共有感満載の80年代洋楽ヒット!ビルボード最高位2位の妙味 vol.47
Cherish / Kool & The Gang
日本人にとって “チェリッシュ” という言葉から思い浮かぶのは、73年の大ヒットソング「てんとう虫のサンバ」を歌ったあのグループだろうか。
では、80年代の “チェリッシュ” といえばクール&ザ・ギャングが残したあの珠玉の名バラードヒットを思い浮かべる人が大多数に違いない―― そう、80年代45番目に誕生したナンバー2ソングは、クール&ザ・ギャング「チェリッシュ(Cherish)」(85年9~10月3週2位)だ。
実は80年代において、もう1曲「チェリッシュ」というタイトルのヒットソングが存在しており、それはマドンナが放った「チェリッシュ」(89年2週2位)なのだが、奇しくもどちらも本国アメリカのビルボードシングルチャートでは最高位2位を記録している。
片や3週2位、片や2週2位、どうやら “80年代のチェリッシュ闘争” は、僅差の戦いだったものの、クール&ザ・ギャングに軍配が上がっている。そしてこの2アーティスト、80年代におけるもうひとつの共通項が存在する。
それは80年代だけでもそれぞれ20曲前後と大変多くのヒットソングを輩出しており、作品毎の共有感もさることながら、それらが混然一体となった末の “アーティスト共有感” が非常に高いという点だ。
クール&ザ・ギャングもマドンナも、代表的かつ決定的な大ヒットソングがないわけではない。しかしビジュアル戦略を駆使したお茶の間感あふれる王道ヒット作を多数輩出したマドンナに比して、隆盛を極めた “サーファーディスコ” そして、バブリー時代へと突入する直前のマハラジャ系ディスコ等での需要が高かった現場感あふれるフロアヒット作を多数輩出したのがクール&ザ・ギャングだったのだ。
中でも同じフロアヒットとはいえ、80年代のチークタイム定番といえたのが、
「ジョアンナ」と「チェリッシュ」で、この2大バラードのヒットがあったからこそ、クール&ザ・ギャングが80年代『フロアヒットの王者』に君臨していたのだと言えよう。
特にブラックコンテンポラリーやAORといったムーブメントへの目配せも抜かりない「チェリッシュ」は、クール&ザ・ギャング・レパートリーの中でも、いろんな意味で計算し尽された最も完璧なヒットソングとして捉えても決して間違ってはいない。
80年代 “チェリッシュ闘争” ではマドンナと互角の戦いっぷりを見せたクール&ザ・ギャングだったが、ポピュラーミュージック史上「チェリッシュ」というタイトルで最大ヒットを記録したのは、米LAのポップバンド、アソシエーションが66年に残した全米ナンバーワンソングだった… なんていう素晴らしいオチまで用意されている。
Billboard Charts
■ Cherish / Kool & The Gang(85年3週2位)
■ Cherish / Madonna(89年2週2位)
■ Cherish / The Association(66年3週1位)
2018.02.16