3月25日

スーパーバンド「ザ・パワー・ステーション」そのサウンドが画期的だった理由とは?

73
5
 
 この日何の日? 
ザ・パワー・ステーションのファーストアルバム「ザ・パワー・ステーション」がリリースされた日
この時あなたは
0歳
無料登録/ログインすると、この時あなたが何歳だったかを表示させる機能がお使いいただけます
▶ アーティスト一覧

 
 1985年のコラム 
盗んだバイクは的外れ!尾崎豊の本質に近づくために注目したい歌詞ベストテン!

マドンナのスーパースター化に向けた重要なる布石 ー マテリアル・ガール

岩崎良美【タッチ】アニソン史上燦然と輝く名曲!80年代のあだち充ブームは凄かった

1985年の貸レコード事情♪ あの夏、スミスに出会った “友&愛”

唯一無二の「イモ臭さ」それが個性のポール・ヤング

80年代サウンドの発信源!ニューヨークのスタジオ・パワー・ステーション

もっとみる≫



photo:Warner Music Japan  

デュラン・デュランのサイドプロジェクト、ザ・パワー・ステーション


1980年代半ば、初の全米1位に輝いた「ザ・リフレックス」辺りまではアイドル以上の何物とも認められていなかったデュラン・デュランが、ミュージシャンとして大いに株を上げたバンド、ザ・パワー・ステーション。ご存知の通りメンバーのジョン・テイラーとアンディ・テイラーが発起人となり、60年代から活躍するベテラン、ロバート・パーマーと “ゴッド・オブ・ファンクグループ” シックのドラマーであるトニー・トンプソンを招き、1985年に期間限定で活動したサイドプロジェクトである。個人的には、同時期にデュランの残党3人が結成したアーケイディアの方が、ビジネスを無視したニューロマンティックど真ん中な前衛サウンドで好みではある。ゲストもピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアや土屋昌巳など癖のある猛者揃い。

しかし、この全く音楽性の異なる両プロジェクトを比べてしまうのも論外だが、商業的にどっちが成功したかと言えば、完全にパワー・ステーションの方に軍配が上がるだろう。それまでのデュラン・デュランのイメージを気持ちよくブチ破いたハードロックなギターリフに、ロバート・パーマーのソウルフルな声が乗ることにより、若さと渋みの両方を備えた贅沢さは、やっぱり大衆ウケが良かったはずだ。

アンディ・テイラーのギターは分かりやすくハードロック!


パワー・ステーションを聴いた当初、何より驚きだったのは、ハードロックと重厚なファンク・ビートはものすごく相性が良いな… という発見。それ以前にはアイズレー・ブラザーズに無名時代のジミヘンが参加していたり、リック・ジェームスが自身の音楽性を “パンク・ファンク” と謎の標榜をしてたり… ハードなギターとファンクの例を挙げるとキリが無いわけであるが、しかしパワー・ステーションでのアンディ・テイラーのギターほど分かりやすいものは無かったんじゃないだろうか?

というのも、そのリフには、彼が元来憧れていた、レッド・ツェッペリンやディープ・パープルなど、ハードやヘヴィではあるがそれを進んで自称しない60~70年代のピュア・ロック(という呼び方は90年代に評論家の和田誠氏がライナーノーツで「私がそう呼んでいる」と書いてあったのでここでお借りした)の影響を見せつつも、当時活気を帯び始めた HR/HM に通じる衝動性を感じるのだ。

そしてこれは、ブラックの流れを極力感じさせない、白人の音楽でもある。つまり、それ以前のブラックミュージックにおけるどんなハードなギターリフよりも、アンディ・テイラーのギターは “分かりやすくハードロック” であった。パワー・ステーションの音楽は “黒い” ドラム、ヴォーカル、ベースライン(ジョン・テイラーのスラップは見事!)だが、アンディのギターだけが “白い”。その違和感がカッコよく、彼らの音楽が画期的だった所以なのだ。ちなみにブラックではないが、彼らがカヴァーしたT・レックス「ゲット・イット・オン」を聴いていただくと、アンディのギターがいかに HR/HM 流かは明らかである。

ファンクとハードロック、パワー・ステーションが生み出した新しいケミストリー


私は平成生まれなので、パワー・ステーション誕生の衝撃を身をもって体感できなかったのは誰のせいにもできない悔しさの一つである。つまり後追いに甘んじたということだが、最初にパワー・ステーションを聴いたとき、必然的にあるバンドを思い出したのであった。90年代にヒットを飛ばした HR/HM バンド、エクストリームである。ヘヴィでありながらファンクの要素を特徴的に取り入れた “ファンク・メタル” という新しいジャンルを確立したと言われるバンドだ。

私は中学時代、ビートルズを除く人生最初の洋楽体験として何故かこのエクストリームと出会った。当然ファンクの何たるかを一切知らないまま、ただメタルなのに横ノリで乗れるところがオシャレで気に入り、脳内に完コピされるまで聴いていた。それをきっかけにメタルを掘りかけはしたが一向にハマることはなかった。それはもちろん、エクストリームのファンクなところが魅力だったからだ。

こうして後追い世代の私は、エクストリームによってファンクと HR/HM の化学反応に目覚め、その後で知ったパワー・ステーション、だったというわけだ。そこで感じたのはやはり、エクストリームが確立したと言われる以前にパワー・ステーションがこのスタイルでちゃんと商業的にも成功していたじゃないか、ということだった。“どファンク” なリズムにその後のメタル勢にも通じるハードロックな要素を合わせたパワー・ステーションの音楽は先鋭的で、その立役者であるアンディ・テイラーのギターはもっと評価されて欲しいとも思う。デュラン・デュランでは “ハードロック” できなかったアンディのフラストレーションが起こした新しいケミストリー、それが80's後半以降の HR/HM 勢にしっかりと受け継がれる新しい音楽性となっているのだ。

2019.11.20
73
  YouTube / Duran Duran
 

Information
あなた
Re:mindボタンをクリックするとあなたのボイス(コメント)がサイト内でシェアされマイ年表に保存されます。


おすすめのボイス≫
1969年生まれ
ことえり
ティーンの多感な時期にパワーステーションに出会い衝撃を受けました。元々デュラン・デュラン好きでしたが、ロバートもお気に入りの歌手になりました。
2020/05/17 19:33
0
返信
カタリベ
1990年生まれ
moe the anvil
コラムリスト≫
35
1
9
8
1
ベートーヴェンとリッチー・ブラックモア、交響曲第9番は「治療不可」
カタリベ / 阿野仁マスヲ
32
1
9
7
9
早すぎたニューロマンティック、時代は「ジャパン」に追いつけなかった
カタリベ / moe the anvil
38
2
0
2
1
タワレコのこだわり満載!この80年代コンピはリスナーへの挑戦状なのか?
カタリベ / タナカ マサノリ
67
1
9
8
7
オジーに仕えたギタリスト、ランディ・ローズの奏でるほんとうに貴重な音
カタリベ / ジャン・タリメー
15
1
9
8
1
何度聴いても新発見!ブライアン・イーノ&デヴィッド・バーンの悪ふざけ精神
カタリベ / moe the anvil
32
1
9
8
5
みんなの洋楽ナイト — 解散疑惑に揺れたデュラン・デュラン、1985年のイイ仕事
カタリベ / ソウマ マナブ