2006年 12月25日

ヘイル!ヘイル!ジェームズ・ブラウン、全てはおばさんパーマから始まった

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最初のインパクトは “髪”


いちばん大切なのは髪。二番目が歯だ。
この二つがある男はすべてを持っている。

―― 1986年刊、後に翻訳もされた自叙伝『俺がJBだ!』で、ジェームズ・ブラウンはそう語っている。真理かどうかはともかく、洋楽を聴き始めた1980年代、自分にとって最初のJBのインパクトは “髪” だった… と、振り返ると思ってしまう。

1980年代のはじめはJBにとって低迷期のきわみ。レコードを出しても、出しても、ヒットが出ない。あげく長年組んできたポリドールからレコード契約を切られてしまう。洋楽を聴き始めたベストヒットUSA世代には、チャートに上がってこないベテランは “終わった人” も同然だった。

ジェームズ・ブラウンの “おばさんパーマ”


それでも、強烈な個性は記憶のどこかに引っかかる。映画『ブルース・ブラザーズ』で牧師役に扮した際の後光の差したJBの姿が強烈だったのは、誰もが認めるところ。黎明期のヒップホップシーンに乗り込み、アフリカ・バンバータとラップをぶつけあった「ユニティ」の濃厚さも忘れられない(ヒップホップよりもずっと前に、JBがラップをやっていた… と知るのは、もう少し後のこと)。

しかし、当時の高校生に何より印象に残ったのは、やはりビジュアル。とりわけ、髪型だ。当時売れていた黒人アーティストの多くが短髪だったせいで、アフリカンアメリカンは髪が短いもんだと思っていた。が、JBはウェーブの激しい長髪だった。こういう髪型のおばさん、近所にもよくいた。おばさんパーマなのに、このブッとい声は、なんだ!? 面白すぎる!

1986年の大ヒット曲「リヴィング・イン・アメリカ」


そんなJBマナーに時代が追いついたのが、1986年の大ヒット曲「リヴィング・イン・アメリカ」だ。映画『ロッキー4 / 炎の友情』の挿入歌となったばかりか、同作に出演して歌って踊るJBは、ベストヒットUSA世代を理屈抜きに降伏させた。相変わらずのおばさんパーマだったが、それでも売れるとかっこよくみえてくるのは、未熟者の十代だったから、ということにしておく。

大人になり、JBの音楽性にハマってそのレコードを買いあさった。真剣に聴いてみると、ソウルもファンクも先取りし、プリンスやマイケル・ジャクソンのずっと先を行っていたことに気づく。入れ込むあまり、先に挙げた自伝も買った。俺サマ節全開の文体もネガティブに思うどころか、むしろ人としての面白さに拍車をかけた。なんだろう、このバイタリティは。

クリスマスはJBの命日


この人とチャック・ベリーは、人類初の死なない人間になるのではないかと真剣に思ったものだ。

なので2006年12月25日にJBが亡くなったときは本当にショックだった。あの年以来、クリスマスはJBという、偉大なほど面白い人間の命日として記憶している。

髪は薄くなり、歯もボロボロになった今の自分は、“すべてを持った男” には程遠い。しかし、JBの音楽を聴き、『俺がJBだ!』を読み返すと、今よりも少しだけではあるが、面白い人間になれそうな気がしてくる。


※2017年12月25日と2019年5月3日に掲載された記事をアップデート

2020.12.25
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カタリベ
1966年生まれ
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