことからも、当時の飯島真理に対する期待の大きさがわかります。こうしてシングルが発売されると彼女は映画のヒットと共にオリコンチャートを一気に駆け上がります(最高7位)。
そして、『ザ・ベストテン』や『歌のトップテン』などの歌番組に登場するようになるとアイドル歌手のようなその愛くるしい風貌と可愛い仕草に僕たちは一瞬で心を奪われ、思わず「おっふ」とため息をつかされるのでありました。おそまつ!
Rosé / 飯島真理 ※デビューアルバム
全作詞・全作曲:飯島真理
全編曲:坂本龍一
発売:1983年(昭和58年)9月21日
愛・おぼえていますか / 飯島真理
作詞:安井かずみ
作曲:加藤和彦
編曲:清水信之
発売:1984年(昭和59年)6月5日
※カタリベ注:
美少女を見た時に、凡人が驚嘆と感激のあまり発してしまう声。または、ため息。
2016.11.02
YouTube / 876TV(1分14秒から楽曲)
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