リレー連載【グラマラス・ロック列伝】vol.5- L'Arc〜en〜Ciel
最終日には待望の新曲制作が発表されたL'Arc〜en〜Ciel、約2年ぶりの全国ツアー L'Arc〜en〜Cielにとって約2年ぶり、声出し解禁となる全国ツアー『ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND』が大好評のうちに幕を閉じた。ツアータイトルが表す通り、これまでライブで披露する機会が少なかった楽曲群にスポットを当てたレア曲満載のセットリストは大きな話題を呼び、最終日には待望の新曲制作が発表される大サービス。
ツアー中には人気音楽番組『関ジャム 完全燃SHOW』でラルク特集が組まれ、番組内でhyde自身が「アルバムをリリースしてあげたい、ファンのために」と、前作から実に12年間も経過しているニューアルバムの存在に言及したものだから、全国のドエル(ラルクファンの通称)が歓喜を通り越して感涙にむせび泣いたのは言うまでもない。
それにしても罪なバンドである。12年間もアルバムを出さず、その間に発表した新曲は片手で数えられるだけ。それなのにライブをやればチケット争奪戦が巻き起こり、全国ツアーはどこの会場も当たり前のようにソールドアウトしてしまうのだ。なぜ我々はこれほど長年にわたり、この美しくも “超” が付くほどマイペースなバンドに魅了され続けるのか。あらためてロック史上に燦然と輝く稀代のカリスマバンド、L'Arc〜en〜Cielの魅力を語りたいと思う。
バンドの象徴であるhydeの神々しいまでのルックス 「hydeっていう存在がすごい。そこにいるだけで歌わなくてもすごい」ーー これは『関ジャム』で、リーダーのtetsuyaがhydeについて語った言葉である。ラルクはデビュー当初から一貫してグラマラスなビジュアルを維持し続けるバンドだが、とりわけボーカルhydeの神々しいまでのルックス、佇まいこそがこのバンドの象徴であり、最大の特長でもある。
“イケメン” などという軽薄な表現では収まりきらない圧倒的な美貌。短髪にしたり、サラサラヘアをなびかせたり、金髪に染めたり、眉毛を剃ったり、コーンロウを編んだり…。時期によってまったく異なるビジュアルを見せるhydeにいつもドエルは驚かされ、そして魅了されてきた。先のツアーでの金髪ハーフアップに白シャツ、黒ネクタイというコーディネートも素晴らしかった。
あのルックスにして、力強さと妖艶さを兼ね備えた歌声を持つロックボーカリスト。そしてラルクの大半の楽曲で作詞を担い、「flower」「HONEY」といった名曲を生み出したコンポーザーでもある。それでいて関西弁で冗談を飛ばすお茶目な一面を併せ持つ、まるで少女漫画の世界から飛び出してきたような奇跡的な存在だといえよう。
虹のようなバンド、この4人だからこそ織りなせる彩り豊かな世界観 ラルクといえばメンバー全員が作曲者という強みを生かした四者四様の世界観が楽しめるバンドとして知られる。
中でも多くの作品を手掛けているのがギターのken、ベースのtetsuyaのふたりだ。両者の作品はそれぞれはっきりと色合いが異なり、最も多くの楽曲を手掛けてきたkenは 「虹」「winter fall」などラルクならではの耽美的な作品を、一方でtetsuyaは「Driver's High」「自由への招待」といった軽快でポップな作品を得意とする。ただ、時にそうしたイメージを覆してくるのもこのバンドの面白さだ。
たとえば2000年にミリオンヒットを記録した両A面シングル「NEO UNIVERSE / finale」ではキャッチーで鮮やかなメロディが美しい「NEO UNIVERSE」をkenが、退廃的でホラー色の強い「finale」をtetsuyaが手掛けており、イメージとは真逆の楽曲の雰囲気に驚かされる。一筋縄ではいかないメインコンポーザーのふたりに加えて、疾走感のある王道ロックの名手hyde、打ち込みの多用などラルクにインダストリアルな要素をもたらすyukihiro。
誰が一番ではなく、この4人だからこそ織りなせる彩り豊かな世界観。その名が示す通り、ラルクはまさにメンバー個々がそれぞれの輝きを放つ “虹” のようなバンドなのである。
眉毛を剃り落としたエキセントリックなビジュアルを披露したhyde 世界中にファンを持つ超人気バンドでありながら、一貫してマニアックな試みを続けるのもラルクの魅力だ。
忘れもしない1998年。飛ぶ鳥を落とす勢いで快進撃を続ける中での3枚同時シングルリリースの敢行。しかし後に代表曲となる「HONEY」以外の2枚、つまり「花葬」「浸食 -lose control-」はどちらも一般的なヒットソングの定石とはかけ離れたマニアックな楽曲で、ミュージックビデオではhydeが眉毛を剃り落としたエキセントリックなビジュアルを披露。大ブレイクを果たし、これまでにない注目が集まる中でも世間に媚びない攻めの姿勢を貫いたことで、かえってファンを熱狂させたのだ。
VIDEO VIDEO 今回のツアーも同じことが言えるかもしれない。コロナ明けの声出し解禁ライブとなれば、普通はヒット曲満載のセットリストで無難に盛り上げそうなものだが、このタイミングで敢えてレア曲中心のマニアックなツアーを仕掛けるあたりはいかにもラルクらしい。なんと今回のツアーではセールス面でのピーク期にあたる1997〜2000年リリースのシングル曲を一切セットリストに入れない徹底ぶりで、『UNDERGROUND』というコンセプトをこだわり抜いてみせた。結成33年のキャリアを誇り、守りに入っても何らおかしくない実績を持つバンドが、今なお攻めの姿勢でファンを虜にし続ける。
「今が一番カッコいい」ーーhydeとtetsuyaが揃って口にするこの言葉どおり、衰え知らずのラルクはますますカッコよさに磨きをかけ、新たな感動を生んでくれるに違いない。
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2024.05.02