放送開始40周年!アニメ「キャッツ・アイ」
今から40年前の1983年7月11日、日本テレビ系でアニメ『キャッツ・アイ』の放送が開始された。
当時私は高校生。少年マンガを読むことがあまりなく、原作が少年ジャンプで連載されていることなど全く知らなかったのだが、たまたま第1回の放送を見たときに、喫茶店「キャッツアイ」を営む美人三姉妹(来生泪・瞳・愛)が実は絵画や美術品を狙う怪盗キャッツアイ、しかも次女・瞳の彼氏がそれを追う刑事(内海俊夫)というストーリーに惹かれ、その後も番組を見続けることになった。
そんなストーリーとともに私が興味を持ったのが、杏里が歌う主題歌「CAT'S EYE」(キャッツ・アイ)」である。
アダルトかつクールな印象の杏里が歌う「CAT'S EYE」
映画『007』の「ジェームズ・ボンドのテーマ」のギターリフを彷彿とさせるイントロのフレーズが、ミステリアスな雰囲気を生み、まさにストーリーにピッタリだと思った。さらにキメのポイントに見られるテンションコードなどからも、全体的にアダルトかつクールな印象を受けた。
「CAT'S EYE」は、作詞:三浦徳子、作曲:小田裕一郎のコンビによる作品。松田聖子の「青い珊瑚礁」など、さわやかな曲が有名だが、松原みきに提供した「ニートな午後3時」などシティポップ的な作品もあり、クレジットを見たときに ”なるほど” と思った。また、編曲の大谷和夫はロックバンド「SHŌGUN(ショーグン)」のメンバーで、SHŌGUNの持っている都会的なサウンドイメージがアニメの世界観に合致していることからオファーされたそうだ。
さて、当時の杏里というと、尾崎亜美作詞・作曲による「オリビアを聴きながら」という、今では名曲として超有名な曲でデビュー。しかし、セールス的には伸び悩み、その後は、「コットン気分」や「思いきりアメリカン」など、ビーチやリゾートなど、当時の西海岸ブームを思わせるイメージがあった。
その杏里をアニメの主題歌の歌い手に起用したのは、彼女の「なめらかで心地よく耳に残る声」がまさにピッタリだったからだろう。あの曲のクールな雰囲気を出せるのは、アイドルでもなければ、表現力豊かに歌い上げるようなシンガーでもない。
しかし、当時の潮流からすると、アニメの主題歌を歌うということは、これまでのイメージが崩れてしまう恐れもある。だからか、本人は当初乗り気でなかったらしいが、今となっては杏里の代表曲として、その後の活動に大きな影響を与えている。
オリコンシングルチャートで5週連続1位を獲得
この曲はオリコンシングルチャートで5週連続1位を獲得し、1983年の年間シングルチャート6位に入る大ヒットとなった。その要因としては、杏里の声や歌唱力が曲にフィットしたことはもちろん、主人公であるクールな三姉妹の世界観を忠実に描いた歌詞が、アニメファンの共感を生んだからだろう。
また、覚えやすく、高揚感のあるメロディラインがドラマティックだ。さらにタイトルの「キャッツ・アイ」を連呼する歌詞、サビの部分で同じフレーズを繰り返すことで曲全体がキャッチーな印象となり、親しみやすさを感じさせてくれることなどもある。
デジタル楽器が多用され始めた頃にシンセサイザーや電子ドラム(シモンズ)を大胆に導入したその音色も斬新だったのではないだろうか。
また、カップリング曲「Dancing with the sunshine」が聴きたいからシングルを買ったという人もたくさんいたのではないか。この曲はアニメのエンディングテーマとして使われたが、来生三姉妹がレオタード姿でエアロビクスのエクササイズをしているシーンがバックに流れ、月曜日の19時台とは思えない、なかなかにエロティックな雰囲気を醸し出していた(特に泪姉さん)。途中からキャシー・リンによるバージョンに変わり、歌詞もすべて英語となったが、私は杏里バージョンのほうがよりクールで好きだった。
ちなみに「CAT'S EYE」がヒットした後にリリースされたアルバム『Timely!!』には、角松敏生アレンジによる別バージョンが収録されている。オリジナルのミステリアス感が漂うアレンジとは異なった、軽快なサンバのリズムから始まり、ブラスを全面に出した賑やかなアレンジも味わい深い。
この曲に続き、杏里は「悲しみがとまらない」「気ままにREFLECTION」などヒットを連発。後に『BOOGIE WOOGIE MAINLAND』『CIRCUIT of RAINBOW』『MIND CRUISIN'』など、自作曲によるダンサブルなナンバーのアルバムをリリースし、杏里の歌い手としてのイメージが定着した。私のように「CAT'S EYE」がきっかけとなり杏里の魅力を再確認できたファンも多かったと思う。
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2023.08.04