3月25日

スーパーバンド「ザ・パワー・ステーション」そのサウンドが画期的だった理由とは?

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photo:Warner Music Japan  

デュラン・デュランのサイドプロジェクト、ザ・パワー・ステーション


1980年代半ば、初の全米1位に輝いた「ザ・リフレックス」辺りまではアイドル以上の何物とも認められていなかったデュラン・デュランが、ミュージシャンとして大いに株を上げたバンド、ザ・パワー・ステーション。ご存知の通りメンバーのジョン・テイラーとアンディ・テイラーが発起人となり、60年代から活躍するベテラン、ロバート・パーマーと “ゴッド・オブ・ファンクグループ” シックのドラマーであるトニー・トンプソンを招き、1985年に期間限定で活動したサイドプロジェクトである。個人的には、同時期にデュランの残党3人が結成したアーケイディアの方が、ビジネスを無視したニューロマンティックど真ん中な前衛サウンドで好みではある。ゲストもピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアや土屋昌巳など癖のある猛者揃い。

しかし、この全く音楽性の異なる両プロジェクトを比べてしまうのも論外だが、商業的にどっちが成功したかと言えば、完全にパワー・ステーションの方に軍配が上がるだろう。それまでのデュラン・デュランのイメージを気持ちよくブチ破いたハードロックなギターリフに、ロバート・パーマーのソウルフルな声が乗ることにより、若さと渋みの両方を備えた贅沢さは、やっぱり大衆ウケが良かったはずだ。

アンディ・テイラーのギターは分かりやすくハードロック!


パワー・ステーションを聴いた当初、何より驚きだったのは、ハードロックと重厚なファンク・ビートはものすごく相性が良いな… という発見。それ以前にはアイズレー・ブラザーズに無名時代のジミヘンが参加していたり、リック・ジェームスが自身の音楽性を “パンク・ファンク” と謎の標榜をしてたり… ハードなギターとファンクの例を挙げるとキリが無いわけであるが、しかしパワー・ステーションでのアンディ・テイラーのギターほど分かりやすいものは無かったんじゃないだろうか?

というのも、そのリフには、彼が元来憧れていた、レッド・ツェッペリンやディープ・パープルなど、ハードやヘヴィではあるがそれを進んで自称しない60~70年代のピュア・ロック(という呼び方は90年代に評論家の和田誠氏がライナーノーツで「私がそう呼んでいる」と書いてあったのでここでお借りした)の影響を見せつつも、当時活気を帯び始めた HR/HM に通じる衝動性を感じるのだ。

そしてこれは、ブラックの流れを極力感じさせない、白人の音楽でもある。つまり、それ以前のブラックミュージックにおけるどんなハードなギターリフよりも、アンディ・テイラーのギターは “分かりやすくハードロック” であった。パワー・ステーションの音楽は “黒い” ドラム、ヴォーカル、ベースライン(ジョン・テイラーのスラップは見事!)だが、アンディのギターだけが “白い”。その違和感がカッコよく、彼らの音楽が画期的だった所以なのだ。ちなみにブラックではないが、彼らがカヴァーしたT・レックス「ゲット・イット・オン」を聴いていただくと、アンディのギターがいかに HR/HM 流かは明らかである。

ファンクとハードロック、パワー・ステーションが生み出した新しいケミストリー


私は平成生まれなので、パワー・ステーション誕生の衝撃を身をもって体感できなかったのは誰のせいにもできない悔しさの一つである。つまり後追いに甘んじたということだが、最初にパワー・ステーションを聴いたとき、必然的にあるバンドを思い出したのであった。90年代にヒットを飛ばした HR/HM バンド、エクストリームである。ヘヴィでありながらファンクの要素を特徴的に取り入れた “ファンク・メタル” という新しいジャンルを確立したと言われるバンドだ。

私は中学時代、ビートルズを除く人生最初の洋楽体験として何故かこのエクストリームと出会った。当然ファンクの何たるかを一切知らないまま、ただメタルなのに横ノリで乗れるところがオシャレで気に入り、脳内に完コピされるまで聴いていた。それをきっかけにメタルを掘りかけはしたが一向にハマることはなかった。それはもちろん、エクストリームのファンクなところが魅力だったからだ。

こうして後追い世代の私は、エクストリームによってファンクと HR/HM の化学反応に目覚め、その後で知ったパワー・ステーション、だったというわけだ。そこで感じたのはやはり、エクストリームが確立したと言われる以前にパワー・ステーションがこのスタイルでちゃんと商業的にも成功していたじゃないか、ということだった。“どファンク” なリズムにその後のメタル勢にも通じるハードロックな要素を合わせたパワー・ステーションの音楽は先鋭的で、その立役者であるアンディ・テイラーのギターはもっと評価されて欲しいとも思う。デュラン・デュランでは “ハードロック” できなかったアンディのフラストレーションが起こした新しいケミストリー、それが80's後半以降の HR/HM 勢にしっかりと受け継がれる新しい音楽性となっているのだ。

2019.11.20
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  YouTube / Duran Duran
 

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