僕は大学生活を水道橋、神保町、御茶ノ水界隈で過ごすことになるんだけど、あれは1984年の4月、大学に入学してほぼ履修する授業などが決まったGWの前あたりだったと思う。新しくできた友達からの麻雀の誘いを断って、中学生の頃から自分でもやってみようと思っていたことを実行に移したんだ。
友達と別れた僕は、ひとり湯島聖堂に向い、多分これだな、と見当をつけた白い階段に少し腰掛けてから聖橋に向かった。聖橋についた僕は、橋の真ん中あたりまで進み、自宅から持ってきた檸檬(レモン)をバックから取り出し少し齧る。そして、その喰べかけの檸檬を聖橋から神田川の川面に向けて放ったんだ。
さだまさしのファンの方はもうお分かりだと思うけど、この行動は彼の「檸檬」という曲の詩を真似したものです。「檸檬」は、さだまさしの3枚目のソロアルバム『私花集(アンソロジィ)』(1978年3月25日発売)に収録された曲で、1978年8月10日にシングルカットされます。グレープ時代を含めると彼の12枚目のシングル曲です。
実は僕、小学生の高学年から中学生くらいの時、さだまさしにどっぷり漬かっていた時期があり、好きな曲が沢山あります。その中でも一番好きな曲がこの「檸檬」で、何度も何度も何度もこの曲を聴いているうちに、いつか自分も聖橋から喰べかけの檸檬を投げようって思ったんだね。今思うと、この行動も僕の数あるバカな思い出のひとつです。
結局、学生時代の一人暮らしや、この曲のような彼女との激しい別れを経験したわけでもないんだけど、この曲の世界観は憧れでした。もし、若い頃に戻れるなら大学時代に戻って神田川の近くで一人暮らしをしたいかな。もちろん僕は、かぐや姫の「神田川」や「22才の別れ」も大好きです。
「檸檬」が収録されている『私花集(アンソロジィ)』は、今聴いても実に素晴らしいアルバムで、案山子や秋桜、主人公など、さだまさしにとって重要な曲が納められています。50歳になって改めてこのアルバムを聴いてみると、もう涙が止まらない。年を重ねてさだまさしの詩の素晴らしさがよりわかったからだとは思うけど、とにかくさだまさしは泣けます。さだまさしを聴かず嫌いの方、騙されたと思って一度聴いてみてください!
檸檬 / さだまさし
作詞・作曲:さだまさし
編曲:渡辺俊幸
発売日:1978年(昭和52年)8月10日
2016.04.20
Dailymotion / jinta36
Information