12月21日

イルカの歌った「まあるいいのち」一人にひとつづつ、大切な命 ♪

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心のどこかでみんな「命」について考えたことがあると思う。生まれて、生きて、そしてその命はいつかなくなるということを。

僕自身が最初に「命」のことを考えたのは、飼い犬が死んだときだった。

1974年―― 僕がまだ小学二年生だった頃、今まで住んでいた団地から一軒家へ引っ越すことになった。自分の部屋ができる! と大喜びした僕。庭付き一戸建てを構えた親もうれしかったに違いない… そして、なんと親戚から一匹の子犬を引き取ることになったのだ。

僕はその子犬に「ペス」と名付けた。

引っ越したばかりの頃は友だちが少なくて、見知らぬ土地へポーンと放り出されたそんなとき、友だちになってくれたのはペスだけだった。僕は毎日毎日散歩へ連れて行き、ペスはその度にはしゃぎまわっていた。

どこへ行くのも一緒で、随分遠くまで散歩に行った。暗くなってから慌てて家に帰ったりして怒られることもしばしば。燦々と光る太陽をものともせず、雪がチラつく凍えそうな日だって、ほんとう僕らはいつも一緒だった。

ただ、一年経ち、二年経ち…

時が過ぎて中学生になると、僕はバスケット部の練習に追われる毎日になっていた。

そうして、「雨が降っているから」とか、「今日は暑いから」とか、何かしら理由を付けては日々の散歩をおざなりにして、僕はペスと遊ばなくなっていった。その頃、すでにペスが重篤な病に侵されていたことなど、全く気付くことなく…。

―― 暫くして、ペスの病気が発覚した。

そこからさらに数週間…

ある朝、僕が学校へ行った後、医者に強い薬を処方されていたペスは、その副作用に耐えられず、母に看取られながらそっと虹の向こう側へと旅立っていってしまった。

憔悴 ―― 

その当時、フォークギターを習い始めた姉が1枚のレコードを手に入れていた。1979年にリリースされた『いつか冷たい雨が』というイルカのアルバムである。

ペスが死んだ夜、僕はこっそりとこのレコードを姉の部屋から持ち出して聴いた。A面、そしてB面… 流れてくる優しいメロディーたち。最後にアルバムのタイトル曲「いつか冷たい雨が」が静かに流れ、そのメロディーと切ない歌詞に、僕は自然とペスとの日々を重ねていた。涙はいつまでもいつまでも溢れ続け、僕は、いつしか声を上げて泣いていた。


 もう役に立たなくなったら
 すててしまったり 自分本位でかわいがったり
 小さなオリに閉じ込めて
 バカにしたり きたながったり
 人間だけが えらいんだ
 なんて ことだけは思わないで下さい


この曲の初出は古く、シュリークス時代のアルバム『イルカのうた』(1974年)に収録されている。この歌詞から強く発信される思い… それは言わば彼女が考える死生観の原点であって、曲のそこかしこに散りばめられたメッセージはどれも心に迫るものがある。菜食主義者としても有名なイルカだけれど、ことさら生き物の「命」の大切さに敏感なのだ。


 牛や鳥やおさかなも 人間の為にあるのよ
 サア残さずに食べなさい
 そんな風に言うおかあさんには
 なりたくありません
 でも私だって 食べて育って来たのだし
 虫だって 殺したこともあります


いま聴くと、その強いメッセージはさらに心に響いてくる。生きとし生けるものの “命をいただく” 行為を究極に問う、そんな人間だけが悩み続ける禅問答のような壮大なテーマ。そこに声を張るイルカの強さと弱さ、そして優しさと厳しさが綯い交ぜになった魂の叫びを、僕はひしひしと感じてならないのだ。

そして最後の一節


 同じ時を生きているのだから
 朝が来れば夜も来るし
 生まれて そして死んで行く
 私が土になったら
 お花達よ そこから咲いて下さい


イルカからの思いの丈が、僕をいまでもやさしく包んでくれている。

―― 翌1980年、デビュー十周年を記念してアルバム制作に勤しむイルカ。シュリークスのメンバーでもあった夫の神部和夫からの強いすすめにより、名曲「まあるいいのち」がこの世に生まれた。

この「まあるいいのち」は、曲調は違えども「いつか冷たい雨が」からの系譜だと僕は思っている。初めてTVから流れたこの曲を聴いたとき、点と点が繋がったと感じたのだ。


 みんな同じ 生きているから
 ひとりに ひとつずつ 大切な いのち


この楽曲を使った住友生命のCMは、多くの人々の共感を呼び、カンヌ国際広告祭で銅賞を受賞した。僕自身もTVから流れる映像とこのメロディーを聴くたびに、心がほっこりと温かくなる。

「コンサートでは、どの会場でも大合唱になります。そのたびに今は亡き夫もさぞ喜んでくれているだろう… と私は嬉しく思います」と、イルカ本人からのコメントも納得だ。

童謡のような覚えやすいメロディー… 巧みなアレンジもあって、そこにある優しさに満ち溢れた様々な “小さな命” を僕らは発見し、そして慈しみを感じることができた。それは、IUCN 国際自然保護連合初代親善大使として長らく活躍するイルカの “地球愛” そのものに気づかされた瞬間でもあろう。


 みんな同じ 地球の家族
 ひとりに ひとつずつ 大切な いのち


“まあるいいのち” とは、地球の丸と、円満という意味の丸もかけているのだろう。これは動物などに収まらず、地球に暮らす人々への問いかけである。

今、イジメ問題で命を絶ってしまう子どもがいる。大人だって、見知らぬ人が寄ってたかって個人を叩き続けることで、命を投げ出してしまうことがある。さらには人種差別、貧富の差、国と国の争いなど様々な要因が、僕らの丸い地球を歪な形にしてしまっている。


 みんな同じ 宇宙の仲間
 ひとりに ひとつずつ 大切な いのち


僕らは未来の子どもたちに、何を残してあげられるのだろうか…。

イルカからの慈愛に満ちたメッセージを、僕は、何度も何度も繰り返し自問している。答えなんてきっと出ないけれど、そのやさしさは、こだまして僕の心に呼びかけてくれる。もしかしたらそれが、命の循環ということなのかも知れない。



歌詞引用:
いつか冷たい雨が / イルカ
まあるいいのち / イルカ


2018.04.22
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  YouTube / sanchanneru


  YouTube / Hisaki JP
 

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カタリベ
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